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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

日暮れし武利谷

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丸瀬布いこいの森


16時を前にして早々と日が暮れた秋の武利谷に、石北国境の山々を薄ら雪景色に塗り替えた冷気が忍び寄る。
盛りを過ぎつつも、まだ秋色だったと思われた山の景色は川の流れも冷たげに初冬を香るものへとなっていた。

明日は早朝から出かける予定があることと、寒さにも負けて帰り支度を始める。
それでも本日の最終運行を報せる放送が流れると帰れない。


せっかくだから最終便の一本くらい見て行こう。
みすみす帰るなんて勿体ない。

煙を噴き上げ南側のリバース区間をぐるりと回った雨宮は、ここが公園とは思えないほどの力走を見せてくれた。
意外にも鉄橋を渡る寸前で空転したのは、最後まで残っていたお客さんたちへの彼なりの挨拶だったのだろう。


薄らぐ山に汽笛が響く。
笛の周波が蒼き景色と手を結び、ジーンとひとつひとつの細胞に染み渡る。
うん、やっぱり最後まで残っていて良かったなぁ…。




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  1. 2018/10/24(水) 13:01:48|
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在りし日

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丸瀬布いこいの森


「お客さん、乗りますか?出ますよ。」

旅の道中、古びた待合室のベンチから転げ落ち、夢から覚めた寅さんは老車掌から優しく声をかけられる 。
すまねぇすまねぇと飛び乗ったディーゼルカー。
駅の煙突からは紫煙が揺らぎ、蛙がゲコゲコ鳴く風景を列車のホーンが遠ざかる…。

~男はつらいよ 柴又慕情より~


この旅情的なシーンに登場した尾小屋鉄道。
そこに限らず軽便鉄道というと、名の通り簡素な造りで
軌道にはバラストもなく、土にめり込んだヘロヘロなレールが勝手口前や裏庭に伸び、
脱線しても数人でホイっと車輌を持ち上げて線路に乗せられそうな印象を持つ。
実際はそこまでのことはなかったんだろうが、いずれにせよ豊かなローカル色とそのフォルムは個性的だ。

当時TMS誌に発表された作品や、
レイアウトモデリングに掲載されていた沼尻鉄道の写真から軽便鉄道の魅力は存分に感じていた。
かつてコッペルが運行されていた特殊性のあった西武山口線を除けば、
僕は生活の中にあった現役の軽便鉄道というのを知らない。

煙を揺るがせ、ゴトゴトと目の前をいく子供が描いたような列車…。
在りし日の軽便鉄道とはどんなものだったんだろう。
その風景からは一体どんな匂いが漂ってきたんだろう…。

そんな時代を僕も経験してみたかったものだ。




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  1. 2018/10/23(火) 04:25:51|
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秋の日の煙

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本州各地で見られる蒸機運行。
今や冬季に運行される「冬の湿原号」以外に見ることの出来ない北海道においては、いこいの森の煙は貴重な存在だ。
公園内を走ることで一見軽く見られる向きもあるかもしれないが
ロケーションの良さもあって、四季折々を煙棚引かせて走る姿は決して見飽きることはない。
ナローゲージのかわいい車輌たちがシポポポ、ゴトゴト往く姿は何とも癒され持って帰りたくなる。
運行も、時にはいつもと逆回りがあれば編成も変わる。



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この日も午前の編成は、元井笠鉄道の客車を牽引し、
午後は元王滝森林鉄道の客車、元武利意森林鉄道の運材車と緩急車などを連結した混合列車で楽しませてくれた。

機関車の次位にある炭水車のような車輌は炭車で、コールバンカのない雨宮は通常石炭をキャブ内に直接積んでの走行だが
こうして様々なバリエーションで運行してくれる職員の気遣いが何よりも嬉しい。



