笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

晩夏の芳賀路に



真岡鐡道 多田羅~七井    2014年8月撮影


8月もそろそろ終わる。
そんな時に決まって思うのが楽しかった夏休みの終わりだ。

明後日から学校かぁ・・・
あ~あ、明日から学校かぁ・・・

たくさんの思い出を作ってくれた夏休み。
その終わりの切なさと現実に引き戻される何だかせっつかされたような気持ち。
社会人になってからもこの季節になるとその時の気持ちが蘇り、暑ければ暑いほど、
なにかに夢中になればなるほどその気持ちは大きくて、実体のないものに手を伸ばして引き留めたい思いに駆られる。

今から3年前の今日、僕は真岡鐡道の沿線にいた。
北関東の素朴な田舎の風景は、少年の頃の夏休みを思わずにいられない。
ギラギラの太陽、小川のせせらぎ、蝉時雨・・・
風に揺れる稲の音がさわさわと、怖いほどに沸き立つ入道雲はもくもくと・・・
そんな景色に小さなC12がよく似合う。
C11のような洗礼されたスタイルでもなく、言葉は悪いが地味で目立たず田舎臭い。
僕はそんなC12が好きで好きでたまらない。

陽炎に揺れる景色にあの頃と同じような田舎臭さを棚引かせてやって来た。
窓を開けた箱からは笑顔の子供が手を振ってくれた。
それは少年の頃の僕のようだった。

夏休みもあと僅か。
明後日から学校が始まる。
君にとって田舎の汽車はどんな夏休みの思い出になったかな・・・
暑い暑い夏の日、お父さんお母さんに連れられて楽しく過ごしたであろう今日という日を
大人になって夏の終わりを迎えた時、懐かしく思い出すきっかけに汽車がなってくれたらいいな、
と願う晩夏の芳賀路だった。




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  1. 2017/08/30(水) 03:07:50|
  2. 真岡鐡道
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お見送り

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石北本線 端野~緋牛内


色付き出した田んぼの横を通ると畔にかわいらしい頭が見えた。
?と見ればカルガモで、こんな所でカルガモ農法をやってたのかと近づくとすぐに田んぼの中に逃げてしまった。
ちょうど隣の玉ねぎ畑の脇に組み立て前のコンテナが積まれており、
そこにしばらく身を隠しそっと覗くと農道の草むらに一家が続々と出てきた。
ピヨピヨと小さな声が微かに聞こえ、親鳥と思しき一羽が雛たちの近くで見張っている。
雛を見ようと覗く僕の姿は完全に不審者だが、以前の苦い記憶からあまり無理なことは出来なかった。



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端野町端野

 
信州は中信、茅野市の外れ、八ヶ岳が目前にそびえる棚田の間を通る農道をバイクで走っていたところ、カルガモ親子が急ぎ足で道を横断していた。
あっと思って止まったのはいいのだが、一番後ろの雛がビックリして反転、親子と離れ離れになってしまった。
雛一羽がヨチヨチと懸命に逃げ、すると流れの急な農道脇の用水路に落ちてしまった。
あーっ!と慌ててバイクを降り用水路に駆け寄ると雛がすごい勢いで下流に流れていく。
なんとかしなきゃと走って追いかけ、しばらくすると草やごみを止める目的だろうか金格子に引っ掛かった。
手を伸ばしても届きそうになく、仕方なく用水路に入り半身ズブ濡れになって雛を手に包み込むようにして救った。
その雛を離れ離れになった場所に連れてくと我が子を呼ぶ親鳥の声だろうか姿は見えぬが鳴いていて、ちゃんと親元に帰れることを祈って田んぼに放した。
上空にはカラスやトンビが旋回し、親から離れた雛がはたして無事に巡り会うことが出来たのだろうか…
と、なんだか申し訳ないことをしたような気分になった。

そのことが脳裏に浮かび大っぴらな行動は出来ずに辛抱強く粘っていると、一度だけ何とか近くまで親子が来てくれた。
といっても雛は草むらに隠れてしまっていたが、愛くるしい眼を拝むことは出来た。

