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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

初夏の音色に

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大井川鐡道 塩郷~下泉


フィー、フィー、ヒョヒョヒョヒョヒョ…と鳴き声の聞こえる川岸。
古くから大和民族に馴染みのあるというカジカガエルは何とも清らかな声で鳴く。
平安時代、京の都で鳴き声を楽しむ宴があったとどこかで聞いたような読んだような記憶があるが
その声は北海道には生息しておらず、最後に聞いたのは伊那谷から小淵沢に向かう山中の旅路の黒川であった。
何十年振りとなる、久々に聞いた生の鳴き声…
この声も日本人として忘れたくない初夏の音色だ。

その鳴き声を伴奏に、シゴロクが弾けるように唄いながら対岸を駆けて往く。
強い日差しに煙こそなかったが、これはこれで僕にとって古き良き光景となって甦って来た。
昭和40年の中ほど、信州は飯山線。
千曲川に沿うようにC56が短い貨物を牽いて、唱歌ふるさとの地を走るその様を…。

飯山線の蒸気機関車はC56を中心に、冬にはC12が応援に入り臨時旅客を牽いていた。
たまに目にしたC12はこの時のものだったのだろう。
蒸気機関車の知識が付き出した頃、黒煙を吹き上げ重量列車を牽っぱるD51こそが全て、
C56なんて小さなドかっぺ丸出しな機関車なんか…とバカにしていたが
今にしてこれほど懐かしく思う機関車はなく、彼でよかったなぁと思えてならない。

滔々と流れる千曲川、カジカガエルがヒョヒョヒョと鳴く。
夢中で川遊びをする向こうを、気を付けて遊べよポー、ポーッと汽笛を鳴らす。
藁葺き屋根を持つ山村に見えた煙…
のどかで美しい信濃路を、シゴロクはこんな風に川に沿って走っていたのだ。




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  1. 2019/05/30(木) 23:05:45|
  2. 大井川鐵道
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恩師の水彩画

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大井川鐡道 駿河徳山~田野口


小学5~6年の担任の先生は面白くて生徒想いの、時々女言葉を使う少しキモい先生だった。
四国高松出身で、たまにバイオリンを弾いてくれ、
その風貌からどことなく作曲家であり指揮者の故山本直純氏に似ていた。

(山本直純氏は「男はつらいよ」の主題歌や、国鉄最後の日の蒸気機関車の汽笛による蛍の光演奏の指揮をされ、
同年代の方なら「オーケストラがやって来た」という番組をご存知の方もいらっしゃると思う)

悪さか過ぎれば時にビンタを食らい、一度教壇から教室の端までブッ飛ばされたことがある。
自分がいけないと知ってての悪さのため恨むもクソもなく、怒るというより叱るといった感があり、
現在のような保護者からの苦情は時代背景もあるが聞いたことはない。
ある日、勉強嫌いの上に分数が大の苦手だったことを見かねて、先生は息子を借りると親に告げ
自身の住むボロアパートに呼んで24時近くまで大特訓をさせられた。
おかげで翌日から嘘のように分数が解けるようになったのだが、泣き、笑い、遊び、叱り、
生徒一人一人に対して熱くていい先生だった。

そんな先生の描く水彩画は、未完成と思える鉛筆線を上手く残す技法の風景画で
淡く繊細で、水彩画というより鉛筆画に色の盛り付けをしたようなといえばいいだろうか
今まで見てきたものと全く違う画だった。
それからというもの蒸気機関車と零戦、大和型戦艦や妙高型重巡、空母飛龍の鉛筆画!
と決まっていた僕の絵は、校庭の花壇をモチーフにした水彩画を描くようになっていった。


天から如雨露で撒かれたような小粒の雨が降り続く。
時に災害をもたらす雨も、この日は撫でるみたいに森が奏でるサーッという雨音がきれいで優しかった。
白く霞んだ景色は区々に、微かな濃淡を付けながら不規則に流される。
豊かな緑と水の国が見せる表情はなんて詩的なんだろう…
日本の風景っていいよなぁと沁み沁み思う瞬間だ。
飽きることなく眺めてはため息をつく。
派手さはないが、淡く繊細な景色に汽車の汽笛が恩師の画を乗せてやって来た…。




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  1. 2019/05/29(水) 22:56:39|
  2. 大井川鐵道
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茶摘みの音に微睡んで

