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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

秘密基地

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伊豆急行線 稲梓~河津


小学生の頃、それまで米軍基地だった空き地の外れに竹藪があった。
川に沿って草を踏み均された心細い道から入ると、竹で形成された明らかに人の手による空間があった。
中は子供一人が立っても窮屈さを感じさせない広さを持ち、物があるわけでもなく使われてる気配もない。
竹藪の中に組まれた空間は空き地を自由気ままに吹き抜ける晩秋の風を遮って、
枯れ草を敷き詰めれば眠れるほど暖かく、駄菓子屋で買ったお菓子を落ち着いて頬張れる居心地のいい秘密基地となった。

休耕地の脇に茂る藪。程よく色付き、ススキの穂が光るロケーション。
人目につきにくく、かといってとことん隔離された感じもない。うん、ここはいい。
あそこをこうして、ここはああしてと子供の時に学んだ遊びの設計図を元にして青写真は出来上がり
架空の自分がそこに居る・・・
逆光の微睡みで遠目に見ていると、なんだか頭で描いた秘密基地から列車を眺めている気分にさせられた。




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  1. 2020/11/24(火) 01:59:37|
  2. 伊豆急行線
  3. | コメント:0

恵み

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伊豆急行線 稲梓


下田に向かって蓮台寺のひとつ手前の駅、稲梓。
土地柄、伊豆〇〇や海を連想する駅名が多い伊豆急行線内において比較すると、ちょっと異質に思える駅名が魅力的だ。
車窓を見るとトンネルに挟まれ、山の間にこじんまりとある里が何ともいい雰囲気で、蓮台寺に下車後徒歩で向かった。

北海道なら今頃草刈りなどせずとも済んでしまう初冬の季節だが、
温暖な地方ではそうもいかないだろう里は手入れが行き届き、ここで暮らす人々の苦労が偲ばれる。
狭い車道を登っていく途中、どこからか話し声が聞こえてきた。
頭に日本手ぬぐいをほっ被り、モンペ姿の婆ちゃんが野良仕事で一服してるのかしら・・・
そんなことを想像しながら日当たりのいい場所でじっとしているのは一切の退屈を感じない。

どのくらいの時間が過ぎたのか、落ち着きを覚える山里は優しい秋陽に浮かんだ。
虫鳴く足下に垣間見る瓦屋根、引かれた電線、適度に感じる人の気配・・・
殺伐とした街にいるよりも、自分が自分らしくいられる穏やかな光景が広がった。




テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2020/11/20(金) 05:51:17|
  2. 伊豆急行線
  3. | コメント:0

面影

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伊豆急行線 稲梓~蓮台寺


今回は車を適当な場に置き、伊豆急線内を「伊豆満喫フリーきっぷ」で乗り鉄、徒歩にて移動した。
下田のひとつ手前、蓮台寺という駅名にピンと来て下車をする。

蓮台寺という響きは昭和58年の「男はつらいよ 第32作 口笛を吹く寅次郎」で、
旅先の寅さんが義弟博の父飃一郎の墓参りに寄った映画上の寺の名(薬師院)で、寅さん好きとしては黙っていられない。

舞台は岡山県は備中高梁、飃一郎の生家としてロケされた武家屋敷前を特急やくもが駆け抜ける。
実は同じカットで「第8作 寅次郎恋歌」(昭和46年)にも登場し、その時はまだ蒸気機関車の時代でD51がスクリーンに映り
山田洋次監督は時の移り変わりを表現したかったのだという。
因みにこの時のD51は長工デフを手掛かりに、当時の新見機関区在籍機関車を調べると昭和45年に長野区から転入し、
48年に浜田区へ転出した473号機のようで、当機は49年には長門区、50年1月に廃車となっている。
また若き日の竹下景子が健気でかわいらしく、振られっぱなしのシリーズの中では珍しく相思相愛でありながら
別れのあるラストシーンはとにかく切なかった。
当時の映画館は立ち見が出るほどで、スクリーンと一体になった客は寅さんの登場に合の手を入れ、笑いに包まれ、
情けに救われ、寅と共に涙する・・・それは映画というより舞台、場合によっては自分のすぐ横で起きている出来事のように
捉えていたといっても良かったかもしれない。

