笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

宵の駅にて

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釧網本線 緑駅


紅の空に町の灯りが燈り、次第に空のグラデーションが色濃くなる。
人気ない駅のどこか寂しさ覚えるローカル線の風景。
じっと空の移ろいを見つめていると、人里の匂いにどこか安堵したような表情の光跡がやって来た。

今の時期、列車は黄昏の湿原を抜け、牧草地の広がる弟子屈界隈で日没を迎えたはずだ。
陽が落ちた山影は木々のディテールを飲み込み、日本最大のカルデラの湖は深まる闇を湖面に映す。
摩周湖もまた冥界への入口とも思わせているほど不気味に静まり返っていたに違いない。

薄暗い山道を照らすヘッドライトに心細さを打ち消し、
釧路と北見の国境を越えた列車や乗客の目に間もなく映った麓の町の灯火は、どんなに心強かったことだろう。
ホッと肩を撫で下ろし一息入れたのも束の間、列車は終着網走へと目指し、夜が忍び寄る空に向かって走り出す。

カタン・・カタン・・と旅情を誘う赤い尾灯が遠ざかり
再び静寂を取り戻した駅には、いつまでもいつまでも彼の足取りが聞こえていた。




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  1. 2017/03/18(土) 15:32:53|
  2. 釧網本線
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光の中で



釧網本線 札弦~緑


3月ともなると大分寒さも緩んでくる。
夜はまだまだ冷え込み、ドカ雪が降る季節でもあるため油断は出来ないが、最近の日中の陽射しは春そのものだ。

結晶のまま積もった雪はザラメ状の姿に変え、畑では融雪材が撒かれ苗を植える下準備が進んでいる。
そんな畑の脇で耳を澄ますと雪融けの音が聞こえてくる。
それに交じって早くも飛び交う小さな虫たちに、夜はどこで寒さを凌ぎ生きているのだろうと不思議に思いつつ、その逞しい生命力にも驚かされる。
雪原を見渡せばこれほど厳しい環境の中にもいくつも生きるための痕跡が見られた。

西に傾いた陽射しが雪原を染め、流氷物語号としての任を終えたキハが行く。
北海道の鉄路存続が取り沙汰せれる昨今、雪原に残る動物たちの足跡のように
彼の残す足跡も高齢者が多い土地にとっては重要だ。
乗客は少ないかもしれないが、その役割は地方であっても都会のそれと何ら変わらない。

春夏秋冬、雨の日も風の日も、そして今日も明日も、様々な人の暮らしを乗せ
銀色に光る痕跡を鉄路に残して走り続けて行く姿が見れることを、春の光の中で僕は願って止まなかった。




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  1. 2017/03/14(火) 00:49:58|
  2. 釧網本線
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春よ、来い

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釧網本線 知床斜里~止別


北国に住んでいると春というのはとても待ち遠しいものだ。
冬は冬で純粋なまでの雪の白さに、まるで疲れて汚れてしまった心まで洗われるような気持ちになるが
暖かい陽射しに大地は一気に芽吹き、生命溢るる春の訪れは格別なものだ。
東京に住んでいる頃はそこまでの待ち遠しさはなく、やはり長く厳しい冬があってのものなんだろう。

まだ北海道をバイクで旅をしていた頃、どこかの土産屋に入った折り沖縄出身という店主は
春を迎える瞬間が一番いいと言っていたことを思い出す。
当時はそんなもんかと思っていたが、実際こうして暮らしてみると「あぁ、なるほどな」と思ったものである。

立春が過ぎてしばらくは寒さも厳しかったが明らかに陽射しは柔らかさを増し
先月末は春のような陽気に包まれた。
夜ともなればまだまだ冷え込むが、寒さと暖かさを繰り返し季節は春へと進んでいく。

眩い陽射しに白い大地は景色を霞ませ、
原野を突っ切る線路の向こうに見えたライトは今日も春を運んでやって来た。
ゆらゆらと陽炎揺れる直線路、厳しかった冬ももうすぐ終わる。


春よ来い、はやく来い。




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  1. 2017/03/07(火) 17:11:15|
  2. 釧網本線
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帰っておいで



釧網本線 止別~知床斜里


1月28日から先月末まで運行された流氷物語号。
昨年の流氷ノロッコと違い話題性もイベント性も少なかったかもしれないが、
鉄道存続自体危ぶまれている状況下で運行されたJR、自治体やボランティアの方々の努力には頭の下がる思いがした。

正直なところラッピング車輌はそのケバケバしさから好きではない。
けれども流氷物語は、キハ54にオホーツクをイメージした好ましくきれいなカラーリングだったと思う。
なんというか、今あるものの中で精一杯のことをした手作り感というか
どこか愛しさすら感じるものだった。

様々な関係者の努力の賜物でもある列車。
見に行こう、乗りに行こうと思いつつも中々折り合いがつかず、
あれよあれよという間に遂に運行最終日となってしまった。
列車名に合わせるつもりだった流氷も岸から離れ、せめてもの慰めは晴れ渡った空だった。

知床斜里を始発とする流氷物語号。
ならば最終列車はその知床斜里に向かう後ろ姿がいい。
ただ残念なことに、去り往く列車は二輛編成のうち網走方車輌が普通のキハ40だった。
それでも…

また来年、帰っておいで。

そんなことを願いながら、僕は知床半島の付け根に位置する町に帰っていく流氷物語を
春のような日差しに微笑む海別の山と共に姿見えなくなるまで見送った。



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  1. 2017/03/03(金) 13:36:35|
  2. 釧網本線
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白き原野に

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釧網本線 止別~浜小清水


この季節になると道外から梅や桜の映像がテレビ等で流れてくる。
穏やかな陽気にコートを脱ぎ街を歩く人々。
もう、あんなに暖かいんだなぁと少しばかり羨ましく思いながら画面を見つめる。

北海道も日一日と陽は柔らかさを増し、農家さんのビニールハウス内での作業が始まると、
雪景色の中でも季節は進んでいるのだと実感する。

とはいえ、時に厳しい寒さがぶり返す。
朝の光も弱々しく、寒々しい原野に輝く二条の線路。
まるで存在を鼓舞するかのようにライトを点し往く列車。
オホーツクの海原は遠くロシアより旅立った白い使者に覆われて、陸との境界線すら見当たらない。
氷の大陸と化した海を渡る風は冷たく、
季節は行きつ戻りつを繰り返しゆっくりと春に向かうことを拒んでいるようだった。

オホーツクに面した鉄路はあれほどあったものが、今やここ一路線となってしまった。
この厳しい大地に暮らす人々にとって大事な生活路線であることには変わらない。
が、それ故に見せる圧倒的な美しい自然と鉄道風景は、どれほどの財産で価値ある資源かと僕は信じている。




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  1. 2017/02/26(日) 02:21:08|
  2. 釧網本線
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Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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