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大井川鐡道 下泉~田野口


新茶のシーズン、どこもかしこも茶摘みが忙しい。
機械で刈るとはいっても傾斜地で作業する苦労は
北海道の丘に広がるジャガイモの収穫を手伝った経験からある程度想像がつく。
その苦労を横目にすれば、傍で聞く煩い機械の音も少し離れるといい音色として耳に届く。
ブーンという音がなんとも長閑で平和で、
あぁ、茶摘みの音だなぁ…とほのぼのした気持ちにさせられそのまま寝てしまいそうだ。

小学生の頃、風邪で休んだ昼下がり。
熱でボーっとしているところに聞こえたセスナの音…
ガラス越しに陽が差し込み、それらがとても心地よくて
学校を休んだら毎日こんなにいいことがあるのかと微睡んだ日のことが
茶摘みの機械音を聞いてると毎回のように思い出す。

お昼になると眼下の茶畑で手摘みをされていた農家さんは帰られた。
籠を置かれていったので汽車が来る時間までに戻って来られるかと期待するも
そうは問屋が卸さず殺風景な景色になってしまった。
それでもどこかで早々に再開された茶摘みの機械の音と
智満寺の大仏様を背後にしていたこともあってかありがたい気持ちにさせられて
なんだかもう一生眠っちゃってもいいや…
なんて半分夢眼のような気分で汽車を眺めていた。
どうやらグータラな性分は生涯治ることもなさそうである。




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  1. 2019/05/22(水) 14:06:10|
  2. 大井川鐵道
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アタリかハズレか

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大井川鐡道 田野口~駿河徳山 (トリミングあり)


僕は雨男である。
何をするにも「ここぞ!」という時に限って雨が降る。
ならば素直に受け入れよう。
降りしきる雨がいい感じだった。
まさに期待した通りの、風情ある理想の雨景色、
さすが降水確率80%だったことだけはある。

ここに汽車が来ればたまらんぞい…

今日は天気に勝ったと、してやったりほくそ笑む。
どれ、それまで車の中で仮眠でも。
屋根を叩く雨音もいいじゃないか。

列車通過30分前にタイマーで起こされるとすっかり止んでいた。
「・・・・・」

降水確率80%…

確かに外れてはいないけど、雨男が雨を呼ばず道まで乾きはじめている。
鮮やかに展開する景色に怒られそうであるけども狙ってたのはこれじゃない。
鶯がすぐ横で囀ずる。
電線に止まってホーホケキョ。もう雀と同じだ。
我が家も結構聞こえてくるが比なんてものじゃない。
半ば鶯に八つ当たりして下がったテンションとは対照的に
まぁ、そうしょげなさんなってと汽車はいい煙でやって来た。

うまい具合にいかないものである。




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  1. 2019/05/20(月) 17:37:39|
  2. 大井川鐵道
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ふるさと色の紫

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大井川鐡道 田野口~駿河徳山


大井川を挟んで対岸を眺めていた杉の森に薄紫の色が目に留まった。
あれは桐の花だろうか…

桐といえばパッと頭に思う浮かぶのが桐下駄や桐箪笥などの工芸品で有名な会津地方。
娘が生まれた家では桐の木を植え、それで作った箪笥を嫁入り道具にして嫁がせるエピソードも
桐は会津にとって深い関わりを持つ。
また、寅さんがさくらに下駄を買ってやろうと立ち寄った会津柳津で、
あまりの高さに手が出せずしょんぼり売に向かう姿も桐繋がりで忘れられないシーンだ。

幼き頃に半分は過ごした信州北信地方も桐の木をよく見かけた。
雪深い地方ゆえ、冬の収入の足しにと桐細工を売っていたのか
それとも会津と同じく嫁ぐ娘に桐箪笥を持たせたのか分からないが
いずれも只見川、千曲川と広い川を挟んで見る緑豊かな森と
山村に映える桐の紫は目に染みるふるさとの光景だ。

そんなとこから足が止まり汽車を待つ。
次位に繋がる客車はかつての特急はつかり色という細かいことを抜きにして、
今や旧客、或いはそれをイメージするものはすっかり茶色一辺倒となってしまった中での
貴重な青客というのも、より懐かしい思いが込み上げた。




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  1. 2019/05/16(木) 16:42:09|
  2. 大井川鐵道
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雨に煙る大井川

