笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

故郷(ふるさと)の桜

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東京で桜が開花した。
寒かった今年の冬、桜も遅れるだろうと予想していたが、結果的に平年より4日早い開花という。
羽田から実家へと京急、南武線と乗り継ぐ車窓に見えた桜はまだ6~7分咲きでも
久しぶりに見る染井吉野は美しく可憐だった。
歳を重ねる毎に故郷の桜が恋しくなるのはなぜだろう…。

17時になると防災無線から鐘のチャイムが鳴る。
1月から4月までは「浜千鳥」、5月から9月は「椰子の実」、10月から12月までは「この道」と夕まぐれの空に響く故郷の音色だ。
鐘が流れる景色を見ながら家に着き、近くの公園に行けばここにも桜が咲いていた。


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小学校低学年の頃、ここは米軍基地だった。
詳しくは知らないが航空機などが離発着するような大規模なものではなく、なにか別の用途があったのだろう。
高学年の頃には基地はなくなりしばらくは更地だった。
基地の縁に沿うように流れていた二ヵ領用水も当時はドブ川で、町工場から流れる黄色や紫の毒々しい排水が垂れ流しだった。
そんな所でも竹やぶがあり、誰が作ったか立派な秘密基地もあった。
青大将や縞蛇などもいて、実家の庭や玄関にも入ってきたことがある。
都会の中でも米軍基地によって僅かながら生きてこられる環境があったのだろう。
ある日、用水の淵で大きな蛙を飲み込んだと思しき青大将が動けずにいたところ、近所の悪ガキどもと一緒になって
寄って集って石を投げ、棒で叩いて虐めぬいたことがある。
今思えば残酷極まりない話だが、子供なんてそんなものでそうして命の尊さを学んでいく。
それは人から教えられるものじゃなく、体験から学んでいくものだ。


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思い出がたくさん残る基地跡は、今では高校が建ち、桜並木やオブジェが置かれて市民の憩いの場となっている。
周りは工場跡に高層マンションが建ち並び、再開発によって町の風景はすっかり変わってしまった。
されどここはいつまでも我が故郷に変わりない。


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川崎市 中原平和公園


「さくら」の語源は「咲く」と「ら(もの)」の掛け合わせという。
美しく「咲くもの」の象徴が桜なのだと。
そして「故郷」は漢語でこきょう、大和言葉でふるさとと読む。
美しい風土の日本で、祖先の豊かな感性が詠まれたふたつの言葉「さくら」と「ふるさと」。
他のどんな土地の桜より、やはり故郷の桜が一番だと思うのは道理なのである。




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  1. 2018/03/29(木) 16:47:53|
  2. 非鉄・番外編
  3. | コメント:0

幾重の山を越えて

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端野町北登地区


空調が完備されて窓も開かない車輛…
その土地が香る風を肌で感じれない列車はつまらない。
惜しまれつつ廃止されたブルートレインなど独特の雰囲気を持った夜行列車はともかく
国鉄型であれ最新の車輛であれ、そういう列車での旅は僕の場合単なる移動でしかない。
時代の流れとはいえ、長距離鈍行や普通急行もなくなってしまった今、鉄道での旅は滅多にしなくなってしまった。

代わり…というものではないが、バイクでの旅が僕の主流になってかなり経つ。
車好きの方には申し訳ないが四輪ではだめだ。
ある程度身の安全も確保され、荷物も大量に運べて、便利で運転自体は好きであるけれども
あの箱に囲まれ、雨に濡れることもなく暑くも寒くもなく、風の匂いを肌で感じることは出来ず、同じ箱でも列車の車輌とも意味がまるで違う。
バイクには体剥き出しの、一歩間違えばコケて痛い思いをし下手をすれば死んでしまう緊張感の上に存在する風がある。
僕にはそれが心地いい。

若い頃は2スト250ccからナナハン、リッターなどのオンロードにも乗り、オフロードの世界を知ってからもしばらく並行して続いていた。
夜は横浜や川崎の埠頭や工場地帯を、湘南や三浦海岸、時には首都高をぶっ飛ばしに繰り出した。
褒められたものではないが、傍から見れば峠族と同じように山道を攻めステップなど擦るのは普通だった。
しかし、オンでどんなにぶっ飛ばしてもすぐに車に追い付いてしまう。
せっかく遠くに行っても砂利道すら入れない。
この先の景色はどうなっているのだろうと思っても選択肢に入らないことから次第にオフ一本になっていった。

メキシコ・バハカリフォルニア半島で行われるデザートレース。
4年に一度、その半島を縦断するBAJA1000という昼夜ぶっ通しで1000マイル走るレースがある。
実家の隣りもバイクキチガイで、脂に乗りきっている頃バハに行こうぜと誘われた。
ライダー3人で乗り継ぎ、サポート隊を含めれば6~7人のチームになる。
休暇は半月ほどということでそんなに取れないと断念したが、チームは見事に完走し
その後、パリダカにもお誘いを受けたが資金的にも体力・技術的にも衰えたので断った。
しかし声をかけてくれた時が花、行きたいと思った時、やろうと思った時がその時だと、今にして思えば無理しても行くべきだったと思う。

