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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

晩秋の端野俯瞰

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石北本線 端野~緋牛内


ここ5日ほど秋晴れとなった北見地方。
最後を彩る落葉松の紅葉も盛りとなり、幸いなことに内3日間夜勤や休みと重なったため
自分の中だけで呼んでいる端野俯瞰に行ってみることにした。

この時期、北見盆地の山に沈もうとする陽は落葉松の紅葉をさらに紅くして、惚れ惚れするような景色を見せてくれる。
しかし、雲ひとつなく晴れ渡った空でも朝の冷え込みに霜が降りた大地は日中の気温差により空気は淀むことが多く、
殊さら先日雪が降ったものだからなかなか透明度の高い空にはならない。
それでも訪れた3日間の内二日目には、やはり少し霞んだ景色ながらも斜里岳が遠く望まれた。

晩秋の斜陽が真っ赤に燃える。
民家を、畑を、丘を、森を…見渡す限りの全てをこれでもかと鮮やかに…。

走る列車も家々もなんと小さなことだろう。
一個人など消し粒以下の存在にくだらぬ悩みを抱えたとしても、じっと眺めているとどうでもいいとさえ思えるほどだ。

雪を抱いた斜里岳を凝視して段階的に視線を下界に移していく。
すると、なんだか自身がスーっと景色に吸い込まれていくような…そんな錯覚をした。




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  1. 2017/10/30(月) 04:42:31|
  2. 石北本線
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黄昏時に響かせて

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石北本線 端野~緋牛内


先日の台風21号の影響で北海道は雪になった。
一昨年も10月に初雪が降り、その時は結構積もってえらい目にあったが今回はそれほどでもなく
(そうはいっても一面真っ白になった)、翌日には山間部や日陰を除きほとんど融けてなくなった。

雪が降ったせいなのか落葉松の紅葉も進み、昨年と比べると少し早く季節は進んでいるようにみえる。
根雪の季節にはまだ先の話とはいえ寒気が入れば雪になる…それが北海道の晩秋なのだと思う。


「日が短くなったね」

そんな声もよく聞かれるようになった。
空を見上げると、あれほど長かった日も今では13時を過ぎればそろそろ斜陽となって長い影を作り始める。
日の入りは16時半も待たず、15時台ともなるといよいよ一日のクライマックスだ。
ちょうどその時間帯にやって来るスジがある。

もう来てもいいんだけど…。

頭が痛くなるほどの冷たい風に耐え切れず、恥も外聞もなく防寒着を羽織って見つめた先から
紅く燃える光を一身に受けた列車が鉄の轍を響かせながら現れた。

こうして列車が時間を刻みまた一日が過ぎて行く。
一歩ずつ、一歩ずつ…。
そして長い冬も遠くから足音を響かせやって来る。




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  1. 2017/10/28(土) 03:24:40|
  2. 石北本線
  3. | コメント:0

また来年ね…

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丸瀬布いこいの森


いこいの森に着いたのは、もう陽が山に沈む直前だった。
稜線がほんの一時朱く染まり、それが過ぎると途端に空気が冷えてくる。

ポォー・・・

寒々しい色となった武利の山に、寂しげに笛の音が木霊した。
今年の運行もあと僅か。
関係者の必死の努力で昨年の台風被害から見事に全線復活を果たし、
喜びを胸に走った森の汽車はまだまだ走りたいのだろう。
今年も様々なお客さんを乗せ、小さな汽車はみんなを笑顔にしてくれた。


また来年会いに来るから…

客車と丸太を積んだ貨車と手を繋ぎ、在りし日の姿で迎えてくれた森の汽車は
ここが公園内ということを忘れさせ、最後に美しい光景を僕に見せてくれた。





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  1. 2017/10/21(土) 00:13:01|
  2. 保存鉄道
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青空の森で

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石北本線 上越信号場~奥白滝信号場


里に秋が下りると山頂付近は冬がやって来る…内陸部の山間部で車を走らせていると、もうそんな景色が見られるようになっていた。
風にカサカサと音を立て、木々の枝から葉が舞い落ちる様子は寒々しくすらあった。


今年は寒いね…。

釧路では平年より24日も早く雪が降り、東京でも10月にして冬のような寒さになったと流れるニュースに
今年の冬は早いかもね…などと周りからも声が聞かれた。

夏らしさがなかった今季、紅葉は今いちかなと思っていた秋。
その割りには順調に色付いていた山の景色も、ここ数日の一気の冷え込みにより
色付く前に黒ずみが目立つようになってきたと感じる。
例年だと今頃まっ黄色になる庭先の木の葉も風に落とされ、早くも丸坊主になってしまった。

