笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

君の行く路は

街を出て田畑を抜けて汽車は往く。
花に送られ、森に送られ
荒川を渡れば多くの人も手を振る秩父の汽車。

坂を上っては下りを繰り返し、曲がりくねった路に足を軋ませて
驕ることなく走って来た。
黙々と、ただ黙々と。

ダン・ダダダ・ダ・ダダンダダン・・・
複雑なジョイント音が地響きを立てて目前を通過する。
やかましいほどの蝉時雨も陽炎に揺れる焼けた路を今日も行く。
決して楽な道程ではなかったはずのこの路は、この先も決して楽ではないだろう。
それでも、カマを燃えたぎらせ往く様をいつまでも見ていたい。
終着三峰の停車場はあと少し。

がんばれ!

思わず胸の中で叫んで見送った。



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秩父鉄道 武州日野駅

OLYMPUS OM-D E-M1
ZUIKO DIGITAL ED50-200mm SWD F2.8-3.5




テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2016/07/30(土) 17:12:52|
  2. 秩父鉄道
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祠と汽車と

蒸し暑い曇り空。
湿気が体に纏わりつくような関東独特の湿気。
よく手入れされた田圃の畔に目をやれば、オタマジャクシから蛙になったばかりの小さな蛙が無数に飛び跳ねていた。
こんなに沢山いても、鳥や蛇に食われて生き残るのは僅かなんだろうなぁと思いながら水辺を覗きこむ。
そんなことをして汽車を待つ時間もまた楽しいものだ。

程なくしてドラフトが聞こえてくる。
全く期待していなかった煙が程よく流れ、ロッドがカランカランといいリズムを刻む。
平坦線を行く汽車はとても軽やかだ。
勾配区間を煙を吹き上げ、割れんばかりのドラフトで力一杯奮闘する様は蒸気機関車の象徴ともいえる姿だと思うが
鼻歌交じりに行く姿もなんとも魅力的だ。

豊作を祈る祠なのだろうか、纏う暑さを振りほどく青々とした涼やかな稲揺れる路。
そんな如何にも日本的な風景の中をシゴハチが、らしい軽快な足取りで駆け抜ける。

仄かに香る石炭の匂い…

ゆっくりと胸いっぱいに吸いながら見送った。
汽車の姿が見えなくなるまで。



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秩父鉄道 大麻生~明戸

OLYMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5Ⅱ




  1. 2016/07/26(火) 00:47:22|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:0

昭和への回帰

C58という形式の蒸気機関車がある。
僕はこの機関車が大好きである。
現役時代は地味で特徴のないカマとして人気はあまりなかったようだが、なぜか昔からとても好きな機関車だった。

かつて、実家のほど近くにあった操車場にはD51がたくさんいて、最後に乗車した蒸気牽引列車もD51の牽く旅客列車だった。
D51には特に慣れ親しみ、今でも彼らの見せてくれた躍動は忘れることは出来ない。
C58はそのD51を一回り小型にしたようなありふれた形と、さらに田舎を走るローカル線に似つかわしい姿にどこか心惹かれたのかもしれない。
C62やC57のような迫力や気品があり常に注目されていた花形機関車よりも、人気のない機関車だからこそ見せてくれる素朴さが鉄道蒸気少年の胸を震わせてくれた。

秩父鉄道を走る電車は元東急のステンレス車輛が多くなったが、今でも多くの貨物列車が走り、駅構内の有効長の長さと数多く残る木造駅舎に昭和の鉄道風景を見ることが出来る。
そんな駅のひとつである波久礼駅。
蒸気機関車に会いたくて、お盆の帰省に合わせて訪れた。
忙しい最中、宮城から蒸気動画を制作している友人も訪ねてくれ、その彼と冬の湿原を走る蒸気機関車以来久しぶりの煙を楽しんだ。
ローカル線を走るキハの姿も捨てがたいが、やはり僕にとっては蒸気機関車が一番だ。

ドラフトを奏で地響きを立てて通過する蒸気機関車と、信号を指差称呼、歓呼応答する機関車乗務員。
そして味わい深い木造駅…。
そこには現代人が忘れかけてしまった懐かしいあの頃の時間が流れていた。



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秩父鉄道 波久礼駅

OLYMPUS OM-D E-M1
M.ZUIKO DIGITAL ED12-40mm F2.8 PRO




  1. 2016/07/23(土) 01:57:44|
  2. 秩父鉄道
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煙たなびかせ

我が家付近を走る石北本線。
2011年6月後半、遂に念願の蒸気機関車が運行された。
冬の湿原を走る姿とはまた違い、煙たなびかせ緑に包まれた大地を走る蒸気機関車。
何よりも自宅から程近い路線に汽笛が響いたことが嬉しかった。
沿線は大変な盛り上がりで、普段は交通量の少ない道も全く車が途切れることはなく、改めて蒸気機関車の人気振りを知ることとなった。
それから3年間、初夏のオホーツク地方にたった数日間ではあったものの煙が復活したが結局大したものは撮れず、
今度こそという思いも空しいままにJR北海道の度重なる不祥事による安全対策と新幹線の投資にと道内各地に運行されていた蒸気列車は廃止され、その願いは叶うことはなくなってしまった。

