笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

初夏到来

オホーツク地方の桜が終わり、札幌では初夏を告げる花のライラック祭が開催された。
こちらではライラックはもう少し先だが、それでもここ数日は気温30℃前後の暑さが続き緑が一気に増え、今日などはセミが鳴いていた。

桜の開花が今月の8日辺りだったのに、それから僅か二週間でセミが鳴く。
セミといっても一応はエゾハルゼミで真夏に鳴くセミではないにしろ、北国の季節は駆け足だ。
もう春なんてどこへやら、やっと来たかと思えばもう初夏の様相である。

初夏の森はなんとも心地よい。
北海道らしいカラッとした暑さの中、木陰に爽やかな風が流れる。
新緑の森に謡う鳥の囀りとハルゼミの合唱をそんな風に吹かれながら列車を待つ。

西に傾いた陽が緑を朱く染め、札幌行オホーツク8号がディーゼル音を唸らせ足早に去って行った。
あれほど鳴いていたセミはいつしかピタッと止み、落日の森に今度はツツドリの鳴き声が響いていた。



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石北本線 呼人~女満別

OLYMPUS OM-D E-M1
ZUIKO DIGITAL ED50-200mm F2.8-3.5 SWD




  1. 2016/05/22(日) 02:36:11|
  2. 石北本線
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あの頃のまま

北海道は四季がハッキリしていると地元の人は言う。
美しい風景を存分に見させてくれる土地であることには違いないが、春らしい風景に浸る余韻もそこそこでは素直に「そうですね」とは言い難く、
それを言うなら信州や飛騨地方といった辺りの四季の方がよりハッキリしているように僕は思う。

先月まで雪が降り、緑もほとんどなかったオホーツク地方。
5月に入ると遅れていた季節は一気に進み、いきなり初夏の陽気になる時がしばしばある。
この日もそんな春を通り越した一日となった。

ちょっと立ち寄ってみた場所、そこに山桜がまだ緑も生え揃っていない木々の中で彩りを添えていた。
線路際に立てば線路や枕木が焼けるいい匂いがする。
僕はこの匂いが大好きだ。
列車を待つ間、鳥の囀りを聞き、風に撫でられ、線路の匂いを嗅いで過ごす時間。
そこに列車がなくても線路があるだけで「なんかいいなぁ」と思えてしまうのである。
ふと少年の頃、ちゃぶ台の上にマッチ棒で線路を組み、複雑なポイントも作って遊んでいたことを思い出した。

初夏の陽気に少々困惑気味の列車が陽炎に揺らぎながら姿を見せる。
焼ける線路の匂いとローカル列車。
こんな時の僕は、幾つになってもあの頃の鉄道少年のままである。



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石北本線 女満別~呼人

OLYMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL ED50-200mm F2.8-3.5 SWD




  1. 2016/05/15(日) 23:49:54|
  2. 石北本線
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埋もれゆく記憶

西女満別という駅がある。
鉄道防風林と丘に囲まれた静かな無人駅だ。
ホームは短く、気動車二輌編成で精一杯だろう。
それでも一応女満別空港への最寄り駅である。

たまに列車から降りて来る利用客を見かけるが、いつも同じ列車なのでたぶん同じ方だと思う。
空港の利用客なんざよっぽどの物好きしかおらんだろと思っていたが、
昨年、空港から歩いてきたという若い女性がいれば、先日も空港へ向かう男性客の姿があった。
たまたまよっぽどの物好きに出会ったのか、とにかく一応そんな利用客もいるにはいるらしい。

そんな駅であっても鉄道華やかりしの頃は荷物扱いもあったようだ。
現在では質素な待合所がポツンとあるだけだが、昔の駅舎の横にあったのだろうか、朽ちかけた桜の老木がある。
二股に分かれていた幹の右半分は朽ちて、残る幹も半分しか花を付けていなかった。
辺りを見れば当時の構内に沿うように桜が植えられていたのだろうか、今は手入れする人もなく周囲の木々に埋もれるようにして辛うじて花を付けているといった桜も数本あった。
人が管理しなければこれほど荒れてしまうホンの一例だろう。

