笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

寒さ堪えて

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釧網本線 茅沼~塘路


蒸気機関車は煙が命だ…とはよく聞く言葉だ。
確かに煙がないと画にならないとは思うが、僕はそれほど拘りがない。
なぜなら、それも大好きな蒸気機関車の見せるひとつの表情だからだ。

蒸気機関車は人間に一番近い機械だといわれる。
人ならば、いつも歯を食いしばって力の限りを尽くしている姿が全てでなはいはずだ。
かつて蒸気機関車が当たり前にいた時代、駅の片隅や側線に憩う姿は峠に挑む凄まじい形相とは打って変わり
穏やかでのんびりした表情を浮かべていた。
峠を渾身の力で登り詰め、やれやれと坂を転がるように下る姿も
微睡むような景色をカラコロとロッドの音を立てて駆け抜けていく姿もどれも大好きな蒸気機関車の姿に変わりなく、
むしろそんなところまで煙モクモク、ドレンシューシューではこちらが疲れてしまう。
人は喜怒哀楽があるから面白く、蒸気機関車にはそれがある。
時に浮かれるように足取りは軽く、時に寂しげに汽笛を慣らし、時にコンチキショー!と煙を暴れさせ
手を振る子供たちににこやかに応える…
そんな表情があるからこそどこまでも愛おしいのだ。

強風が湿原に吹きつけ、氷結したシラルトロ湖に落とした雲の影が駆け抜ける。
滅多なことでは肩こりは起こさない性質であるが、あまりにも冷たい風に首をすくめ全身硬直したままの汽車待ち時間は
頭痛を起こすまでになるほど厳しいものだった。

汽車がコロコロ変わる光の中を静々と進む。
機関士さんによっては煙を出してくれることもあるが今日はどうやら無煙のようで、
時々シューっと吹くコンプレッサーの排気が光に浮かんでは消えていった。
確かに白煙を流してくれたらまた違っただろうが、僕はこれでよかったと思っている。
それは遮るものがない湿原をこれでもかと吹きすさぶ寒風に身を縮め、呼吸を止めて歯を食いしばり
時々「ふぅっ」と息を吐く汽車の姿は、ずっとここで汽車を待っていた僕の姿そのものだったからだ。

蒸気機関車は人間に一番近い機械…。
煙はなくても、改めてそれを実感させてくれるシーンを彼は見せてくれた。




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  1. 2018/02/22(木) 20:36:53|
  2. 釧網本線
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冬の日常

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釧網本線 塘路~茅沼


時折り鹿や鳥の鳴き声と、風に揺れる木々たちの音しか聞こえない湿原に蒸気機関車の音がやって来る。
その方向に目を凝らしドキドキしながら待っていた。

シラルトロ湖を背景に、今日も汽車が駆けて行く。
黒い体を白い景色に浮かばせて。

厳冬期だけに訪れる湿原の日常…
いつまでもずっと見ていたい冬景色がここにある。




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  1. 2018/02/21(水) 17:58:10|
  2. 釧網本線
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汽車が似合う人



釧網本線 標茶


汽車が似合う人は誰だろう…,ふと、そんなことを考えていた。
渥美清…、いや渥美清という人が汽車に似合うのではなくて寅さんが似合うのだろう。
もっといえば寅さんは汽車が似合うというより旅が似合う人物で、寅さんはその課程に汽車がいる…そんな感じだ。

となると、やはりこの人をおいて他にはいない高倉健。
「鉄道員(ぽっぽや)」のイメージも強いが、「駅STATION」や「遥かなる山の呼び声」も印象に残る。
「駅」では旧増毛駅が、「遥かなる…」では旧標津線の上武佐駅が登場する。
福岡県出身の健さんは不思議と北海道の風景に溶け込み、寂れたローカル列車と絡む姿がよく似合っていた。
そして雪もとても似合う人だった。
どこか影があり、背中で語る役柄から勝手にそう思っていただけなのだが、
厳しい寒さを堪えて生活を営む北国の風景が演じる健さんとどこか重なったのかもしれない。


