笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

オレたちの機関車

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日本全国にどれだけの蒸気機関車が保存されているのだろう。
恐らく相当数の機関車が保存されているのだろうが、手入れの行き届いてない機関車が多い中でここのD51は本当に幸せ者だと思う。

先の記事にも載せた安平町鉄道資料館。
昭和50年12月24日限りで引退したD51は、本来ならば当日に本線牽引最終列車を牽いたD51241が保存される予定だった。
だが、保存のために保管されていた機関区火災により241号機のみならず最終日まで活躍した仲間も被災し、急遽320号機に決定した。
それでも鉄道の町追分の機関車へ対する愛情は深く、また被災した機関車たちへの鎮魂の意味もあるのだろうその想いは320号機だけにとどまらず、
駅前に残る最後のデコイチ4輌の内の一輌465号機の動輪や、動輪をモチーフにした橋の欄干などのように随所に見られる。

普段保管している建屋内には、蒸気機関車を愛する多くの方たちから寄贈された部品や工具も揃えられ、時には部品交換も行うそうだ。
定期的に屋外に出して足回りに油を回し、シリンダーの清掃までもし、ここまで手入れされている機関車は梅小路などのJRが管理する施設を除けば僕の浅はかな知識では他に知らない。

かつてJRで蒸気機関車を復活させる際、部品を使いたいと打診もあったようだが断ったのだという。
長年手塩にかけて保存してきた自負もあるのだろう。
或いはC623号機の運行廃止に見る態度に、客寄せパンダ的に使われるのは忍びなかったのかもしれない。
この日も丁寧に各所を磨き上げる保存会の方たち。
ギラリと油光りする機関車を見る目は、このD51はオラが町、オレたちの機関車だと我が子を慈しむような眼差しだった。
いつまでも末永く、またその魂も受け繋いでいって欲しいと願わずにはいられなかった。



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安平町鉄道資料館     2014年9月撮影




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  1. 2016/08/25(木) 03:20:34|
  2. 廃線・保存機
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夢見る少年のように

「なんといってもデコイチだったよ」

キャブ内でそう答えてくれたのは元国鉄の機関士さんだった。
室蘭本線追分駅からほど近くにある安平町鉄道資料館。
ここに保存されているD51320号機はとにかく素晴らしい保存状態だった。
機関士や整備士などの元国鉄OBによって定期的に整備され、普段は建屋内にある当機は月二回ほど小型DLによって屋外に出される。
よくありがちな錆止めの塗装もなく、ロッドは油で磨かれ、各部への注油もされており
もはや静態保存機というより、現役機の火を入れていない状態といっても差し支えないほどだ。
いつでも火を入れて動かせられるよ、と言うのも普段の整備の自信の表れなのだろう。



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安平町鉄道資料館     2014年9月撮影



先に答えてくれた元機関士さんは、キューロク、C58、C57、D51などを運転してきたという。

「入れ替えだったらキューロクが良かったね。踏ん張りが利くんだよ。
シゴナナはスピードを出した時の乗り心地は良かったな。
だけどデコイチも結構出たんだよ。客車を牽く時はシゴナナとそう大して変わらないくらいの速度で走ったし
それになんといっても貨物を牽いた時のデコイチは頼もしかった。」

「貨物を引っ張ってる時にね、軸焼けしたカマを騙し騙し運転していたんだ。
トンネルに入ったら火花が飛んでるのが見えるんだよ。なんとか運転したけど、あれはきれいだったなぁ」

当時を懐かしむように話してくれた機関士さん。その顔は職務を全うした誇りに満ちていた。
また運転したいですか?の問いに、そりゃあしたいさと加減弁を握りながら笑っていた。
将来的には圧縮空気で動かす計画があるのだという。
ならばその時再びハンドルを握るんですね、と言うと

「もちろんさ」

と、夢見る少年のような笑顔で答えてくれた。




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  1. 2016/08/24(水) 00:07:14|
  2. 廃線・保存機
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進む季節

このところ、台風に連続して襲われている北海道。
なんでも一日で8月の平均以上の雨が降ってしまったらしい。
河川は氾濫し、なおも新たな台風が接近中とのこと。
収穫も忙しいこの時期に被害に遭われた方々にはお見舞い申し上げると共に、これ以上の被害がないことをお祈り致します。



