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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

線を引く

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石北本線 端野~緋牛内


夕まぐれの景色を照らすヘッドライトにドラフト高らか、黒い貨車が延々と続き
最後部の緩急車の灯りは星が瞬き始めた蒼い空と重なるようにして通過した。
タンタン、タンタン・・・と小さくなってく列車の音が、レールに落とした二条の紅い陰を乗せて遠ざかる。

吊り掛けのモーター音を唸らせ、古びた電車が山の麓の小さな駅を発つ。
裾野を弧を描くようにして、リンゴ畑に白熱灯は揺れ、桜の木の下で見えなくなった。
その場を惜しんで少し残ると、鉄橋を小さく紅い雫となった電車が渡っていく。

懐中電灯を頼りに蛙の声を聞きながら、蛍の怪しげな光が舞う夜道を辿ったあの頃の記憶・・・
寂寥感に押し潰され、今にも泣き出しそうだった。

辺りが暗くなり、視界に映る景色は沈む。
色彩を失いかけた玉葱畑の上を車窓は流れ、紅い尾灯が線を引いて木立の向こうに消えていく。
今や故郷となった列車にあの時の自分の面影を見た気がした。




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  1. 2020/07/25(土) 21:44:34|
  2. 石北本線
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雨そぼ降る路

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石北本線 美幌~緋牛内    2018年6月撮影


今年はどうも梅雨が長い。
九州をはじめ各地にもたらす被害は毎年のように続く。
どうかご無事でありますよう、気を落とされぬよう・・・

熊本に元の職場の先輩がいて状況を聞いてみれば
高台にある家は大丈夫だが、下の川が心配だの声。
定年後、古里の熊本に帰り地震・大雨と災害続きでも
とりあえず元気だったことにホッとした。


一方、梅雨がないと言われる北海道。
それでもその時期になると一応は、ある。
関東など内地の比ではないにしろ、シトシト、ジメジメ。

「いやぁ、蒸すねぇ。嫌んなるわ」

雨が止んだ傍から道や畑に湯気が立ち、見る見る内に乾いていくそれなのに・・・
暮らし始めた頃は、「こんくらい、なんもだ」と言えてた自分。
それが年月が経つと「ないわー」

いつしか土地に慣れていた。




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  1. 2020/07/17(金) 02:38:52|
  2. 石北本線
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仕事人

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石北本線 網走    2016年6月撮影


現役蒸機世代から赤鬼と鬼畜呼ばわりされたディーゼル機関車DE10。
構内入れ替えは言うに及ばず、小運転、時には本線を旅客・貨物列車の先頭に立ち
鉄道華やかりし晩年を縦横無尽に走り抜けた。
同系のDE15に至ればラッセルの鎧を身に纏い北の鉄路を守った陰の功労者。
その機関車が久しぶりに工臨を従えオホーツクの終着駅網走へと入る。

作業は一見のんびりした昼行灯に見えるかもしれないが、一度かんざしを回せば三味線の糸が飛ぶかの如く
操車係の巧みな手旗誘導に機関士は自在に手綱を操り、カマはそれに応え見事な連携を見せる。

彼らは鉄路の必殺仕事人。
花形の旅客列車の陰で今日もどこかで人知れず、必ず支えてご覧にいれやす。




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  1. 2020/06/11(木) 11:41:21|
  2. 石北本線
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帰りみち

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石北本線 西女満別~女満別    2015年5月撮影


じゃあね、バイバーイ!
散々遊んで泥だらけになった手と手が踏切で別れる。
次郎ちゃん家はあっち、ぼくん家はこっち。
互いに振り向いては手を振り、それを何度か繰り返した。

カンカンカン・・・
警報器が鳴ってまた振り向くと列車が勢いよく通過した。
遮断機の開いた向こうに次郎ちゃんはもう居なかった。

林の間の一本道。
楽しかった一日が終わってしまう帰り道。
夕日に照らされた道は少し寂しさを覚えた少年の日の思い出。




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  1. 2020/05/31(日) 00:48:47|
  2. 石北本線
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夜はまだ冬

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石北本線 端野~緋牛内    2015年4月撮影


日没と共に足に絡んだ冷気は水かさを増した川のように、腰から胸、全身を覆う。
薄手とはいえ手袋を履いてるはずの指先は痛み出す。
(北海道では「手袋をする、はめる」を「履く」という)

さくら? すったらもん、こっちではまだ咲かんべや!

桜前線が海峡を渡っても、大雪の峰々を越えて来るまであと半月。
いい加減早く来てくれと痺れを切らし、怒りとも嘆きとも取れる声が聞こえるのもこの頃だ。

煌々と照らした行く手に樹陰が走る。
学生で賑わう車窓が、凍える足下を足早に蹴って流れていく。
4月後半といえど夜に向かうオホーツクはまだ寒い。




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  1. 2020/04/30(木) 05:15:05|
  2. 石北本線
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