雪降る駅を汽車が出る。
雪降る町に煙を残して汽車が去る。
北国の汽車と雪が似合う男、高倉健…。
そんなことをイメージしながら汽車の背中を見送った。




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  1. 2018/02/15(木) 01:01:15|
  2. 釧網本線
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春霞の汽車



釧網本線 塘路~茅沼


暦の上では春とはいえ、まだまだ寒さの厳しい日が続く北海道。
それでも日中の日差しは明らかに強くなり、白い雪の眩しさにやはり春の気配を遠くに思わせる。
この日は太平洋側に進む低気圧により暖かい風が入り込み、湿原は3月のような陽気に包まれた。
一気に進む雪解けに道路は汚ならしい限りだが、霞む景色はほのぼのとした柔らかい表情になっていた。
キリッと引き締まった空気に遥か向こうまで見渡せる風景は目を見張るものの、
長く厳しい冬を過ごす一人としては、モヤった景色は力んだ身体と気持ちをホッとさせてくれた。

塘路発車の汽笛が鳴る。
直線距離にして3~4キロはあるだろうか、汽車の汽笛は彼方から湿原を渡って響いてくる。
サルルン展望台の丘を縫い、やがて広大な湿原の中を一直線に進む線路の上に煙が揺れて流れる。
春霞を行く今日の汽車は足取りもどこか軽やかだった。

機関車アップや編成写真もいいけれど、せっかくの湿原を走る蒸気機関車なのだからそればかりは実に勿体ない。
鉄道とて風景の中を走るもの。
風景の一部を走るからこそ汽車は美しいのだ。
そんな財産ともいえる日本離れした風景を行く姿…、僕はいつまでもいつまでも眺めていた。




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  1. 2018/02/14(水) 14:41:05|
  2. 釧網本線
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蒸機の魔力

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釧網本線 釧路湿原~細岡


この日は北見の友人と釧路入りした。
彼は数年前に一眼レフを購入し、普段は家族や風景、飛行機など撮っているが一度SLを撮りたいという。
しかし、鉄ではない彼には「撮り鉄」の集団には入れなかったらしい。
僕にも覚えがあるが、あの一種独特な雰囲気のある鉄の中に単身で乗り込むのには勇気がいる。
どなたも立派な機材を2台3台と持ち、素人は入ってくるなと言わんばかりの異様な雰囲気は、
蒸機はおろか、鉄道知識ゼロの方々には辛かろう。
もちろんそうでない方も大勢いるが、端から見た場合はそう見えてしまう。
僕自身も何度か嫌な思いに遭遇し、もっと誰でも気軽に楽しめる雰囲気があれば
一般の方にも鉄道がより身近に感じてもらえるようになると思うのだが…。
興味があっても入り込めない…ならばと今回彼を誘ってみたというのが事の真相だった。

釧路湿原駅に蒸機が到着する頃、 それまで周囲に花が咲いていた鉄話は止み、一同が静まり一点に集中する。
発車の汽笛が響く、白い景色に黒鉄の車体が現れる。
まるで甲子園大会同点で迎えた9回裏、満塁からのフルカウントでさぁ勝負の一球!
固唾を呑んで見守る観衆が一気に沸くが如くのシャッター音、その興奮…。
張り詰めた辺りの緊張感と初めて間近で見る蒸気機関車の迫力に、全く鉄道に興味なかった彼でも大いに感動したようだ。

だが、モニターで確認する彼はどうにも不満だったらしくリベンジしたいという。
蒸気機関車に対し興味を持ってもらい、また撮りたいと思うならば僕としては大歓迎だ。

蒸気機関車には魔力がある…と僕は思う。
なにも知識はなくても、他の列車を見ても興味すら持たない人が躍動する蒸機を見て感動する。
物心つく以前から蒸気機関車を見て育ち、蒸気機関車ならではの迫力と郷愁に涙するほど大好きになったあの頃…。
鉄とまでいかなくても、彼にもそんな当時の僕の気持ちが少しだけ芽生えてくれたら嬉しい限りだ。




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  1. 2018/02/08(木) 23:52:41|
  2. 釧網本線
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プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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