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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

古くたっていいじゃない

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秩父鉄道 武州日野    2013年10月撮影


雲が垂れ込め雨に霞む秩父の山に煙が上がる。
構内を出てすぐ始まる上り勾配にシゴハチは足を緩めることなく小駅を通過した。
情報も確認せず行き当たりばったりのため、道東の麗機C5833を思わせる後藤式デフをまだ装備していたことも知らずに
せっかくのJNRマークを活かすことも出来ず何とも勿体ないことをした。

やっちまった感に暮れているところへ一人の同業者から声を掛けられた。

それ、デジタルなんだろ?
いいなぁ、おれ、買う金がないからさ、未だこれだよ。
と上着で隠すようにしていたカメラをそっと見せてくれた。

Canon F-1!

(蒸機が)現役の頃に無理して買って未だに使ってるんだ。
周りはデジタルばかりだから恥ずかしくて大っぴらに出せないんだよと笑う。

とんでもない。何が恥ずかしいものか。
蒸機を求めて全国を廻ったという共に歩んだ人生の歴史が刻まれたカメラを恥じることなどどこにもなく
仮に買い換える金がなかったとしても、今まで大事に使い続けてこられたことが心底素敵だと思った。

新型が出る度に買い換えられる財力のある方は羨ましいとは思うが、皆が皆カメラや趣味ばかりに金を掛けられる訳ではない。
カメラに詳しくない僕などにとっては一世代前でさえもう十分だし
やれAFが、連写が、高感度が、画素数が、EVFがなどいいに越したことはないにせよぶっちゃけどうでも良い。
まして動画機能は個人的にはなくていい。ちょいと撮りたければスマホで十分、凝りたければ専用のものを買う。

この時の機材はエントリーモデルのE-410、レンズは欲しくて少しずつ貯めてやっと買った今でも現役の50-200SWD。
カメラは今後使うことはないだろうと処分してしまったが、残しておいても良かったかなぁと思う。
機材を語るなど一生掛かっても出来るものではなくそれこそ恥ずかしいが、年々プロやハイアマの方に
ターゲットを絞ったような業界には、僕のような半端者にはわくわく感も乏しく敷居も高すぎる。

軽くて小さくて、どこへ行くにも気軽に持ち出せ、何よりも素人でも適当に楽しめたこの頃のものでいい。
古くさい考えと笑われても、せめて今ある物を大事にしたい、大事に使い続けたい、とこの絵面を見ると思うのだ。




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  1. 2020/09/20(日) 22:40:41|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:2

幻影を求め

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秩父鉄道 影森~浦山口    撮影日不明


1988年のさいたま博の目玉として、秩父鉄道で蒸気機関車の運行が始まった頃はテンダーに派手な装飾が施され、
全く心揺さぶられることはなく無視していた。
せっかく蒸機が近くで走り出したのに、しかもカマはC58だってのに、どうしてチンドン屋みたいなことをするかねぇと
まぁガッカリしていた訳だ。
それからどのくらいしてからか、実家のお隣さんが、テンダーのロゴはなくなったよと教えてくれてようやく機嫌が治まった。
お隣もバイク好き、鉄道好きで、バイクの方はトライアル選手権のオブザーバーとして今でも時々駆り出されているようだ。
現役蒸機を追い掛けた最後の世代で、時々聞かせてくれる当時の話は大変興味深く面白い。

余談だが、お仲間に元世界ランキング5位まで登り詰めた現役トライアルライダーがおり、
仮面ライダークウガのバイクアクションをされた一方で、ちょい鉄、蒸機好きという側面も持つらしい。
バイクを洗車していると歩み寄ってきては気さくに話しかけてくれる人だが、
'91年に国立代々木競技場で行われたスタジアムトライアルにおいて、強豪ヨーロッパ勢を押しのけ
日本人初の優勝達成の瞬間を目前で見て以来、こちらが意識してしまう存在でもある。

さて秩父鉄道の蒸機だが、煙室の装飾は多少残っていたものの許容できるものとなり、ようやく見に行ったり
乗りに行ったりするようになった。
写真は得意ではないので、たまにという程度、どれもバイクでツーリングがてらだったが
好きなバイクで好きなように山中を走り、時間になったら線路端に降りて来て汽車を見るなど有意義な時間だった。

