笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

秋の気配

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石北本線 緋牛内


8月に入りようやく休みとなった15日。
ヤスミハアメノヒではなかったものの、それでも相変わらず晴れることはなく
それどころか今月に入り全く夏らしい天気がないオホーツク地方。
お盆も過ぎれば秋が来る…そう言われている北国の夏。
先月には確かに暑い日はあったのだが夏の空には遠く至らず、どうやら今年は夏は来ないで終わりそうな気配だ。

結構遅くまでエゾゼミが鳴いていた昨年の夏と打って変わり、
既に庭先では秋を告げるカンタンが鳴きはじめ、街にも駅にもコスモスが咲き出した。
花の色がどうにもノペッとして僕の腕では如何ともし難く、そうこうしている内に列車が来てしまった…
というのはいつもと変わらず、せめて秋はスッキリと、オホーツクらしいさわやかな陽気になって欲しいものである。




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  1. 2017/08/15(火) 20:39:21|
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犠牲者の下に

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前回金華信号場を訪れてから数日後、僕は再びそこにいた。
家を出る頃は時折薄日が差す空模様であったが、西の方角を見ると少し厚い雲に覆われている。

「ひょっとしたら雨が降っているかもしれない」

そう思った僕は迷わず金華に向かっていた。
着けば霧雨が降っていて、静かな山の信号場はもの悲しささえ感じるほどだった。


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石北本線 金華信号場


幼い頃、時々まだ知らぬ寝台列車に見立てて押し入れの中で寝かせてもらうことがあった。
ある日、親父が蒸気機関車のLPレコードを買ってきて寝る時にかけてくれた。
より寝台列車の気分を演出してくれたスピーカーから流れる汽車の音に、幼い僕はその気分に浸りながら眠りについていたものだった。ただひとつの音を除いて…。
その音の収録先は写真誌などで必ずといっていいほど目にしていた常紋峠であった。
峠に挑むD51444は力強さと迫力をもって去っていくが、静けさを取り戻した峠に鳴く夜鷹とトラツグミの鳴き声に、幼いながらもどこか不気味さを感じていた。

その後、常紋峠は心霊スポットで有名な曰く付きの場所だと知る。
霊的なものを信じるか信じないかは別として、友人に連れられ初めて常紋トンネルの上を走る細い林道にバイクで行った際は怖いというよりむしろ哀しい感じがした。

大正3年に開通した常紋トンネルはタコ部屋労働で建設され、その後周辺からは人骨が、トンネルからは人柱も発見されているのはご承知の通りだろう。
当時はどれほど過酷で非情で悲惨だったか、一体どんな思いだったかと犠牲者を偲ばずにはいられない。
何気に乗っている石北線も、普段を過ごす暮らしにもこの犠牲者たちの下にある。

現在、駅舎のかつてのホーム側には殉職者追悼碑への案内板が掲げられたままでいる。
列車を降り、或いは停車中に目にすることもあったであろう案内板も今や駅廃止となり、通過する列車から果たしてどれだけの人が目にしているのだろう。

宵の始まる寂静的ともいえる色となった風景にオホーツクが駆け抜ける。
少しでも知って欲しいとの願いか、照明に照らされ存在を訴える光景が、僕には一際寂しいものに思えてならなかった。




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  1. 2017/08/08(火) 03:37:50|
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ヒメジョオンの咲く線路端

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石北本線 緋牛内~端野


相変わらず休日は雨に祟られる。
他人から雨男と冷やかされることが多いが、8月も半ばを過ぎれば秋の気配が漂うというのにこんな案配ではさすがに意気消沈である。

先月、猛暑が続いた日もあった北海道。
でも空は僕の思う夏空のそれではなく、今ひとつ盛り上がりに欠けている。
案の定夜勤明けでようやく夏雲が浮かぶこの季節らしい空が広がり、眠いのを我慢して夏空の下に飛び出した。

地元の限られた区間での撮影に、時には様々な地域で撮影したいという気持ちはあっても
「どうやって撮ろうかなぁ」
と下手は下手なりに考えたり、また季節毎に見せてくれるシーンに新たな発見があったりしてこれはこれでいいものだと思う。

鉄道が趣味の方ならご存知の方も多いだろうヒメジョオン。
駅構内や線路端に咲いている姿をよく見ることから鉄道草ともいわれる。
その花が道より低い玉ねぎ畑の片隅に一本だけ咲いていて、なぜかそれに惹き付けられた。
無理な体勢に汗が顔を滴りしつこくブヨが飛び回る。
あっという間に5~6ヶ所刺されて猛烈に痒くなるが構っているヒマはない。
E-5のバリアングル液晶の恩恵に預かり花を見上げると、こんなにきれいだったかなぁといった気持ちにさせられた。

天気はゆっくり下り坂。
列車が来るまでの間、せっかく浮かんだ夏雲に変わってスジ状の雲が増えてきた。
それでも元気な日差しが降り注ぎ、列車は軽やかに駆け抜ける。
短い北国の夏らしく時折吹く風は爽やかで、ヒメジョオンが手を振るように揺れていた。




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  1. 2017/08/01(火) 19:55:26|
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雨の金華