列車がそんな田んぼの横を眺めながら通り過ぎて往く。
列車を目で追う者、全く無視する者、首を伸ばして不思議そうに見つめる者…。
カルガモの世界にもそれぞれの表情があるものだとほのぼのした気持ちにさせられた。




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  1. 2017/08/25(金) 23:06:40|
  2. 石北本線
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キハ54

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石北本線 端野~緋牛内


各路線には様々な形式の車輛が走っているが、その地方によって似合う似合わないというがあると思う。
例えば美しい渓谷と生活感のある山里を走る只見線。
仮に線路状況が整っていたとしてもC62やD52なんて似合わない。
見慣れる見慣れないというのがあるにしてもあの風景にはC11こそが似合い、
他形式ならば開通当初走っていたC12やC56、仮の話をするならばハチロク辺りまでではないだろうか。
変なこじつけかもしれないが、山と田畑しかない日本的な農村風景にリゾートマンションや都会的な高層ビルなどの建造物が
風景に溶け込まないように車輛にもあると思うのだ。
2015年だっただろうか、当時は関東にいたにもかかわらず磐越西線にC61が走った時もそういう意味から全く興味を示さなかった。
いくら当機がC57の代替機関車としての性格も持ち合わせて製造されたといっても、磐西の風景にハドソンの造形は不釣り合いと思ったからだった。


石北本線の普通列車はキハ40が主力である。
しかし日に何本かはキハ54が含まれていて列車の走る風景に変化を与えてくれている。
ただ、同じ国鉄型でもキハ54はキハ40と比べてあまり人気はないようだ。
国鉄型というと面構えを含めて朱色一色、もしくは赤とクリームのツートンカラーのイメージが強いからだろうか。
ステンレスの車体というのもどこか引っ掛かるものもあるのかもしれない。

うん、やっぱり似合っている!

久しぶりに帰って来た強い日差しに銀色の車体を鈍く光らせ走る様は、いかにも北海道のローカル線といった面持ちだ。
キハ54の人気のほどはともかく、僕は北海道の道東や道北地方に似合う車輌だと再認識した。




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  1. 2017/08/24(木) 01:33:27|
  2. 石北本線
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ジョイント音

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石北本線 緋牛内~端野


鉄道好きにとって列車のジョイント音というのは、乗っていようと外から聞いていようと何とも心地いいものだ。
旧型客車の乾いたような少し籠った音、気動車や電車などの軽やかな音が線路を叩く…。
のんびりと叩けば窓を開けて頬杖つきながら車窓を眺め、その音と揺れにいつしか寝てしまったあの頃へと思いは還り、
リズムカルに叩けば矢のように後ろへ飛んでいく景色のスピード感に酔いしれる。
そこに蒸気のドラフト音、ディーゼルのエンジン音、電車のモーター音などが合わされば、その音は旅の思い出の栞となる。

僕が幼い頃は今のように必ずしもレールの繋ぎ目が同一箇所ではなく、左右バラバラというものがまだ残っていた。
そんなところを走れば忙しない複雑な音を楽しめたものだった。

二軸貨車が当たり前だった時代、様々な貨車の不規則な音も面白かったものである。
よく近所のガキンチョ同士で音だけを聞き、今のはワラ、これはトラだろ、いいやハワムだねと言い当てるのも楽しかった思い出だ。

今の自宅は丘の向こうに線路があるが、静まった夜には常呂川を渡った頃から緋牛内を発車していくまで聞こえてくる。
実家も横須賀線や湘南新宿ラインの列車の音が聞こえてくるが、ロングレール上を走る走行音は少々やかましく感じるから
身勝手というか不思議なものだ。