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丸瀬布いこいの森


中でも木箱のような緩急車が列車の末尾を飾るのは初めてお目にかかったこともあり、感慨も一入だ。

彩りの天窓から射し込む光を一身に受け、水鏡となった池に影を落としてのんびり走る元林鉄の車輌たち。
亡き友が教えてくれた甘い匂いが漂う秋の森に、雨宮の煙がスーっと舞っては消えていく。

ああ、なんて堪らない…。
思わず口を衝いた僕に、武利の汽車はまたひとつ素敵な一日を与えてくれた。




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  1. 2018/10/19(金) 16:00:54|
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憧れの機関士体験・後編

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三笠鉄道村(サイドタンクの文字は鉄原コークスとの契約上消せないとのこと)


今回講習を受けたのは僕と合わせて二人。
もう一人は札幌の方で、蒸機マニアでも鉄ちゃんでもなく、本州から3人友人が運転しに来るので
それじゃあ自分も…ということの受講であった。
そのご友人には若桜鉄道で圧縮空気で動かすC12の運転体験をされてる方もいたが
所詮は空気、コンプレッサーの音も煩く、やはり三笠は本物感が違うと何度か来られているようだった。

一緒に講習を受けた方もひどく感動しており、最近の、何でもスイッチポンで動き、人間の補正を機械が制御するものとは違い
デジタルなんかちゃんちゃらおかしい、アナログは偉大だと相当に興奮されていた。

そんな話を聞いていて、ふと思い出したドラえもん。
22世紀に行ったのび太が未来のジャイアンやスネ夫、しずかちゃんの通う学校へ行く。
簡単な計算をコンピューターでしか解けない未来の三人に対して、のび太は紙とペンと指を数えて計算する。
それを見た三人はのび太を天才だと驚く。
近い将来、人は車の運転とて忘れるかもしれない。
無理も融通も利かずプログラム通りに事を進める無機質なものに支配されつつある世の中は、一体どこに向かうのだろう。
蒸気機関車の運転は、それとは全く対照的だった。



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途中営業運転を挟み、僕は都合3回乗車した。
受付で会計した後、本職の機関士さんが運転する機関車は初心者の僕が運転した時の表情とは明らかに違っていた。
ドラフト音は高らかに歯切れよく、スムーズで無駄のない加速と減速、停止。
教えて頂いたN機関士の他に幌内線でキューロクに乗務されてた方もいて、さすがと言わざるを得ない運転だ。

幌内の山間に涙しそうな五色の汽笛が木霊する。
構内運転でありながらも蒸機ならではの後ろ姿の郷愁感…。
全ては人間が操作し、経験と修練によってその日の機関車の状態から適切な措置をとる。
季節、天候、牽引する重量、同じものひとつとない条件に対応できる人もまた偉大だ。

人が手間をかけ、人の血が通う鉄の塊が蒸気機関車であり、そこに様々な感動を呼び郷愁が生まれる…
ホンの少しだけ加減弁ハンドルを握り、直に触れた黒鉄の肌から垣間見えた、僕には貴重な体験運転であった。


尚、前編のキャブ内における運転風景は機関士の方のご厚意により撮影して頂いた。
この場をお借りして、改めて感謝致します。




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  1. 2018/05/16(水) 08:03:19|
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憧れの機関士体験・前編



三笠鉄道村


北海道に動態保存されてる蒸気機関車は何もC11だけではない。
丸瀬布の雨宮21号、そして三笠鉄道村のS-304号もそのひとつだ。
双方とも公園内を走るためJR営業路線を走る醍醐味はないかもしれないが、
煙を上げて走る様は紛れもなく蒸気機関車そのものだ。

S-304号は、国鉄線上から現役蒸機が引退してからも室蘭鉄原コークスで入換用の機関車として働いていた
我が国の最後まで実用で残っていた機関車ということはその筋の方ならご存知だろう。
旧幌内線幌内駅構内跡に走る当機を、ここでは体験運転出来るとあってかねてから気になる存在であったが、
この度その機会を得ることができ、三笠に向かったというわけだ。

