笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

夏至の頃

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石北本線 緋牛内~端野


夏至の頃になると北海道の昼は本当に長い。
今年の北見地方の夏至は日の出が3時41分、日の入りが19時11分とのことだったが
この頃の空は20時を回っても西の空はまだ薄ら明るく、街灯がひとつもなく闇夜となる自宅周辺では周囲の景色もまだ見えるほどだ。
3時頃には空は白んでくるので、空が真っ暗になっている夜の時間は6時間ほどしかなく
白夜というほど大袈裟なものではないにしろ、まごまごしているともう朝かといった感覚になる。

日が延びたといっても実際は見る場所によって太陽は山の陰に隠れてしまい、
緋牛内18時28分発の4674Dが西日を浴びて常呂川橋梁を通過するのは夏至の前後の数日に限られる。
かねてから陽が隠れる直前の景色を走る列車をと考えていたものの、勤務の都合や天気の具合、
はたまたダイヤ改正によって列車の時刻が変われば自宅周辺と限定した場合、本数の少ないローカル線で巡りあうことは難しくなる。
夏至より数日前、昨日より空気は淀んでいるけれど今年はもうこんな日は来ないかもしれない…
と土手に行ってみることにした。

時計の針を見れば緋牛内を発車した頃だ。
そろそろかな…と身構え、見れば太陽は既に山の稜線に掛かっている。
やがて橋梁に掛かる手前の踏切が鳴り、どうか間に合ってと祈るような気持ちでいるとスポットライトを浴びた名優のように列車は現れ、
真っ赤に焼けた景色の中を去っていく。
その後ろ姿を見送った直後、陽は待っていてくれたかのように山の陰にスーッと落ちていき、まるでドラマか映画の終わりを見ているようシーンだった。




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  1. 2017/06/23(金) 01:38:57|
  2. 石北本線
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一度きりの銀河

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旧・北海道ちほく高原鉄道 ふるさと銀河線 薫別~大誉地


今やSL銀河といえばC58239が牽く釜石線の列車を誰しもが思うだろう。
しかし、僕は北海道に走ったSL銀河が忘れられない。

北海道の短い夏の盛り、2001年7月31日から8月5日まで北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線に
JR北海道から借り入れたC11171と旧客2輌という往年のローカル線を彷彿とさせる汽車が走った。

取り立てて特徴のある路線ではなかったように思うが、それでも道東らしい山々と畑作地帯を行く沿線は大変な盛り上がりとなり、蒸気現役時代を懐かしむ人々で賑わった。
運行は、片道約140キロの路線ではタンク機関車のC11では走り切れず、中間地点となる陸別駅で給炭水を行い二日かけて往復するというものだった。

本来であればここにはキューロクが…などと愚痴を溢すも、北海道らしい爽やかな風を纏った汽車が川を渡り、汽笛が深い森に響けばたちまち体は震え涙が頬を伝う。
陸別駅で久々に生きた蒸気のキャブに乗せて頂いたが、中は熱く、火室内はC11の命が真っ赤に燃えていた。
機関助士が扱うスコップの音、石炭や油の匂い、蒸気の音、ドレンとなった水の滴る様・・・
なにもかもが愛しいほどたまらない。


廃線を何とか回避するための起爆剤として蒸気運行を定期的に行うのかと密かに淡い期待寄せたが
これが最初で最後になり、路線自体も残念ながらこの5年後に廃止されることになる。
当時まだ残っていた昔懐かしいハエタタキをはじめ、銀河線らしさを出したものが遂に一枚も撮れずに終わってしまったことが心残りでならない。

思えばこの時が真夏の夜空に輝く銀河のように、ふるさと銀河線が最も輝いた日々であったように思う。




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  1. 2017/06/18(日) 02:06:40|
  2. 廃線・保存機
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オホーツクブルーの空の下

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石北本線 端野~緋牛内


常呂川は大雪山系の三国山を源とするオホーツク海側の最大の川だ。
他の地域と同じように、ここでも飲料・農業用水として、住民の憩いの場として親しみ利用されている。

三国…と名が付く箇所は数多いが、僕などは目の前に富士山、眼下に山中湖の眺めも素晴らしい
駿河・相模・甲斐を跨ぐ県道730号線の三国峠と、上野・信濃・武蔵に連なる三国山の南を越える三国峠が身近な所だ。

北海道の三国山は道中央部にあり、石狩・十勝・北見の三国を境とすることから付けられたらしい。
この三国山の袂を走る国道273号線を初めてバイクで通った時はまだ砂利道で、
吸い込まれそうなほどの深い森が広がる峠からの雄大な景色に、北海道の広さを実感した場所のひとつでもある。
また、山の水は分水嶺を隔てて太平洋と日本海に注ぐが、友人の話によるとここではオホーツク海も加わり
三つの海に流れる日本唯一の分水点とのことだった。

もうだいぶ前のこと、当時中古のカヤックを所有していた僕は友人らと二艘のカヤックで北見市中央部付近から端野町まで下ったことがある。
傍から見ていて長閑そうに見える川の瀬も、実際に舟で下ってみると意外に急流で迫力とスリルがあった。
常呂川くんだりでカヤックなどしているのは珍しかったのか橋を渡る人に手を振られ、
途中何ポイントかで休憩し、コーヒーを沸かしながら談笑する…短い川の旅ではあったけれども、それはとても楽しいものだった。

昨年は例年以上の台風に見舞われ、川の氾濫によって人命まで失われるなど多くの被害が出た。
畑などその爪痕はまだ一部残るものの、市内の河川敷は復旧工事も進み野球をする姿も戻って来た。
平穏な日常を取り戻しつつある常呂川。
土手を渡る風は爽やかで、タンポポの白い綿毛がかわいげに揺らぐ、そんなオホーツクブルーの空の下だった。