C58は貨客両用のローカル線に適した機関車という性格から、何を牽いても、日本の田舎の風景にもよく似合う。
後ろに続く箱は、これまた嬉しい旧型客車であるからそれを写真に残しておこう・・・
そんな風に気が向いて撮った一枚がこれであった。
蒸気機関車の去り行く後ろ姿が何とも好きで、それを撮りたくても沿線のカメラの放列は許してくれず
撮り鉄が多い所も嫌い、けれども撮影地も知らない、で流れ着いたのがこんな所だった。
汽車はこの先下り坂、煙など吐く訳なくても構わなかった。
蒸気機関車と旧客、山があって、走り去る後ろ姿があればいい、そんな思いだった。
それは現役時代のC58が各地を走っていた姿を見たことがなかった僕にとって、きっとこんな感じだったんだろうと
幻影を追い求めていた夢だったのだ。




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  1. 2020/08/21(金) 05:21:25|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:0

士の背中

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秩父鉄道 三峰口    2014年8月撮影


東の館林、西の多治見と競うように、ほとんどありがたくない暑さを売り物にしている熊谷地方。
山岳地帯へと向かえど、盆地型気候の秩父地方の暑さも冗談じゃねえといったもので
そこをトレースするよう走る秩父鉄道の蒸気機関車を運転することはさぞかし大変なことだろう。
密閉キャブは冬場はありがたいものだとしても、灼熱のボイラーを抱いた夏のキャブ内は50度60度の世界と聞く。
側扉を外すだけに止まらず窓も取り外したところで気休め程度であろうし、キャブ内にクーラーボックスを置き
絶えず水分補給をしながらだというが、飲んだ傍から汗となってしまうに違いない。


夏休みの子供らがキャブの中を興味津々に覗く。
「坊主、内緒だぞ」
あまりにも熱心に覗くものだから機関助士は笑いながら手招きし、初めてD51に乗せてもらった時のことを思う。
大人であっても同じように覗いてしまう魅惑に満ちた室内は複雑に配管が入り乱れ、
いくつものバルブや圧力計がズラリと並び、まるで要塞だ。
これらをどうやって操作するんだろうと思っただけで蒸気機関車の運転は大変だと子供心にも思わされた。
おまけに暑く、危ないからと座らせてもらった助士席は硬く揺れ、大人が怒鳴り合うほどの轟音、
それらに怯むことのない機関士と機関助士の真剣な眼差しに、自分もこんな凄い機関車を走らせる格好いい大人になるんだ、
と誓ったが、見事に脱線転覆、廃車(敗者)クズ鉄の痛い大人になってしまった。


往路の乗務を終え、愛馬を見守り一息つく機関士がいた。
機関士の士は「さむらい」とも読む。
キャプを取り巻く環境、上り勾配に対する運転など幾多の戦を乗り越えてきた、まさに武士の背中は汗と煤にまみれ、
蒸気機関車の運転の厳しさを物語ると同時に機関車乗務員としての誇りが滲んでいた。




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  1. 2020/08/19(水) 01:09:19|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:0

鼓動

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秩父鉄道 武州日野~白久    2014年8月撮影


今にも泣き出しそうな夏空が重くのしかかる。
ただひたすらじっと突っ立って暑さを凌ぐ馬のように真似しても、
纏わりつく湿気と噴き出る汗は不快以外の何物でもなく、
北海道暮らしの身体には、この尋常じゃない蒸し暑さはたまったものではなかった。

それでも都心のものとは違い、秩父路で感じるこの匂いは嫌いじゃない。
沿線を流れる荒川は、奥秩父山塊を分水嶺に日本海に向かえば千曲川となるあたり、
幼少時代の大半を過ごした信濃の匂いと被るところあり。

細胞ひとつひとつに染み入るような深い緑と水の匂いを震わせて、山峡に煙が上がる。
元々端正な顔立ちを、LP403の大型前照灯が一層引き立てる秩父のC58。
ロッドが動輪を一回転させる毎に坂をグイっと登り、彼の息遣いはそのまま僕の高鳴る鼓動になった。




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  1. 2020/08/17(月) 09:17:38|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:0

夏の花

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秩父鉄道 浦山口~武州中川    2015年6月撮影


コケコッコ花とも呼ばれている立葵。
梅雨の始まる頃になると茎の下から咲き、上の花が咲くと梅雨が終わるという。

同じ終わりでもオホーツク地方の場合はこれが咲くと夏が終わる少し寂しい花だ。
こっちじゃ無いだろうと思い込んでいた立葵が近所の庭に咲いていて
嬉しかったのも束の間、途端に秋めいて拍子抜けしたものだ。


既に太陽がギラギラと照りつける6月後半の秩父路。
陽炎歪む鉄路にやって来たシゴハチを向こうに見て、すっくと背筋を伸ばし咲く立葵は暦通り上の方に花を付け始めていた。
川崎育ちの身からすれば、秋を報せるよりも夏を報せる花であって欲しい。




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  1. 2020/06/23(火) 02:12:24|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:10
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