音は時間や湿度などでも聞こえ具合が変わり、よく響く時もあればそうでない時もある。
この日は風に乗っていつもより遠くから聞こえ、木々の狭間から特急大雪が勢いよく飛び出してきた。
果たして乗る人の何人がその音を聞きながら流れる車窓を見ているのだろう。
夏休みで来た旅人にはどんな音色で届いているのだろう。
お盆に帰った故郷の思い出に、この音は響いてくれるだろうか。

収穫も始まり緑も色褪せはじめた風景に奏でられるジョイント音が、それらの人の胸に自然と刻み込まれたらいいな…と
ふと、そんな風に思っていた。




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  1. 2017/08/19(土) 00:52:47|
  2. 石北本線
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秋の気配

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石北本線 緋牛内


8月に入りようやく休みとなった15日。
ヤスミハアメノヒではなかったものの、それでも相変わらず晴れることはなく
それどころか今月に入り全く夏らしい天気がないオホーツク地方。
お盆も過ぎれば秋が来る…そう言われている北国の夏。
先月には確かに暑い日はあったのだが夏の空には遠く至らず、どうやら今年は夏は来ないで終わりそうな気配だ。

結構遅くまでエゾゼミが鳴いていた昨年の夏と打って変わり、
既に庭先では秋を告げるカンタンが鳴きはじめ、街にも駅にもコスモスが咲き出した。
花の色がどうにもノペッとして僕の腕では如何ともし難く、そうこうしている内に列車が来てしまった…
というのはいつもと変わらず、せめて秋はスッキリと、オホーツクらしいさわやかな陽気になって欲しいものである。




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  1. 2017/08/15(火) 20:39:21|
  2. 石北本線
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犠牲者の下に

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前回金華信号場を訪れてから数日後、僕は再びそこにいた。
家を出る頃は時折薄日が差す空模様であったが、西の方角を見ると少し厚い雲に覆われている。

「ひょっとしたら雨が降っているかもしれない」

そう思った僕は迷わず金華に向かっていた。
着けば霧雨が降っていて、静かな山の信号場はもの悲しささえ感じるほどだった。


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石北本線 金華信号場


幼い頃、時々まだ知らぬ寝台列車に見立てて押し入れの中で寝かせてもらうことがあった。
ある日、親父が蒸気機関車のLPレコードを買ってきて寝る時にかけてくれた。
より寝台列車の気分を演出してくれたスピーカーから流れる汽車の音に、幼い僕はその気分に浸りながら眠りについていたものだった。ただひとつの音を除いて…。
その音の収録先は写真誌などで必ずといっていいほど目にしていた常紋峠であった。
峠に挑むD51444は力強さと迫力をもって去っていくが、静けさを取り戻した峠に鳴く夜鷹とトラツグミの鳴き声に、幼いながらもどこか不気味さを感じていた。

その後、常紋峠は心霊スポットで有名な曰く付きの場所だと知る。
霊的なものを信じるか信じないかは別として、友人に連れられ初めて常紋トンネルの上を走る細い林道にバイクで行った際は怖いというよりむしろ哀しい感じがした。

大正3年に開通した常紋トンネルはタコ部屋労働で建設され、その後周辺からは人骨が、トンネルからは人柱も発見されているのはご承知の通りだろう。
当時はどれほど過酷で非情で悲惨だったか、一体どんな思いだったかと犠牲者を偲ばずにはいられない。
何気に乗っている石北線も、普段を過ごす暮らしにもこの犠牲者たちの下にある。

現在、駅舎のかつてのホーム側には殉職者追悼碑への案内板が掲げられたままでいる。
列車を降り、或いは停車中に目にすることもあったであろう案内板も今や駅廃止となり、通過する列車から果たしてどれだけの人が目にしているのだろう。

宵の始まる寂静的ともいえる色となった風景にオホーツクが駆け抜ける。
少しでも知って欲しいとの願いか、照明に照らされ存在を訴える光景が、僕には一際寂しいものに思えてならなかった。




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  1. 2017/08/08(火) 03:37:50|
  2. 石北本線
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根室標津の熱い想い