幌内線は幌内炭鉱で採掘される良質な石炭を輸送するための鉄道として、明治13年に手宮~札幌が幌内鉄道として開業し、
重機もない時代にその僅か二年後の明治15年には幌内へと全線開通した日本で三番目の鉄道である。
構内往復運転とはいえ、コークス会社で働いていた蒸機を由緒ある炭鉱路線跡で運転するというのも感慨深い。

午前中に講習を受け、午後から乗車となる。
僕は743人目の見習い機関士だそうで、受講者の約半数は関東からとのことだった。
館長から指導して頂く機関士の方へ挨拶に伺い、憧れのナッパ服に着替えた後キャブに乗り込む。
熱い!それは生きた蒸機の証しだ。
石炭の匂い、油の匂い、快適性など微塵もない鉄の城、鉄の塊…。
それをこれから運転するのだと思うと興奮しないわけがない。

先ずは貨車を改造したトロッコを2輌連結した、お客さんを乗せた営業列車に乗務し、教導機関士による運転を見学する。
その後トロッコを解放し、単行で運転する前に講習で受けた操作を再度教えてもらい、さあ、いよいよ運転だ。
物好きが高じて一級ボイラー技士の免許を持っているが、やっとそれも活かされる時が来た。
ご指導頂くのは、泣く子も黙る元国鉄追分機関区のN氏である。
公園内をといってもそこは仮にも本物の蒸気機関車を動かすだけに本線運転と同じく真剣である。



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逆転機をフルギヤにしドレン弁閉止。
前よし、後ろよし、N氏の出発合図に歓呼応答する。

「発車ぁ!」

約2秒の適度汽笛を一声、単弁を運転位置に圧力計が0㎏/㎠を指示、緩解オーライ、加減弁をゆっくり開ける。
蒸気溜めからシリンダーに蒸気が送られピストンを押す。
ボッ!!とドラフト音がして黒煙を吐き出し動輪がゆっくりと回り出した。

国鉄型制式機関車と比べて小さい産業用ロコではあるが目線は高く
実際に石炭を焚き蒸気圧で動く姿はやはり迫力があり感動的だ。
固い鉄の城にレールを噛み締める動輪とロッドの動きが伝わり、足元から、座席の尻から脳天に貫く。
しかし感動ばかりしてる暇はない。
すぐに逆転機を引き上げ、前方人がいない箇所でドレンを切って加減弁を開けていく。
頭では操作を分かっていても、次々とやらねばならない操作と、鉄の塊が走っている事実に頭の中は真っ白だ。
N教導機関士の適切な介助と声掛けに辛うじて救われてる状態である。

「はい、閉めるぅ」

N機関士の声に応答し、加減弁を閉める。
逆転機を倒しドレン弁を(この機関車はバイパス弁も兼ねてるよう)開け、
本職でもブレーキが出来て一人前と言われる難関の制動に備える。
単弁を重なりから加圧減圧を必要に応じて繰り返し停止、1メートルほど過走だ。
訳のわからないまま後進措置をとり汽笛一声、発車。
雑誌等で知ってはいたが、身をよじっての運転操作と前方注視は大変であった。
構内はカーブしているため、乗降場進入の際汽笛を吹鳴する。
厄介なのは後進の場合4‰の上り勾配で停止位置間際まで加減弁を開けていることだ。
慣れた方ならどうってことはないだろうが、初心者にとっては閉めるの合図と共にすぐに制動というほど忙しく、
停車しているトロッコに激突しやしないかとヒヤヒヤものだった。
実際は教導機関士が介助してくれるのでそんなことはないのだが、たった4‰の勾配でも速度を殺してしまうと
手前で停まってしまい、再度加減弁を開けなくてはならないらしい。
それは機関士の恥なのだそうである。




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  1. 2018/05/16(水) 03:21:10|
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