当時はどんな想いで桜は咲いていたのだろう。
たまに利用客が来て、たまに蒸気機関車の牽く混合列車に荷物を積み下ろし、空いた時間は駅員が草むしりをし、のんびりした時間の中を桜はそんな光景を見ながら駅を見て来たんじゃないだろうか…。
時は流れ無人化となり、手入れしてくれる人もいなく荒れ果てて、今は利用客一人いるかいないかの駅で時代の生き証人は朽ち果てようとしている。
一体どんな想いで今いるのだろうかと少し感傷的になった。

列車が鉄道林に轍を響かせながらやって来て、そして静かに停車した。
ドアが開いて閉まるだけ。
すぐさま発車して、再び鉄道林に轍を響かせ遠のいていった。
質素な待合所と老桜を照らしていた西日は次第に勢いが衰え、カンっという音と共にホームの照明に灯が燈った。



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石北本線 西女満別駅

OLYMPUS OM-D E-M1
M.ZUIKO DIGITAL ED12-40mm F2.8PRO




  1. 2016/05/14(土) 01:20:28|
  2. 石北本線
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桜と古豪

3月下旬ともなると、関東以西では桜の便りがチラホラ届く季節となる。
その頃の北海道ではまだ雪の中で桜の気配なんてこれっぽっちもなく、テレビを見ては羨ましく思えるものだ。
雪融けが進むとはいえ、おかげで道路は泥に淀んだ水たまりだらけで車を洗車するなど全くの無駄と思えるほど酷い有様となる。
おまけにこの季節は風の強い日が多く、来そうでなかなか来ない春にじれったく、僕にとって一番嫌いな季節でもある。

今年のゴールデンウイーク前半、道内の空模様は大荒れで鯉のぼりが吹雪の中を寒そうに泳いでいた。
5月中旬でも雪となる土地柄、今さら驚くことはないとはいえ、春を待ち望んでいた身にはいささかウンザリといったところか。
春と冬が交互にやって来てはを繰り返し、東京の開花日から約1ヶ月半という時間を経てようやくオホーツク地方に桜が咲いた。

桜とローカル線といえば個人的に「駅」…を思わせる。
少年時代の頃はまだ小駅とはいえ駅員が配置され、町や村の玄関口である駅舎の周りやホームには手入れされた花壇や桜の木があり人々を出迎えていた、そんな印象からだ。
そんな駅と桜とローカル列車の光景を見たくて久しぶりに出かけてみたもののオホーツク地方にはソメイヨシノはなく、神社やお寺、学校や公園などにはエゾヤマザクラという桜が咲いていても、こと駅に関してはどうにも記憶がない。
桜以外にも道内の、路線が少ない地域では内地ほど身近ではないのか、比較的鉄道を見る目はどうも少し違うように感じているのだが、少なくともオホーツク管内で満開の桜が駅やホームを彩り人々を迎えるといった光景は見た記憶がない。

北見から網走方面へと移動する。
途中区間にポッツラポッツラ桜の木はあるものの、やはり駅舎を飾るような桜はなく一駅また一駅と進んでふと思い出した。
網走より一つ北見寄りの呼人駅。
駅舎を飾る桜はないが、ここには構内の外れに神社がある。
神社には間違いなく桜があるはずと訪れてみれば、ちょうど満開のエゾヤマザクラが迎えてくれた。
まるで京の都の品のあるような淡いピンクの花が可憐に咲くソメイヨシノとは違い、濃い目の色のエゾヤマザクラは芽吹いたばかりの赤い若葉と共に咲き、可憐さというよりはヤマザクラというだけあってどこか逞しさがあるように感じる。

つい先日まで雪があった風景は、桜の開花を前後に一気に芽吹き色付いた風景へと変わる。
あと2~3年で新型車輛に置き換えられるといわれる旧国鉄時代の古豪。
幾年も四季を走り、人を乗せ、町を、生活を繋いできた彼にはその歴史の重さと尊さがある。
決して最新型車輛には出せない年輪がある。
やはり桜には、そんな彼の姿がよく似合うと心底思えた春の一日だった。



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石北本線 呼人

OLYMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5Ⅱ




  1. 2016/05/12(木) 06:50:44|
  2. 石北本線
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プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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