昨日の昼、宮城の友人から「こんなものがあるとは知らなかった」とラインが来た。
なにかと思えば根室標津駅跡地にある転車台に、近くに保存されているC11を移動させて乗せるというプロジェクトだった。
以前、どこかでC11を整備するような話は聞いた覚えはあったが、各地で痛んだ機関車の修復と同じことが行われるのだろうと大して気に留めないでいた。
根室地方の小さな町でそんな大規模なことをするのか…と送ってくれた標津転車台保存会のホームページを見ると
転車台も動かせるよう整備し、機関車は車輪が回せるようになったとある。
動力はてっきり圧縮空気かと思いきや、なんと電動式とのことだった。

見れば見るほどジッとしていられなくなり、14時頃になって標津に向かった。



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標津町標津文化ホール


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(ドラマチックトーンにて撮影)
かつての僚機だった大井川の227号機と同じくコールバンカには手擦りが装備される。


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握り棒を見ると北海道型だなぁと改めて思わせる。
小さな機関車だが、下から見上げると蒸気機関車の威風堂々とした姿にいつも圧倒されてしまう。
静態保存であってもカッコいいものはカッコいい。


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根室標津駅跡地 下路式手押し転車台


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(ラフモノクロームにて現像)
アッシュピットまで復元かと思えば、見学者に機関車の下も見てもらうためのピットとのこと。
草に埋もれていた廃線当時の線路は地盤沈下と枕木の腐敗のため一旦線路を外し新設された。

標津線が廃止となったのが1989年、それから早28年が経つ。
今もなお、地域発展のために尽力した鉄道を忘れることなく、財政も厳しいだろう果ての小さな町で
少しずつコツコツと進めてきた有志の方々の苦労も並大抵のことではなかっただろう。
北海道の鉄道は今存続の危機に立たされている中で、このプロジェクトに挑む関係者の意気込みに拍手を送りたい。

なお、明後日の8月6日に文化ホールに保存されている機関車を転車台付近に移動し、10月8日に開催される旧標津線フットパスイベントで公開予定とのこと。
お近くの方や興味のある方は、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。




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  1. 2017/08/04(金) 18:44:28|
  2. 廃線・保存機
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ヒメジョオンの咲く線路端

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石北本線 緋牛内~端野


相変わらず休日は雨に祟られる。
他人から雨男と冷やかされることが多いが、8月も半ばを過ぎれば秋の気配が漂うというのにこんな案配ではさすがに意気消沈である。

先月、猛暑が続いた日もあった北海道。
でも空は僕の思う夏空のそれではなく、今ひとつ盛り上がりに欠けている。
案の定夜勤明けでようやく夏雲が浮かぶこの季節らしい空が広がり、眠いのを我慢して夏空の下に飛び出した。

地元の限られた区間での撮影に、時には様々な地域で撮影したいという気持ちはあっても
「どうやって撮ろうかなぁ」
と下手は下手なりに考えたり、また季節毎に見せてくれるシーンに新たな発見があったりしてこれはこれでいいものだと思う。

鉄道が趣味の方ならご存知の方も多いだろうヒメジョオン。
駅構内や線路端に咲いている姿をよく見ることから鉄道草ともいわれる。
その花が道より低い玉ねぎ畑の片隅に一本だけ咲いていて、なぜかそれに惹き付けられた。
無理な体勢に汗が顔を滴りしつこくブヨが飛び回る。
あっという間に5~6ヶ所刺されて猛烈に痒くなるが構っているヒマはない。
E-5のバリアングル液晶の恩恵に預かり花を見上げると、こんなにきれいだったかなぁといった気持ちにさせられた。

天気はゆっくり下り坂。
列車が来るまでの間、せっかく浮かんだ夏雲に変わってスジ状の雲が増えてきた。
それでも元気な日差しが降り注ぎ、列車は軽やかに駆け抜ける。
短い北国の夏らしく時折吹く風は爽やかで、ヒメジョオンが手を振るように揺れていた。




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  1. 2017/08/01(火) 19:55:26|
  2. 石北本線
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プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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