ただ僕の場合、レースという人と競い合うより一人で旅に出ることの方が性に合っているようだ。
高速道路は基本的に乗らない。
ナビなんてもっての外だ。
道は間違えてこそ意味があり、旅の面白さがある。
地元ならではの美味いものなどいらない。その辺のいつのだか分からないアンパンで十分だ。
そんなものより風を感じたい、匂いを感じたい。
夏は汗でベタベタになり埃にまみれ、冬は寒い。
猪に襲われ、蛇を踏み、熊に鉢合い、川を渡り、岩肌を滴る水を飲む。
森や様々な土地の風の色、匂いを身体で感じ里の人の情けをありがたく受ける。
幾重の山を越えて冒険の先で訪れるあのホッとした感覚はバイクならではの旅の醍醐味だ。

列車での旅も出来るだけ鉄道から離れたい。
鉄道がない土地に一歩踏み込むことで全く違う風があり匂いがある。
鉄道撮影も好きだから止められないけれども、僕の場合、これだけだと限界が来てしまう。
現在は長期の休暇は取れないが、出来る範囲でこれからもバイクで旅をして行きたいものだ。
そしていつか、あの時行かなかったバハへの旅に出たい…そんな夢を持っている。




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  1. 2017/07/15(土) 00:48:32|
  2. 非鉄・番外編
  3. | コメント:0

迎え火

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実家にて    2015年7月撮影


(今回は非鉄、全く鉄道に関係ないことなので興味ない方はスルーされて下さい)

先週末の予報では今週は例年並みの気温に下がるとなっていたオホーツク地方。
それが見事に外れ、連日30℃前後の気温が続く。
道内の人には相当堪えているようだが僕にはありがたい。
確かに暑くて汗は噴き出るが、関東など内地に比べたらやっぱり北国の夏の暑さでなのである。
日差しが強くて暑いだけでアスファルトの照り返しも少なく、あの息をするのもしにくいような、人工的に温められたような空気の暑さがあるわけじゃない。
そんな空気が風に吹かれれば熱風という表現が相応しい。
それに熱帯夜がない。夜となれば20℃前後に下がり、郊外に住む自宅の周辺は肌寒くすらあり
エアコンのない我が家で日中であっても扇風機すら出していない状態で我慢できるほどだ。
毎日毎晩厳しい暑さに見舞われている方々からすれば羨ましがられることだと思う。

その暑い夏…といえば、スイカに風鈴、蚊取り線香、花火に水遊び、そしてお盆である。
花火大会だとか大きな夏祭りなどの人が多く集まる行事は好まず行きもしないのだが、自宅で行うお盆の行事は子供の頃から好きだった。
一般的にお盆といえば8月だが僕の実家の方は7月で、日付の変わった今日が盆の入りだ。
旧暦の頃の盆は7月だったものが、明治以降の新暦になって旧暦の日付がそのまま新暦に移ったらしい。

かなり以前に仏壇の過去帳を見ると元号が文化と書かれている箇所があった。
家系図はないので果たしてその先があるのか不明だが、少なくとも江戸時代後半の頃から代が伝わっているのだろう。
菩提寺へ墓参りに行き、線香を焚き花を添える。
並びにある古い墓にも線香を添えて供養した。
幼い頃、一体いつのものかと思われるこの古びた墓がなぜ家の墓にあるのか不思議だった。
恐らく親に聞いていたのだろうが全く覚えがなく、あれはそういったご先祖の墓だったのかとその時ようやく理解した。

いつもはキュウリとナスだった精霊馬が、この年はどういう風の吹き回しか藁細工のものだった。
おがらを燃し、ミソハギの束を閼伽水を浸け、水の子にかけて先祖を迎え入れる。
さすがに仏壇のろうそくの火を一晩中絶やさぬというのは火災の恐れからやらないが
起きてる最中は火を絶やさず、いつもより豪華な供え物と明るく灯る仏壇に、なにか家の中が賑やかになったような錯覚をする。
人間都合のいいもので、普段は霊的なものは信じないくせにこういう時は霊の存在を感じるものだ。
怖いという存在ではなく、よう帰りなさったなぁと慈しむような不思議な気持ちになる。

子供の頃は近所でも盛んに見られた迎え火・送り火。
地元では再開発が進んで超高層マンションが建ち並び、実家周辺も随分と様変わりして今ではすっかり見なくなった。
新しく住居を構え地方から来られた方も多く、古くからいる近所も世代が変わり
アパートやマンションでは環境もないだろうし、忙しい都会では段々と面倒にもなって来ているのかもしれない。
けれども、先祖を敬う日本の良き伝統、良き風習…
時代がどう変わろうと、僕はこういうものは大事にしたいし今後も残していきたい…と迎える火を見つめてそう思った。




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  1. 2017/07/13(木) 01:37:43|
  2. 非鉄・番外編
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Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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