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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

運河のある鉄路

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鶴見線 海芝浦支線 新芝浦~浅野


輸送を鉄道に頼っていた時代なら多くの線路が敷かれていたであろう京浜運河のある風景。
その名残りは昭和末期から平成初期の頃まではそこそこ見られたように思う。
一気に減ったなぁと感じたのはみなとみらいの工事が本格化した辺りだろうか。
埠頭へ行くと廃止になった線路がそのまま残っていて、ドブ臭い運河と古臭い倉庫、人の気配がしない空間に
夜ともなれば巷で見る港とは一味違う独特な夜景が楽しめた。
まだ生きてる線路があると数輌の貨車が埠頭の照明にボンヤリ浮かび、ホキやトラなどの車輛に乗り込み
たまに運河を通る船を見ていた。
基本的に埠頭は立ち入り禁止だが、無視して入っても港湾労働者や警備員に
「〇〇の区域は船の積み下ろしがあるから行くなよ」くらいの、特にお咎めを受けることのない良い時代で
作業を見ながら飲んだ缶コーヒーの味は忘れられない。

忘れられないついでにもうひとつ、夜の岸壁でビットに腰かけ港を眺めていると艀がやって来た。
近付く艀に邪魔になるなと立ち上がると強烈なライトの向こうでくわえ煙草の作業員が叫ぶ。
どやされるのかと思えば何てことはなく手を貸せと言う。
「おい兄ちゃん、ロープ投げるからそこに引っ掛けてくれや」
言われるがままにロープをビットに引っ掛け、要は体のいいパシリに使われたわけだが悪い気はしなかった。


港湾整備が進み、臨港線も残っていた廃線跡も数を減らし、比較的気軽に入れた運河沿いの規制も厳しくなった。
旭運河沿いにスマートなステンレスの列車が走る。
ちょっとキケンな匂いがしていた運河のある風景は随分と大人しくなった印象を与え、
飲んだ缶コーヒーは少し寂しい味がした。




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  1. 2019/08/06(火) 22:22:57|
  2. 鶴見線
  3. | コメント:0

運河と吹き溜まり

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鶴見線 大川支線 大川~安善


京浜工業地帯のド真ん中を走る鶴見線は都会のローカル線といわれる。
日本の産業を支える大工業地帯にも関わらずそう呼ばれるのは、僅か3輌編成の短い列車と少ない本数からなのだろう。
乗客は工場関係者がほとんどを占め、土日になると日中の時間帯は上下2本ずつの列車しかなく
特に大川支線ともなれば平日でも総本数は朝と夜だけの9本、日中の運行はない。
土日ならば朝2本、夕方1本の計3本で、関西地方の和田岬線日曜ダイヤの2本には敵わないにしても
ダイヤだけでいえば、かつての「日中走らぬ日中線」のようだ。

今でこそ横浜の港はみなとみらいに代表される雰囲気のよい洒落た港になったが
それはそれで好きではあるけれど、それ以前の、一歩裏に行けば見られたドブ臭い運河のある横浜が好きだった。
不良のたまり場というか、出来の悪い小チンピラみたいな連中が倉庫の脇でウンコ座りして
煙草を吹かしていつまでもダベってる、社会から脱落したお誂え向きの吹き溜まりの場所である。

運河、埠頭、工場、倉庫…
川崎・鶴見・横浜と夜な夜な決まった仲間とバイクで屯して、薬品だか何だか得体の知れない刺激臭が鼻に付く
体に悪そうな中にいた吹き溜まりの一員だったということもあってか、運河と工場のある景色は居心地がいい。
見慣れたはずの殺伐とした工場群が夕焼け色に染まり、早くも最終となる列車が運河を渡る。

もっとドブ臭かったのにな…

最近は環境問題もあってきれいになったのだろう運河は、ムッとする湿気に混ざって潮の匂いが纏わりついてきた。




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  1. 2019/08/05(月) 03:53:26|
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