笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

蒼い景色に



石北本線 緋牛内~端野


日没からの、空の主役が変わる狭間に見せる色。
その独特な蒼い景色に点々と町の灯りが燈り出す。
今日一日が終わりだとホッとして、旅先であれば時に家が恋しくて
一人佇み、景色をボーっと眺めるたびになんとも言えない気持ちにさせられる。

風に乗って列車の音が微かに聞こえてやって来る。
どこだと蒼い景色に目を凝らせば、山裾に走る列車は既に夜汽車の風情が零れていた。
仕事で札幌に向かう人あれば帰る人もいるだろう。
季節柄、故郷を離れて都会に旅立つ人もいるだろう。
蒼い景色に浮かんだ町の灯は、旅行く人にどんな想いで眼に映るのか。


線路は遥か故郷に続く道。
大切な人の元へと走る道。

様々な想いを乗せた列車は白い光となって街へと向かう。
その姿に、僕も遠く離れた故郷への想いを乗せた。




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  1. 2017/03/27(月) 18:24:54|
  2. 石北本線
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秩父鉄道 浦山口~影森    2013年12月撮影


この年、秩父鉄道において1988年の蒸気機関車運行を開始して以来初となる冬季運転が実現した。
クリスマス時期と正月三が日の限られた日程だったが、ちょうど東京勤務だったこともあり、
またとないクリスマスプレゼントとお年玉になった。

わがままなファン心理からすれば、なぜもっと早い内からそれをやってくれなかったかと愚痴っても
顔はニヤけ心はワクワクしていた。

終点三峰口を折り返す上り列車の見せ場は影森登りと称される区間と思う。
急カーブと勾配が続く上り列車最大の難所だけに人も多く、初の冬季運転とあれば混雑ぶりも予想され
あまりに人が多い場所は苦手な僕は毎度のことのようにそこに立つことをためらった。

そこで、よく訪れていた少し三峰口寄りの陸橋に
「いつもの場所っていうのも変化ないよなぁ」
と思いながら立ち寄ると、僕の知らなかった風景がそこにあり、なにか呼び止められたような気がした。

冬の低く柔らかい斜光線。
その光に照らされた線路のある風景を見ていると、走る車の音でさえのどかな心地よいものに聞こえてくる。

微睡むような景色の中、木立の向こうに浦山口駅の手前からピッチを上げた汽車がやって来た。
山影に一旦消えた息遣い。
カーブを飛び出し再びその音が轟くと、眼下に見事なまでの白煙と冬の光の共演が広がった。
迫力よりもうっとりするような光景に見惚れながら振り返り、
裾から沸き立つ霧の如く舞い上がった残り香を、思い切り深く吸い込んだ。




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  1. 2017/03/23(木) 00:11:34|
  2. 秩父鉄道
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若草香る秩父路に

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秩父鉄道 和銅黒谷~武州原谷(貨)    2013年4月撮影


春である。
蒸気煙中毒者にとってシーズン到来、煙春である。
18日から秩父鉄道や肥薩線、19日から山口線でと各地で2017年の蒸気運行が始まった。

今年は冬の湿原号牽引機のC11が思わぬことで運行中止となり、全くの不完全燃焼で終わってしまった。
欲求不満のまま各地のシーズン到来に、羨ましくて身体が震える思いというのが正直な気持ちだ。


数年前、仕事の都合で東京にいた際に、職場があった浦和から夜勤明けのまま秩父鉄道へと向かったりしたものだった。
今も大して変わり映えしないが、大好きな蒸気機関車をただ闇雲にシャッターを切るだけで幸せな気分だった。

若草が香る少し汗ばむくらいの線路端。
撮影場所を探してウロウロしていると、ご近所さんからの帰りだといういかにも田舎のおばちゃんといった体の方に声を掛けられた。
秩父は黒谷で生まれ育ち、川で遊んだこと、時代と共に移り変わる沿線のこと、子供や孫たちのこと…
様々な話に時間も経つのを忘れて聞いていた。

あら、邪魔してごめんなさい。SLが来ちゃうわね。

そう言って立ち去ろうとされた時、何時に来るのかと尋ねられ答えると
私も久しぶりに見ていこうかしらと結局撮影場所はそこになってしまった。

汽笛がポーっといい感じで聞こえ、もうそれだけで満足感が湧いてくる。
ドレンを切って和銅黒谷の構内を抜け、勾配への助走とはいえ秩父にしては珍しく煙を吐いてやって来る。

わぁ、すごいすごい!

まるで子供に返ったかのようなおばちゃんの声。
おっさんとおばちゃん二人に手を振られ、少しニヤッとしたかのようなC58がポッと応えてくれた。
幾つになっても汽車が来て、機関士さんや乗客と笑顔で手を振り合うことはどこか嬉しい気持ちにさせられる。

おばちゃんは大満足だったらしく、また汽車が来たら見送ってあげようと満面の笑みだった。
せっかく写真撮りに来たのにほんとにごめんなさいねと謝っておられたが
僕には春のように、とてもほのぼのと和ませて頂いた時間として今も心に残っている。




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  1. 2017/03/20(月) 13:29:12|
  2. 秩父鉄道
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宵の駅にて

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釧網本線 緑駅


紅の空に町の灯りが燈り、次第に空のグラデーションが色濃くなる。
人気ない駅のどこか寂しさ覚えるローカル線の風景。
じっと空の移ろいを見つめていると、人里の匂いにどこか安堵したような表情の光跡がやって来た。