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石北本線 緋牛内~端野     2015年9月撮影


昔から季節の変わり目は一雨ごとに進むと言われる。
今年は8月初旬から既に秋の気配が漂っていただけに、この雨が過ぎれば一気に進んでいるのだろう。
お盆も過ぎ、高校野球も終わり、気分的にも秋色に染まりつつある。




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  1. 2016/08/22(月) 02:32:20|
  2. 石北本線
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夢を乗せて

静態保存機というと、その注目度は動態保存機よりも少ない。
やっぱり蒸気機関車は野を越え山を越え、表情豊かに走る姿がなんといっても素晴らしい。
けれども、時代を駆け抜け今は静かに余生を送る彼らを前にして瞼を閉じると
かつて鉄路に汽笛を響かせ、人を物資を黙々と運び続けてきた彼らの息吹きが感じられ、当時のことを思い馳せずにはいられない。

現在、各地で保存されている静態保存の機関車たち。
梅小路や大宮の鉄道博物館をはじめ、今にも動き出しそうなほど手入れされた機関車もいるが
中には誰にも見向きされずに荒廃し解体された者もいる。
そんな彼らを救うべく、各地の有志らの手によって今一度きれいに修復され再びその勇姿を披露している仲間もいれば
圧縮空気で動けるようになった仲間もいる。

かつて中湧別から網走にかけてサロマ湖やオホーツク沿岸を走る湧網線があった。
はじめてバイクで北海道を旅した時はまだ健在であり、二度目の渡道の際に前回渡った踏切が無くなっているのに衝撃を受けたものだ。
車窓の良さで知られ、国鉄線上から全廃された蒸気機関車が復活するにあたり有力候補路線として名を上げたが
赤字を抱える国鉄としては新幹線での集客を期待し、現在の山口線に決定した。
当時は誠に残念な思いがしたが、今となっては全くやる気のないJR北海道ではとっくに廃止となっていただろうし、これで良かったのだと思う。
それにこの地にC57やC58では沿線風景に似合わない。
なんでも蒸気機関車が走ればそれでいいのではなく、ここはやっぱりリベットも厳めしい大正の名機、9600がお似合いだ。
スピードは全く苦手な機関車ではあるが、ここは逞しい太いボイラーのいかにも北辺の厳しい大地を一歩ずつ、そして確実に進むキューロクこそ相応しい。

そのキューロクが廃線跡の卯原内駅に旧型客車と共に保存されている。
夜に訪れると彼は星空の下で静かに佇んでいた。
屋根もなく塩害が心配されるがそれほど保存状態も悪くなく、在りし日のことを思い出しているようだ。
時折り、すぐ横を走る国道の車のヘッドライトに照らされ浮かび上がる巨体。
彼の横でしゃがみ込み、問いかけるようにじっと姿を見ていると
圧力を上げ発車を今かと待つキューロクが、やがて夜空へ汽笛高らかに轟かせ銀河の旅路に発って行ったような、そんな彼の魂を見た気がした。



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旧国鉄湧網線 卯原内駅跡




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  1. 2016/08/16(火) 19:04:59|
  2. 廃線・保存機
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立葵

「おばさん、あのヒョロっとした花はなに?」
「あれかい?へぇ、おらもよく知らね。この辺じゃ皆コケコッコと呼んでらぁさ」

夏になると必ず訪れていた信州の親戚宅。
立葵はその地方に行くとよく目についた花で、名も知らぬ時、叔母にそう尋ねたことがある。
梅雨に入る頃、茎の下側から花が付き、次第に上に花が咲くと梅雨が明ける。
地域によっては8月も見られるが、やはり初夏の花、とりわけ暑さに似合う花のイメージがあり、僕にとっては懐かしきあの頃の、ふるさとを思わせてくれる花でもある。

先日、自宅近くのコンビニ帰りに何気に緋牛内に立ち寄ると、秋風に揺れる秋桜の隣に立葵が咲いていた。
もう終わりかけであったが、初夏のイメージの花が初秋の風に揺れている様に、何だかとても不思議な思いがした。
北海道では立葵の花が頭部に咲くと夏が終わるのかもしれない。
去り往こうとする夏の背中に、立葵は遠き日々への懐かしさを僕に思い起こさせてくれていた。



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石北本線 緋牛内駅




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  1. 2016/08/14(日) 12:27:10|
  2. 石北本線
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牧草ロールの丘で