そんなことが次から次へと思い起こされ、駅名にもなっている実際の蓮台寺は山の中のため列車と絡めそうになく
せめて寺院仏閣はないかと辿り着いたのが踏切脇にあった小さな祠だった。


ついでにいうと、寅さんは下田でも撮影されていて、この日最後に寄ってみる。

タコ社長の娘あけみが夫婦喧嘩の末に家を飛び出し、寅さんに会いたいととらやに連絡が来る。
下田にいるらしいがそれ以上のことが分からないと困り果て、旅から帰って早々捜索を頼まれた寅さんは
蛇の道は蛇といってな、おれら稼業に掛かれば人の一人や二人見つけるのは難しいことじゃないと下田に向かい
商売仲間の長八から得た情報を元に探し当てた場所だ。



寅さん下田Ea

第36作 柴又より愛をこめて(昭和60年)より



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静岡県下田市 みなと橋


ここまで来たら他のロケ地もと頭をよぎるも日は暮れ、聖地巡りというわけでもなかったので後にしたが
列車に乗って思い立った駅で降り、適当に歩き、そうこうしてる内に自分でも思いもしていない方向に足が向くというのは
旅の基本であったなぁと、町の灯りが後ろに飛ぶ車窓を見ながら帰途に就いた。




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  1. 2020/11/18(水) 03:43:38|
  2. 伊豆急行線
  3. | コメント:0

漁港を眼下に

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伊豆急行線 伊豆北川


散々伊豆山中をバイクで駆け巡っていながら、伊豆といえば海・・・のイメージが湧く。
中伊豆をただ行って帰って来るだけならともかく、どこかしら海岸線を通る機会があって
海水浴や磯釣りの姿も理由にあるのだろう。
けれども、天下の険とされる箱根へ尾根が続く伊豆は山国であり平野部は少ない。
海岸線は目前まで迫る山の僅かな隙間に町や漁港があり、長らくだだっ広い北海道の風景に慣れた目には
懐かしさを越えて何とも魅力的に映る。
多くの観光客が集まる見所ばかりでなく、もっとこういう場所にも目を向け足を運んでみたいと思わせた。

そんな漁港を眼下に、崖にへばり付くよう伊豆急の列車が往く。
伊豆急の顔だった100系電車は既になく、かつて東急東横線などで見られた8000系が主力として頑張っている。
今の時代、どこも大手私鉄から転入してきた車輌に取って代わり地方色は薄れてしまった感があるが
小学生時代にデビューし、幾度となく乗車した車輌が現役で見れると思えば悪い気はしない。
当時は無地のステンレス、若しくは先頭に赤帯が入ったものから、伊豆の海と空をモチーフとしているのか
スカイブルーのラインが入り、むしろ東急線時代よりもいい。
加えて車内は海側の座席をボックス席にして、より車窓を楽しんでもらおうとする配慮も旅人には嬉しいものだ。




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  1. 2020/11/15(日) 01:26:27|
  2. 伊豆急行線
  3. | コメント:0

架け橋

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東海道本線 蒲田~川崎


秋の日は釣瓶落とし・・・
刻一刻と変わる落陽の景色はどこか悲愴的であり、且つドラマチックだ。

どこかで目にしたが、とかく日本人は夕日が好きらしい。
古くは万葉集から、童謡や唱歌、ドラマ、映画と現代まで続き、これほど夕日を題材にしたものは
世界を見ても日本ほどないのだそうだ。
古来、日本人は美徳とした死後に浄土へ向かうと考え、それは落日の彼方にあると信じられていたという。
翌日になれば陽は昇り、移ろう季節のように人の命もまた生まれ変わる。
その象徴的な存在が夕日であったとするなら、なるほど、死して未来へ想いを託す、
今日はだめでも気を新たに明日出直そうと夕日から得る感覚は間違いではないようだ。

格差、コロナ、自己責任・・・
ルールだマナーだといちいち線引きをしなければならなくなった息苦しい世の中となっても
日はいつものように巡り、希望へと繋ぐ夕日の架け橋を様々な想いを乗せて列車が足早に走り去る。
明日という日に、果たして再生へと向かうドラマは待ち受けているのだろうか。




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  1. 2020/11/14(土) 06:04:08|
  2. 東海道本線
  3. | コメント:0
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