笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

両毛線こそC50

5月19日、両毛線にてD51498による 「SL本物の出会い栃木号」の運行が行われた。
久しぶりに蒸気機関車を見た年配の方は昔を懐かしみ、初めて見る子供たちや
現役蒸気を全く知らない世代にとっては多いに感激された方もいらっしゃるのではないだろうか。
沿線は盛り上がったであろうし、一蒸機ファンとしてもそれは大変喜ばしい限りだ。

両毛線といえばC58、C50の運行線区で、特にC50が戦後も本線を貨物や旅客列車を牽引していた
全国的にも珍しい路線ではなかったか。
少年時代に読んだウンチクによれば、結局C50は旧式のハチロクを越えられなかった不遇の機関車として記載されていた。
それでも戦前は軽貨物や快速列車で活躍し、後の中距離電車の基礎を築くなどしっかりと鉄道史に功績を残しており、
鉄道省時代から長らく勤めていた技術者の故久保田博氏も、ハチロクの生産が長期に渡り過ぎ
問題点の改良されていたC50はもっと早く世に出るべきであり、現場での評価も変わっていたであろうと著書で述べられている。

形態的にも中途半端だと言われることもあるが、僕はこの機関車はとても好きな形式だ。
一度だけ新鶴見操車場で見たことがあってD51を飽きるほど見ていた目には、高いランボードとC56より大きなスポーク動輪、
二つコブとリベット作りのちょっと古めかしい中型のスタイルに釘付けになった。
煤だらけだったけれども
「なんて軽快感のあるかっこいい機関車だろう…」
それがC50の第一印象である。



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小山駅東公園


何度かC50に会いたくて小山に行ったことがある。
公園の中に屋根付きの建家に保存されてるC50123は足回りも油で磨かれ状態もよく逆転機も可動する。
ピカピカに整備されたC50は子供時代に見たものよりもっと繊細な趣きで火を入れれば走りそうだった。

彼が活躍した両毛線は、思川、大平下、岩舟、足利、桐生、国定、駒形…と旅情を感じる駅名も多い。
栃木駅周辺は堀が流れる懐かしい昭和の匂いが残る町並みもあり、一部複線の電化路線ながら好きな路線だ。

アニメ映画「君の名は」の新海誠作品のひとつ「秒速5センチメートル」でもこの両毛線が登場し
中でも木造駅舎時代の岩舟駅が見事に描写されている。
何度目か両毛線を訪れた時には感じの良かった思川や大平下、岩舟までも改築されてしまい、
それでもまだ岩舟駅は辺りの景観を損なわない佇まいだった。



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両毛線 岩舟



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岩舟駅前


また両毛線は夕日がきれいな路線だとも思う。
北関東の足尾山地を背景に平野部を走るC50はなぜか黄昏時に一番似合う蒸機機関車なんじゃないかな…
なんて思いもあり、30年以上前に落書きしてみたことがある。



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当時は両毛線の沿線風景は全く知らず、ただC50という機関車の似合うイメージで落書き帳にザザッと描いたものだが
これが僕のC50像だった。

両毛線のさよなら蒸機は主役のC58であったという。
他線区ではほとんどが入換機と地味な余生を送った僚機の中で、晩年でも佐野~小山に区間貨物の仕業が一本残り
列車の先頭に立ち続けていたC50こそ、最後の花は彼に手向けて欲しかった思いだ。

たら、ればを言ってはキリがないが今回の運行に際し、
D51はC56と共に幼少時代から最も接した機関車で大変馴染み深いものの、
小山の123号機が復活していれば今回の蒸機運行はC50の里帰り運転になったかもしれないのになぁ…
と少し悔しさが込み上げている。




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  1. 2018/05/19(土) 18:21:31|
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蒸気の幻を追いかけて、まだ知らぬ景色へ、まだ知らぬ土地へ

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2014年10月 吉都線車内


列車での旅となった大畑行き。
東京からサンライズ出雲・瀬戸のノビノビ座席で居合わせた岡山の初老の方と酒を呑み、
久しぶりに夜行列車の車窓を楽しんだ。

岡山から普通列車を乗り継いで、相変わらず美しい瀬戸内の景色を眺めながら
かつてC59やC62が音戸や安芸を牽いていたなど嘘のようだと呉線経由で小倉で一泊、日豊本線を南下した。
途中キューロクやC50で賑わった行橋を過ぎ、D51が奮闘した宗太郎を越えて行く。
遥々みちのくから廃車を逃れたC61も歩みを刻んだ高鍋、佐土原、そしてライトパシフィックの里である宮崎。
蒸気最晩年に奇跡的に復活したC57牽引定期急行日南3号の足跡残る日向沓掛、田野、青井岳…。
面影が全く残らぬ行橋や大分、宮崎など当時を知る人にとっては複雑な心境だろうが、
それでも南の名場面を見せた錚々たる機関車の残り香漂う日豊本線を辿れた喜びは感無量の思いだった。

遅い昼食をと入った都城の駅舎脇にあったうどん屋で、たった一人の客でいた飲んべえ親父が
何故かプロ野球の話を持ちかけてきた。
どうやら馴染みの客らしい。
九州だからホークスファンかと思えばタイガースだという。
兄ちゃんはどこじゃと、僕は大洋時代からベイスターズだと答えて当時の選手の話で盛り上がった。
ご満悦で帰っていったオヤジさんを見送って、悪かったねぇと店のおばちゃんに
旅は情け人は心、たまにはいいもんですよと笑えば、ありがとねと礼を言われた。


都城から吉都線に乗り換える。
C55やC57が駆けた、僕の中で好きな路線群の南端に位置する列車に乗り込む時のときめきは、
初めて一人旅をした頃の興奮によく似ていた。
少ない乗客のほとんどは小林で降り、えびの飯野からは自分一人となる。

南国特有の開放的な青空の下、西日を受けた視線の先に霧島の山々が浮かんでいた。
優雅な姿で駆け抜けたであろう機関車たちの幻を追うかのように
まだ見ぬ景色に夢を持ち、まだ知らぬ土地へと冒険に出るようなワクワクとした気持ちを抱く僕を乗せ、
列車は眩い光の中を走り続けた…。




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  1. 2017/11/29(水) 03:07:00|
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見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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