今の時期、列車は黄昏の湿原を抜け、牧草地の広がる弟子屈界隈で日没を迎えたはずだ。
陽が落ちた山影は木々のディテールを飲み込み、日本最大のカルデラの湖は深まる闇を湖面に映す。
摩周湖もまた冥界への入口とも思わせているほど不気味に静まり返っていたに違いない。

薄暗い山道を照らすヘッドライトに心細さを打ち消し、
釧路と北見の国境を越えた列車や乗客の目に間もなく映った麓の町の灯火は、どんなに心強かったことだろう。
ホッと肩を撫で下ろし一息入れたのも束の間、列車は終着網走へと目指し、夜が忍び寄る空に向かって走り出す。

カタン・・カタン・・と旅情を誘う赤い尾灯が遠ざかり
再び静寂を取り戻した駅には、いつまでもいつまでも彼の足取りが聞こえていた。




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  1. 2017/03/18(土) 15:32:53|
  2. 釧網本線
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光の中で



釧網本線 札弦~緑


3月ともなると大分寒さも緩んでくる。
夜はまだまだ冷え込み、ドカ雪が降る季節でもあるため油断は出来ないが、最近の日中の陽射しは春そのものだ。

結晶のまま積もった雪はザラメ状の姿に変え、畑では融雪材が撒かれ苗を植える下準備が進んでいる。
そんな畑の脇で耳を澄ますと雪融けの音が聞こえてくる。
それに交じって早くも飛び交う小さな虫たちに、夜はどこで寒さを凌ぎ生きているのだろうと不思議に思いつつ、その逞しい生命力にも驚かされる。
雪原を見渡せばこれほど厳しい環境の中にもいくつも生きるための痕跡が見られた。

西に傾いた陽射しが雪原を染め、流氷物語号としての任を終えたキハが行く。
北海道の鉄路存続が取り沙汰せれる昨今、雪原に残る動物たちの足跡のように
彼の残す足跡も高齢者が多い土地にとっては重要だ。
乗客は少ないかもしれないが、その役割は地方であっても都会のそれと何ら変わらない。

春夏秋冬、雨の日も風の日も、そして今日も明日も、様々な人の暮らしを乗せ
銀色に光る痕跡を鉄路に残して走り続けて行く姿が見れることを、春の光の中で僕は願って止まなかった。




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  1. 2017/03/14(火) 00:49:58|
  2. 釧網本線
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春よ、来い

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釧網本線 知床斜里~止別


北国に住んでいると春というのはとても待ち遠しいものだ。
冬は冬で純粋なまでの雪の白さに、まるで疲れて汚れてしまった心まで洗われるような気持ちになるが
暖かい陽射しに大地は一気に芽吹き、生命溢るる春の訪れは格別なものだ。
東京に住んでいる頃はそこまでの待ち遠しさはなく、やはり長く厳しい冬があってのものなんだろう。

まだ北海道をバイクで旅をしていた頃、どこかの土産屋に入った折り沖縄出身という店主は
春を迎える瞬間が一番いいと言っていたことを思い出す。
当時はそんなもんかと思っていたが、実際こうして暮らしてみると「あぁ、なるほどな」と思ったものである。

立春が過ぎてしばらくは寒さも厳しかったが明らかに陽射しは柔らかさを増し
先月末は春のような陽気に包まれた。
夜ともなればまだまだ冷え込むが、寒さと暖かさを繰り返し季節は春へと進んでいく。

眩い陽射しに白い大地は景色を霞ませ、
原野を突っ切る線路の向こうに見えたライトは今日も春を運んでやって来た。
ゆらゆらと陽炎揺れる直線路、厳しかった冬ももうすぐ終わる。


春よ来い、はやく来い。




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  1. 2017/03/07(火) 17:11:15|
  2. 釧網本線
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帰っておいで



釧網本線 止別~知床斜里


1月28日から先月末まで運行された流氷物語号。
昨年の流氷ノロッコと違い話題性もイベント性も少なかったかもしれないが、
鉄道存続自体危ぶまれている状況下で運行されたJR、自治体やボランティアの方々の努力には頭の下がる思いがした。

正直なところラッピング車輌はそのケバケバしさから好きではない。
けれども流氷物語は、キハ54にオホーツクをイメージした好ましくきれいなカラーリングだったと思う。
なんというか、今あるものの中で精一杯のことをした手作り感というか
どこか愛しさすら感じるものだった。

様々な関係者の努力の賜物でもある列車。
見に行こう、乗りに行こうと思いつつも中々折り合いがつかず、
あれよあれよという間に遂に運行最終日となってしまった。
列車名に合わせるつもりだった流氷も岸から離れ、せめてもの慰めは晴れ渡った空だった。

知床斜里を始発とする流氷物語号。
ならば最終列車はその知床斜里に向かう後ろ姿がいい。
ただ残念なことに、去り往く列車は二輛編成のうち網走方車輌が普通のキハ40だった。
それでも…

また来年、帰っておいで。

そんなことを願いながら、僕は知床半島の付け根に位置する町に帰っていく流氷物語を
春のような日差しに微笑む海別の山と共に姿見えなくなるまで見送った。



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  1. 2017/03/03(金) 13:36:35|
  2. 釧網本線
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u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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