笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

5月の日本一

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大井川鐡道 抜里~川根温泉笹間渡    2013年5月撮影


毎年5月になると大井川鐡道が恋しくなる。
正確にいうと大井川、川根地方がといった方が正解かもしれない。
北海道に来る前まで、僕は毎年4月は甲州新府の桃、5月は大井川と行動が決まっていて
特に5月の大井川は抜里の河原で一人野宿するというのが恒例だった。
バイクにテント一式を積んで夕方前には現地に着き、暮れゆく日のもと焚火をしながら飯を炊き、
カジカガエルの鳴き声を聞きながら酒飲んで、川の流れと第一橋梁を渡る列車の音に酔っぱらう…。
別に汽車の写真なども撮らず、どこも移動せず、ただそこで一日過ごすということが最高の贅沢であり楽しみだった。


あれから十数年が経ち、2013年、久しぶりに5月の大井川にやって来た。
あちらでもこちらでも新茶摘みが忙しい。
機械摘みのブーンという音は作業されてる農家さんにとってはうるさいだろうが
でも傍で聞いていると、昼下がりのセスナ機の音に眠気を誘われるのと同じように聞こえてくる。
いつも野宿していた河原の対岸には立派な施設が出来てもう野宿は出来そうにない。
けれども新緑の山々、瑞々しい茶畑の緑は相変わらず目に眩しく、加えて大井川の広い河原と素朴な里は
言葉にならないほど平和で美しかった。

そんな景色の中をC10やC11、C56といった小型の蒸気機関車たちが往く。
この日はC11が程よい4輌の客車を牽いてやって来た。
C11は客車3~4輌ほどの編成がよく似合う。
5月とはいえ陽射しも強く煙も薄いが、いかにも普通な着飾らない姿に本来の汽車の良さ、詩がある。
蒸気機関車はなにも煙だけが全てじゃない。
それよりも、この新緑と新茶の季節美しい大井川の景色を往く汽車の姿にこそ胸を打たれる。
そう思う5月の大井川は今でも僕の中では日本一だ。

先日KATOから発売されたC11。
C56やC12ともども小さなエンドレスを走らせただけで、あの日あの時大井川で過ごした一日のことが蘇ってくるこの頃である。




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  1. 2017/05/11(木) 09:07:06|
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春の川根路



大井川鐡道 青部    2014年4月撮影


昔懐かしい風景がそこここに残る川根地方。
狭い山道を辿ってひっそり佇む青部の集落を訪ねると、満開となったソメイヨシノが迎えてくれた。

春爛漫、のどかな陽射しに眠気を誘われ
もう汽車の撮影なんてどうでもいいや…とさえ思う平和なひと時。

ォォ~… ォ~‥ ~‥

半分夢心地の耳にかすかに、でも確かに、幾重にも重なった汽車の汽笛が届いた。
リズム良く現れたのは洗礼されたスタイルのC11よりも少し野暮ったいC10だった。
桜咲く日本的な風景に彼の姿は良く似合う。
手を携え後に続く旧型客車の乾いた音…

あぁ、なんていいんだろう…としみじみ思う。

風がさわさわと音を立て、鶯の唄う囀りが桜の花びらと一緒になって舞っていた。
またいつの日か、あの暖かく、昭和の匂い漂う川根路を旅してみたい…。




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  1. 2017/04/06(木) 00:39:09|
  2. 大井川鐵道
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旧友と再会した日

初めて大井川鐡道を訪れたのは高校生の頃だったか。
夏に家族旅行で千頭に一泊した時に初めて線路際に立ったように思う。
当時、初めて一眼レフを買うにあたりニコンにするかオリンパスにするか散々迷い、結局ニコンFMを購入し、ドキドキしながら蒸気機関車を待っていた記憶だけは鮮明に覚えている。

現役蒸気が国鉄線上から姿を消したのは1975年だが(追分の9600は除く)、最末期しか知らない僕が最後に見たのは1972年の鉄道100年記念で東海道本線に運転されたC577。
その後1979年に山口線でC571とC581が復活となり、その年の秋には山口に行っているがその時は完全に乗り鉄だった。
勿論久しぶりの煙と汽笛に酔いしれシゴナナの快足ぶりに感激したが、蒸気撮影という名目で線路際に立ったのは大井川が最初であり、この時の高揚感といったら山口のそれとはまた別のものだった。

緑濃き山と茶畑が広がる抜里の里。
背後に控えていた大井川第一橋梁を嫌ったのは、やっぱり有名地故の人の多さというのが理由である。
やがて汽笛が山々に木霊した。
その汽笛に「あれ?おかしいな」と思ったのは木霊のせいだったか…、そう思いながら現れた蒸気機関車はなんと重連だった。
重連なんて現役時代のおぼろげながらのものしか記憶になかったばかりか、ダイヤや重連の情報など全く知る術も持っていなかったからその偶然に全身が震えた。
先頭はタイから里帰りし日本型に復活したばかりのC5644。
初の大井川でお袋の故郷である信州飯山線で何度か見た同形式というのにも何かの縁を感じた。
次位にC11227を従え、この日の主役は少しはにかんでいるようだった。

この時の感動と大井川の河川敷の広さ、昭和時代のような懐かしく長閑な風景に魅せられこの地を何度となく訪れるようになった。
しばらく写真というものから遠ざかっていた時期もバイクで旅をし、新緑の季節は野宿をしに行くのが毎年の恒例となった。
北海道に住みはじめてからも新緑の季節になると大井川を思い出す。
そんな思いから十数年ぶりに訪れた大井川。
神尾、福用、大和田…。
家山、抜里、笹間渡、地名…。 
どこも絵になる美しい風景があり、さてどこにするかと悩んで田野口に腰を下ろすことにした。
勾配に向かうため姿見えずとも駅手前から助走するドラフトが勇ましく、なんともドキドキする場所である。
山も畑も全て緑一色となった田野口の里。
製茶工場からは新茶の香り、人の姿を見なくとも活気を感じる。

駅前の名物の桜も青々と、その向こうから期待していた通りの音が聞こえてきた。
歯切れるドラフト、切り裂くドレン。
汽笛が泣かせるほどに木霊する。
その主役は初めて訪れた時のC5644だった。
あの時とは少し違い、彼はすっかりこの地に馴染んだ自信ありげな表情で
「よ、久しぶり!」
と、小気味よい足取りで目の前を駆け抜けた。



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大井川鐡道 田野口~駿河徳山 2014年6月撮影

OLMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL ED50-200mmF2.8-3.5 SWD




  1. 2016/06/01(水) 00:01:50|
  2. 大井川鐵道
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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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