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石北本線 金華信号場


昨年3月に廃止された金華駅。
その後、信号場に格下げされてから初めての訪問となった。
駅舎は保線係が使うとのことで側線も一緒に残っていた。
ただ、駅は廃止されているので窓は塞がれ、待合室にも入ることは出来なかった。
とはいえ、金華駅は北海道らしい山の中にポツンとある好きな鉄道風景のひとつであったから駅舎だけでも残ってくれたことは嬉しく思った。

金華はどういう訳か雨の日に訪れることが多い。
山に雲が垂れ込め、静けさがより感じられてなんとも言えない風情が感じられたからだろう。
駅前に数軒残る家にまるで人の気配を感じない訳でもなく、その風景に駅は似合っていた。

駅廃止後も列車はここまでやって来る。
停留所扱いの西留辺蘂は、留辺蘂~金華の閉塞区間にあるため運転取扱上折り返すことが出来ないことが理由らしい。
わざわざ金華まで来て折り返すならば客扱いをしてくれてもいいじゃないかと素人の僕は思うのだが、
利用客のほとんどいない駅のために冬の除雪や最低限の保全にかかる経費を削減したいのだろう。
駅としての役割は終えたかもしれないが、運転上必要な施設として僅かながら生きながらえたことにどこかホッとした気持ちになった。
列車が止まって息をしている光景はやはりいいものだからである。



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かつての待合室の屋根で雨宿りしながボーっとする。
今は駅舎の土台だけとなったホーム跡を歩く。
駅を囲む山の風景を眺めながら、蒸気現役時代の活気に溢れていたであろう時代に想いを馳せる。
多くの犠牲者の下に今がある哀しき歴史も忘れてはならない。

久々に金華で過ごしている内に快速きたみがやって来た。
雨音で山から降りてくる足音は消され、濡れた線路をライトで照らし静かに通過していく…。
そんな鉄道ならではの雨の風情を楽しませてくれる金華は、駅が廃止となっても健在である。




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  1. 2017/07/29(土) 16:09:19|
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夏の夜に

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石北本線 緋牛内


おい!車、出れんくなるぞ!
玄関のチャイムが鳴り隣の農家さんの声で夜勤明けで寝ていた体を起こされた。
一体何事かと見れば家の横は泥水の濁流となっている。
既に地面も抉られているのであろう濁流に、車の片輪は飲まれて少し傾いていた。
急いで車をD型(農業倉庫)に入れ、改めて辺りを見ると家の前の道路も川になっている。
家の横を流れる濁流は、裏の沢が丘の上から流れてきた農作物と雑草によって狭い箇所がせき止められてこちらに溢れ出したものだった。
合羽など来ている余裕もなく、沢に入るのは危険だったがお隣とズブ濡れになりながら懸命に溢れ出る流れを止めた。
記録的短時間大雨情報などという最近よく耳にするものは出るほどのものではなかったが、それでも相当の降りだった。

オホーツク地方は雨に弱く、少し強く降っただけでも畑の土が流される。
元々雨の少ない土地故に仕方がないことだ。
しかし例年以上の台風に見舞われた昨年は別として、いつもなら勢力が衰えたといっても来る台風にここまでなったことはない。
雨が上がった翌日、家の横は深い溝ができ、前の道路は田んぼのようになり厚く土砂が堆積していた。
近所では畑や道の法面が崩れ倒木もあり、通行止めになった箇所もあって避難した家もあったそうだ。

「去年の台風より被害がデカいわ。畑、見に行く気にもなれんわ」

麦の収穫まであと少し。
昨日まで立派に立っていた麦はあちこちで無残に倒れ、畑は水田のようになっていた。


明け、休み、夜勤前と流れた土砂をネコに積み一人で何往復も運んで溝を埋めて整地をし
道路清掃車など来ない僻地故、重たい土砂をスコップですくっては投げを繰り返す日々だった。
ショベルカーなど使えば半日も掛からぬ復旧作業も人一人の力で行うとなると無力に近い。
そしてようやくブログも更新できるに至った訳だが、先日の北九州北部など大雨による大災害を見るにつけ、
あれほどの人と重機を投入してもいつ終わるやとも知れぬ復旧作業と暮らす方々の苦労が偲ばれる。


そんなことで久しぶりに撮影…といっても仕事帰りに少し寄っただけのもの。
まるで信州の高原地帯であるかのような涼しい夜、腕時計を見ると最終列車に間に合いそうだと緋牛内の駅を訪れた。
本州ならば今頃は様々な夏の夜虫が鳴いているはずだが、北の外れの土地ではその数の少なさに寂しく思う。
待合室の扉を開けると、足元にカブトムシの小さめのメスかと思いきやミヤマクワガタのメスが裏返っていた。
ほれほれと指を添えるとむんずとしがみつき、近場の枝に指を持って行くと体をUターンさせ手の甲へと下がってくる。
モソモソと痛いようなくすぐったいような感覚に、それでもやはり夏の夜なのだと実感させられた。

遠く列車の音が聞こえては消えを繰り返す。
向こうの踏切が鳴る、駅の列車接近の警報が鳴る…。
煌々と闇を裂くヘッドライトが見え、ピーッと夜汽車の声が静かな集落に響く。
砂利敷きと夏草に覆われたローカルなプラットホームを駆け抜け再び闇へと去っていく後ろ姿に、
夜汽車ならではの独特な旅情を感じざるを得なかった。

この先の停車は美幌、女満別、そして旅路の果ての終着駅網走である。





遅れ馳せながら、大雨によって被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。


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  1. 2017/07/26(水) 17:57:36|
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u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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