今年のダイヤ改正では上白滝をはじめとする駅廃止や大幅減便、今度は留萌本線が一部廃止となり
石北本線の特急オホーツクも廃止や札幌直通の減便などが騒がれている。
経営厳しいJR北海道には手間や経費が莫大に掛かる蒸気機関車を維持する余力はないだろうが、
また何とかして、いつか再びオホーツクの大地に汽笛を轟かせて欲しいものだ。



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石北本線 端野~緋牛内  2013年6月撮影

OLYMPUS E-410
ZUIKO DIGITAL ED50-200mm F2.8-3.5 SWD




  1. 2016/07/13(水) 01:08:31|
  2. 石北本線
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落日の行路

夏の北海道らしい天気となった今日、見上げれば抜けるような青空が広がっていた。
きっと夕焼けはすごくきれいだろうなと思われたが、夕方近くになって雲が出てきてしまった。
それでもちょっと行ってみようと自宅からほど近い場所に行ってみる。
この時季の夕方、よく晴れていれば特急オホーツク8号が通過する前後にはコントラストの強い澄んだ光が景色を染めるのだが
どうしてそこだけに?というところに太陽は雲に隠れ、オホーツクは締まりのない風景の中を札幌目指して眼下を駆け抜けて行った。

普段特急狙いはしないが、たまに狙えばこの有り様だ。
誰しもそんな経験はあるだろうが、巡り合わせの悪い男らしく今さら文句を言っても始まらない。
それよりも、その時々に応じて臨機応変に撮影出来るセンスと腕が欲しいものだ。

今日はやめておこうか…

と、そんな思いが頭を駆け巡ったが、山に陽が沈む直前にやって来る上り普通列車まで粘ってみることにした。
空を見ればどうもパッとしない。
そろそろ列車が来る頃だと耳を澄ませば鉄路を刻む音が丘に反響する。
やっぱりだめかと諦めかけたその瞬間、雲の切れ目から光が差し込み、みるみる内にコントラストを強めたそこにちょうど列車がやって来た。
鮮やかに染まった落日の行路を駆けて往く。
なんてきれいなんだろう…。
列車が軽快にバンクを切ってカーブの向こうに消えていっても、しばらくその光景に見惚れていた。

たまには・・こんなことがあってもいいよね…。



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石北本線 緋牛内~端野

OLYMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL ED50-200mm SWD F2.8-3.5 + Teleconverter EC-14




  1. 2016/07/08(金) 23:41:00|
  2. 石北本線
  3. | コメント:0

76%

その昔、バイクで北海道を旅する際、限られた休みを有効に使いたくて羽田から千歳まで飛行機で往復したことがある。
内陸を走りフェリーで行くより圧倒的に早く時間を有効的に使えたが、なんて面白くない旅なんだろうと後悔した。
東京から北海道は遠い。
遠い所は遠いのだ。時間が掛かって当たり前なのだ。
その行程が長ければ長いほど道中いろんなことに出会い、旅が楽しくなるのだ。

北海道新幹線が札幌まで延伸した場合、トンネルの割合は76%なのだという。
ようやく北海道に上陸したと、その車窓を眺めようと思ってもほとんどがトンネルではそれどころではないようだ。

これでは地下鉄新幹線ではないか。
ほんと、ただ早く着くためのものなんだなぁ、車窓すら見れない旅なんて旅と言えるのだろうかと疑問に思ってしまった。
旅の仕方なんて人それぞれとはいえ、せっかく訪れた土地の景色も空気も感じずに、ただスピードと時間の旅はなんとも味気ないと思うのは古いアナログ世代の人間だからであろうか。

新幹線で時間を有効に使う…確かに。
とはいえ…なのだ。
僕の中ではどうしても納得出来ないものがそこにある。
地中を走りその土地の空気感も感じないものはいかがなものか。
やはり僕には在来線の方が性に合ってるようだ。
出来ることならかつての長距離鈍行や急行列車での旅が望みだが、全滅してしまった今日では叶うことはない。
それでも、流れる車窓を見て往く在来線が僕にはなんとも魅力的なのである。



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石北本線 端野~緋牛内




  1. 2016/07/07(木) 01:53:52|
  2. 石北本線
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茜に染まる頃

7月に入り、オホーツク地方にもようやく短い夏がやって来た。
強い日差しに大地は焼け、顔から汗がしたたり落ちる。

西の空が茜に染まるとお疲れさんと涼しい風が吹いて来て、遠く轍を刻む音がやって来た。
草むらに鳴く夏虫と田んぼに謡う蛙の声を聞きながら待つ線路端。
暑かった一日が終わる。
山に沈む夕日と競うように、列車は街へと駆けて行った。



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石北本線 緋牛内~端野




  1. 2016/07/03(日) 21:40:02|
  2. 石北本線
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プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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