帰省してから約一ヶ月。
久しぶりに再会した秩父の汽車と、あの纏わりつくような湿気と猛暑でさえ女々しいほどに後を引き
あまり気持ちの乗らない日々が続いた。
夏本番を迎えた北海道、その暑さは関東生まれの身体には快適そのもの・・ではある。
それでも夏という季節を考えた時、やはり物足りなさも感じてしまうのも事実だ。

周囲は

「暑さはごめんだ」

という声が圧倒的に多く、確かに連日連夜、猛暑酷暑・熱帯夜では堪えるが
それでも厳しい暑さがあってこそ、夏の去り際に込み上げる切なさがより鮮明になるものだと思うし
何気ない風景にもたまらない郷愁感が生まれるのだと僕は思う。

北国の夏は短い。
8月も中旬に入り夏らしい陽気が少し続いたかと思えば、空を見上げれば早くも秋の風が吹き始めていた。
四季のハッキリした内地から比べればあまりにも短すぎるほどである。
夏の顔と秋の顔が交互に入り混じる丘の畑では大型のコンバインによって麦刈りが忙しい。
刈り取られた麦畑に、ひとつの重さが約350㎏という牧草ロールが無造作に点在する丘の袂を
残り僅かな夏を少しでも多く駆けようと単行の気動車がやって来た。



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石北本線 端野~緋牛内




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  1. 2016/08/13(土) 21:20:49|
  2. 石北本線
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またね

今日の務めを終え、塒のある車両基地へと帰って来たC58。
気温35℃の猛暑日となった秩父路は機関車乗務員にとっても厳しい行路だったことだろう。
陽が傾き始めたとはいえ、まだまだじっとしているだけでも汗が流れベタつく暑さが続いていたが
一日の運行を無事に終えた彼の表情はどこかホッとしているように見えた。

昭和63年からこの地を走り続けて29年。
今や地元ではすっかり普段の光景となって見物する人もなく、広い構内に一人佇む飾り気のない姿は自然であった。

一休み終えたのだろうか機関士さんが彼に近付く。
これから転車台で向きを変え、庫に戻って整備を受け次の運行に備える。

「またね」

揺れる陽炎の中に小さくなっていった彼にありがとうの意を込めて、僕はしばしの別れを告げた。



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秩父鉄道 広瀬川原車両基地

OLYMPUS OM-D E-M1
ZUIKO DIGITAL ED50-200mm SWD F2.8-3.5 + Teleconverter EC-14




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  1. 2016/08/11(木) 22:18:09|
  2. 秩父鉄道
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笛の音響けば

秩父鉄道の汽車は「都心から一番近い蒸気機関車」であるが
波久礼辺りから山に囲まれはじめ、秩父・影森を過ぎればいよいよ山も迫る山岳路線になる。
ただ、その割には意外と民家が多く、煙も多いとは言えない。
煙だけを求めた撮影行ならばなかなか厳しい路線ではないだろうか。
それでも古い民家や、また新しい家でもこの地方の風景に違和感のないものも多く、それらから漂う生活感が僕は好きである。

一旦山に入れば細くきつい勾配と曲がりくねった道が続く。
谷は深く、岩は苔生し、湿気のあるひんやりとした空気が身を包む。
若い頃、汽車なんぞそっちのけで何度バイクで山に入り込んだだろう。
山を下り、再び里に出てくる。
と、そこには里で暮らす人々の暮らしの匂いがして、その瞬間は、山でバイクで走るという行為とは別の楽しみのひとつだったように思う。

人は、都会のような街では人ゴミであっても、適度な里の集落ではこれほどいい匂いがするものはない。
そんないい匂いのする里の秩父路に汽車が走れば、たちまち郷愁という名の旅路に連れて行ってくれる。
谷を越え、緑に包まれた山里。
そこに今日もポーッと汽車の笛の音が木霊する。
音色は途端に身体中の細胞ひとつひとつに染みわたり、ブルブルと細かく震え出す。
その瞬間と汽車が見せてくれる光景が大好きで、未だに冷静でいられたことがない。
汽車が来て過ぎ去るまで、短いようで長いような、でもやっぱり短いような夢の中の旅路。
そこから下車した後、僕はしばらくその場から動くことを忘れていた。



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秩父鉄道 武州中川~浦山口

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M.ZUIKO DIGITAL ED12-40mm F2.8PRO




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  1. 2016/08/02(火) 01:44:36|
  2. 秩父鉄道
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プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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