里よりむしろ峠付近の方がきれいかなと訪ねると一足遅く、既に晩秋に向かう様相になっていた。

タイミング悪かったなぁ…

森の中で少し残念に思いながらも清々しい気分で峠を駆け下りる列車を見送れたのは、
白い雲がプカリと浮かんでは流れ往く澄んだ青い空のおかげだった。




  1. 2017/10/18(水) 20:52:40|
  2. 石北本線
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北海道の里の秋

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石北本線 端野~緋牛内


秋の陽は日に日に短くなり、それと共に木々の彩りも日一日と進んでいく。
標高の高い山は雪化粧をはじめ、紅葉はいよいよ里に下りて来た。

久しぶりの地元路線。
地元…などとよそ者の僕が言うのはおこがましいが、少しばかり道北へ足が向いてからの石北本線は
やっぱりホッとする地元の路線なのだ。
これといって目を見張る紅葉ではないかもしれないけれど、人の営みが漂う里の秋らしさが心地いい。

里、田舎…というと内地育ちの僕には、こじんまりした村の周りに雑木林があって古い社や塚があり、
蔵があってお地蔵さんが道端にポツンといて、小川や田畑がある。
秋にははざ掛けが並び、柿の木には残り柿、軒先には吊るし柿がぶら下がってて…なんてイメージで
北海道のそれとは少し趣きが違う。
けれども、この界隈は北海道っぽいけどどこか内地的な匂いがするのは、
林や丘に対して点在する家や畑、D型倉庫などのバランスがいいからなんだろう。

薄曇りのボヤンとした景色を眠たそうにやって来た石北の汽車。
こちらもまたボヤンとのんびり落ち着いて汽車を見る。
北海道の里の秋、ここは僕にとって居心地のいい里なのである。




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  1. 2017/10/16(月) 23:07:36|
  2. 石北本線
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雄信内にて

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宗谷本線 雄信内


雄信内の駅は宗谷本線内に残る数少なくなった木造駅舎のひとつだ。
いかにも北の果てを思わせる北海道らしく好ましい風情を持つ。
周囲は木々と雑草の中に数軒の廃墟が残るのみ、
幌延に抜ける道を、忘れた頃に車が踏切を渡る以外は鹿の鳴き声が響く。
駅の背後は森が控える住民のいない土地に、今でも現役で存在するということ自体奇跡と思えた。


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雄信内の駅に着いたのは、雪虫が舞う16時を少し回った頃だった。
夕日に染まる光景に切ないほどの旅情が込み上げる。

秋の日は釣瓶落とし、瞬く間に日が落ちた駅に途方もない静寂が訪れる。
駅を一歩出てみると、人の目ではどうすることも出来ない暗闇が不気味に口を開けて待つ中に
白熱灯がぽうっと灯る駅が不自然なほどそこにあった。


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誰ひとり来るはずもない駅の待合室から零れる灯りが虚しく感じる。
突然ドサッと鈍い音がして背後に大きな鹿が薮から現れ、機材などそっちのけで一目散に車の中に逃げ込んだ。

時折ガサッ、パキッと野性動物の気配がする孤独感と恐怖感に押し潰されそうになりながら耐えること2時間余り。
列車の音が遠くに響くと、闇を切り裂く…とはこういうことを言うのだろうヘッドライトが近付き、
数人の乗客を乗せた列車が人のいない土地の駅に律儀に停車する。
長年極寒の地で風雪に耐えて時代を見て来た木造駅舎に列車がいるという風景…。
あれほどの孤独感に苛まれていたのに、たったそれだけのことで嘘のように僕の心は熱く震えた。


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列車が闇の向こうに瞬く終着稚内へゆっくりと発車する。
出発信号機が青から赤に切り替わる。
赤いテールランプが遠ざかり、駅は再びいいようのない静寂に包まれた。

見えない敵にいつ襲われるかのような不安と恐怖を感じながら聞こえた列車の音はなんと頼もしいものか…。
僕はこの日ほど人の気配を運んでくれる鉄道が、
これほどまでにありがたいものだと思ったのは初めてのことだった。




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  1. 2017/10/16(月) 01:47:53|
  2. 宗谷本線
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耽る



宗谷本線 恩根内~紋穂内


「ほれ、あの向こうにサイロが見えるな。
あそこがワシん家じゃ。いつでも訪ねて来なさい。」

C55が牽く旭川発稚内行き321列車の車中を記事にした、ある鉄道雑誌を食い入るように見ていた学生時代ーー。

「気を付けて行きなさいよ。訪ねて来なさいよ。」
原野の駅に一人降り、しわがれた声で手を振るホームを321列車は短い汽笛を残して後にした。

…そんなような一文だったと思う。
その老人が降りた駅はどの駅だったか記憶は定かでないが、遠くサイロが望まれる風景にそんなことを思い出していた。

駅を降りた老人はどれほどの道程を歩いて帰ったのだろう。
旅の若者が訪ねてくれることを願いながら、向こうに流れる汽車の煙をどんな思いで見ていたのだろう。
孫に囲まれ、牛の世話をし、日々どんな暮らしをしていたのかと想像は尽きない。