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  1. 2017/06/11(日) 13:00:25|
  2. 石北本線
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家路に向かう

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石北本線 緋牛内~美幌


北海道のオホーツク地方ともなると田圃の数はだいぶ少なくなる。
北見盆地の端野側を俯瞰できる場所から見る風景も、空をキラキラと反射させている面積が随分減った。
そんな景色を眺めていると、やはりこの辺は玉ねぎやジャガイモ、ビートに麦が主流なんだなぁ…と思わされる。


石北本線の北見以北は端野や女満別方面に田圃が見られるが、線路沿いとなると相当限られてくる。
涼しげな水辺を見ながら列車を見送りたい…そう思って訪れた美幌の田圃。
夕刻、誰かが合図をしたかの如く蛙が一斉に鳴き出した。

辛うじて辺りが見えるギリギリの景色に、その鳴き声を伴奏代わりに軽やかなリズムを乗せて列車が駆けていく。

一日が終わりを告げるほんの一瞬のシーン…。
さぁ、家へ帰ろう…。

車窓から零れる灯りが見えなくなった方角を見つめながら、僕はふぅ…と息を吐き出した。




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  1. 2017/06/08(木) 02:43:22|
  2. 石北本線
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冷たい雨に

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石北本線 女満別


初夏の季節を迎えてホッとしていると、それをあざ笑うかのように冷え込むことがある。
ここ2~3日の気温は最高で10℃ほど、朝方は自宅の温度計では2℃だった。
周りを見れば緑一色の爽やかな風景が広がっているからうっかり騙されそうになるが、呆れるくらいに寒い。
それでも地元の人たちは意外なほど薄着だ。
パーカーやフリースを羽織るくらいで、6月という季節にそれっぽい格好をしたいということなのか
それとも単に寒さに強いだけなんだろうかと毎年思わされる。


湖からの風が吹きつけて、また一段と寒く感じる女満別。
今年も駅裏にルピナスが咲き始めていた。
引き込み線脇に咲いていることから種が跳んで広がっていったのだろう。

知人はルピナスを嫌う。

家の庭にルピナスを植えて花が咲き、やがて人は街へ出て空き家となり廃墟となり、集落からどんどん人がいなくなる。
それでも季節になればルピナスが咲く…だからあれを見るのは寂しい気持ちになるんだよ。

確かに離農した家の庭や鴻之舞のような鉱山跡の廃墟となった町など、
ちょうどこんなように雑草に埋もれながら野生化して咲いているのをよく見かけることがある。
屋根は崩れ落ち、外壁だけが残る家。
家族団欒、笑い泣き、そこにあったはずの暮らしの空間に木が生え大きく茂る。
そこに咲くのがルピナス…

知人の話を思い出したからか、それとも冷たい雨に濡れているせいなのか
きれいな花だと思うけれどもどこか哀しい匂いがする。
人に置き去りにされたような、過去に暮らした人の気配がするような、そんな花に見えてしまうのだ…。




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  1. 2017/06/05(月) 02:45:43|
  2. 石北本線
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魅力と魔力

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石北本線 美幌~西女満別


北海道の魅力は、多くの方もお持ちであろうどこまでも広く高い空と大地、厳しい自然環境にあると思う。
そして僕にとってもうひとつの魅力は砂利道、林道である。
林道なんて北海道以外にもごまんとあり、それぞれの地域で、その土地ならではの多種多様な表情を見せてくれたものだ。

その昔、本当の林道好きなら四国と北海道を知れと言われたものだった。
いつか行ってみたい四国では日本一長い林道をはじめ地図で見ただけでも相当な本数があり、非常に興味をそそられれば
九州は宮崎の諸塚村(もろつかそん)は日本一の林道密度で散々参った覚えがある。
これら道外の林道の醍醐味のひとつは峠越えではないかと思う。
県境、国境の峠越えひとつで家の造りも方言も風習も異なることもあり、その変化が面白かった。
なにも林道に限らず国道でも県道でも峠越えは出来るが、遠回りで時間も掛かり、より労力を要する林道での峠越えに
遥々やって来た達成感みたいなものも加わって、より旅を意識させられた。

北海道の林道は国境、支庁越えのようなものは先ずなく、そういう点では他の地域に比べて旅情感に欠けるが
その代わり爽快感は他では滅多に味わえないものがある。
無心になれるのだ。
そしてふと開けた景色を見た時の何ともいえない清々しさに瞳孔が一気に広がるのが分かるほどだ。
これはバイク好き、ことさら林道好きには堪えられない魅力であり、僕を惹きつける魔力である。

地方ローカル線にもどこか砂利道と同じような匂いがする。
コンクリートに囲まれ、トンネルばかりで時間短縮を主眼とした新幹線は
無機質で無表情で情に乏しい冷たい印象しか伝わって来ない高速道路と同じで興味ないが、
在来線の亜幹線や地方ローカル線では地方色があり、生活の匂いが身近にあり、
峠を越えて往く機会が多いことも旅的な要素をより強く感じられるからそう思うのだろう。
そして原野や森の広い大地を貫く鉄路もまた爽快である。


午後の陽射しに輝く緑・・・
共に貫く二本の道には人里を結ぶ暮らしの匂いと旅への浪漫を思わせる。
同じ匂いのする片方を、列車は今日も定時でやって来た。
その風景は北海道ならではの僕を惹きつけて止まない魅力があり、魔力が備わっていた。




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  1. 2017/06/01(木) 01:14:27|
  2. 未分類
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u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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