忙しく流れる白い雲を縫って日差しに浮かんだ見張るような景色は
いつしか灰色の空に覆われて少し寂しげな色に変わっていた。

かつて北の大地に咆哮した蒸気機関車の面影は遠く、存続すら危ぶまれるようになった鉄路を汽車は往く…。
時代の流れに揺れる光景を、その老人の魂は今をどのような想いでサイロ越しから見送っていたのか、と
秋色の景色の中で物想いに耽りながら眺めていた。




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  1. 2017/10/12(木) 00:30:34|
  2. 宗谷本線
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天塩川のある情景

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宗谷本線 紋穂内~恩根内


天塩川…
その響きに最果て旅情を掻き立てる名の川は、天塩岳を源に岩尾別から名寄盆地を北上し
天塩平野を経て日本海に至る道内2位の長さを誇る川である。

その流れは名寄地方で稲作の水源となり、美深以北は酪農を営む大地を形成する。
音威子府から渓谷を下り、三日月湖が多く残る幌延辺りで西に向きを変え、
次には天塩町で海岸線を南下してようやく日本海へと注がれる。
コンクリートなどで護岸された箇所も少なく、
川幅も広くてゆったりと流れる川の眺めは随所に道北らしさを感じることが出来るだろう。
詩情溢れる景観は旅する人の期待を裏切ることはないはずだ。

そんな川が織り成す道北の景色を見ながら特急宗谷の青い身体が駆けて行く。
遠くサハリンを望む旅路の果てへはまだしばし、2時間10分ほどの道程だ。
色付く山々、広がる牧草地、たゆまぬ流れの天塩川…。
大いなる景色に鉄路を叩く足音が山影から現れ、そして消えていった。




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  1. 2017/10/08(日) 03:40:42|
  2. 宗谷本線
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象徴の影に

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宗谷本線 音威子府


若かりし頃、東京での職場である管理責任者が転勤して来た時のこと…。
東京ドームでプロ野球観戦や、昼飯にもよく連れて行ってくれたべらんめぇ口調の、公私ともに大変お世話になった方がいた。
ある日休憩中にその上司がやって来て、そこに職場に届けられた荷物の片隅にあった音威子府という文字を指し
「おい、おめぇこれなんて読むか知ってるか?」と聞く。
「おといねっぷがどうかしましたか?」というと
「なんだ知ってたのか、面白くねぇ」と笑いながら出て行った。
上司からすれば、なんだ読めねぇのかとからかうつもりだったのだろうが
まさか僕が子供時分から音威子府に凍てついたキューロクやC55の写真を見て知っていたとは知る由もなかったろう。

その音威子府の写真には、旭川から厳しい北の寒風を突き抜けて全身凍らせたC55が客車から切り離され
少し先で給水を受けている写真だった。
ホームでは「NHK推奨」「日本一」などと書かれた暖簾が下がる立ち食いそば屋に旅人が群がる。
そば屋からも、ホームでそばをすする人々や丼からも白い息や湯気が立ち込め、
その先で整備を受けるC55からも全身蒸気に覆われ、それはまさしく活気ある駅の光景だった。

そのそば屋さんはホームから駅舎の中に移転して現在でも老夫婦のお二人が切り盛りしている。
ちょうどお昼時だったこともあり、意外なほど後から次々とお客さんがやって来ていた。

かつては天北線や羽幌線の連絡駅でもあり鉄道の要所であった音威子府。
両線が廃線になってから久しく経つ。
今では構内の線路もかなり撤去され、当時のような活気は微塵にも感じられなくなってしまったが
それでも広い構内と立派な木造の跨線橋は健在だ。
跨線橋の木目には、在りし日のC55やキューロクたちの息吹きが染み込まれているだろう。
この駅の象徴でもあるかのような、重厚且つ威風堂々とした跨線橋に敬意を示すように特急サロベツ4号が静々と入線する。
往時より寂しくなったとはいえ、見ていて楽しくなるような駅構内を秋の短い日差しが長い影を作り
僕の頭の中で蒸気たちの鼓動と今見ている光景が重なった…。




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  1. 2017/10/03(火) 17:40:07|
  2. 宗谷本線
  3. | コメント:0

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