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大井川鐡道 抜里~川根温泉笹間渡


とかく茶畑と山の緑が美しい川根地方。
冬の柔らかい陽射しが届く山間の里も捨てがたいものがあるが、やはりこの季節が一番輝く季節であるように思う。

眩しいほどの新緑と雨に煙る大井川の景色を見たい…

そう思ったのは、初めて川根路を訪ねた日が雨だったせいだろう。
昭和55年の5月辺り、千頭へ一泊の家族旅行だったから汽車の撮影はついでだったし
そもそもポイントなんて分からず、親父と適当に景色の良さで線路端に立ったのが抜里の築堤だった。
久しぶりに聞く蒸気機関車の汽笛が幾重にも木霊して、
随分響くものだなぁと背筋にビリビリと、足がガクガクと来る好きな者にしか味わえない電気が走る。
重たい曇り空の下、やって来たのは当然と思っていたC11227の面構えではなく
前年にタイから復員し日本型に戻されたばかりのC5644を先頭にした重連だった。

どうりでやたら汽笛が響くわけだ…
僕にとって蒸気機関車の重連は篠ノ井線のD51が最後で、それから10年以上経つ。
大井川鐡道はC11と決め付けていたこともあっていささか拍子抜けしたが
現役蒸機廃止後、再会を果たした蒸気機関車は飯山線であれほど見ていたC56だったというのも何かの縁だったのだろう。

信州生まれで信州育ちのお袋は父親が教師ということもあり県内で転校を重ねた。
塩尻、辰野、岡谷、上諏訪、茅野…
中央東線のD51やD50、入換のC50やC12の煙を散々浴びたのだろう、大粒の雨が屋根を叩く宿で
茶そばが美味しいと喜びながら蒸気機関車の煙を懐かしがっていた。
雨は翌日も続き、深く垂れ込んだ雲に霞んだ第三橋梁を二条の白煙が渡っていくのを家族で見送った…
それが僕の初大井川の思い出である。



冬に訪れた俯瞰場所は中段と言われる位置からだった。
当日、雨は結構な降りで、一人オフロードバイクでなら林道が崩れようが落石があろうがお構いなしだが、
さすがに普通四輪では対応し切れないことと、肝心な列車が霞み過ぎて何も見えないことから今回は下段位置に陣取る。
それでも時折下からガスが駆け上がり、対岸の山の稜線も見えては隠れ、やがて汽車の息吹が迫って来た。
これは降り過ぎだ、加減ってモンがあんだろうによと一人ブツクサ文句を言ってると
仕方ねぇなと僅かながら乳白色の霞んだ景色に稜線が見えだした。

棚引く煙が客車に被る。
ああ、それがたまらない…
それこそ生きてる証、蒸気機関車の煙だ。
初めて来た時のように、雨に煙り、白煙が流れる…


そう、これが見たかったんだ。




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  1. 2019/05/12(日) 16:30:39|
  2. 大井川鐵道
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桜雨

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石北本線 美幌~緋牛内


例年より早く咲いた桜も終わりを迎えた。
そぼ降る雨が惜しむように散り際の桜をしっとりと濡らす。
晴れの日の桜もいいけれど、雨の桜は日本人が好む風情というか儚さというか
そのようなものがあると思う。

薄暗くなった緋牛内の集落にオホーツク4号が進入する。
のんびりと、やっとやって来た春本番…
通過する特急列車の如く、内地の季節に追い付けとばかりに
これから初夏へと向けて一気に加速していく。




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  1. 2019/05/11(土) 14:30:20|
  2. 石北本線
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春うらら

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石北本線 緋牛内    2017年5月撮影


雪の下からフキノトウが出て福寿草が咲き
水仙が咲き、タンポポが咲き
桜より一足早く咲くツツジの赤が目に眩しい。

待ち遠しかった春うらら。
ローカル線の鈍行列車のようにゆっくりと駅に着く。
野辺が華やぐ…
日本のはずれのオホーツクにもそれがようやく届き始めた。




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  1. 2019/05/06(月) 14:56:15|
  2. 石北本線
  3. | コメント:0

令和元年 いつの時代も

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大井川鐡道 千頭    2018年12月撮影


汽車の煙が漂うホームにて楽しげな声が聞こえて来た。
お父さんと手を繋ぎスキップする男の子。
きっと嬉しくて、楽しくて、仕方ない様子が伺えた。

さ、ここだよと息子に優しく促すお父さん。
これから巡る汽車の旅は、父と子それぞれにどのような時を刻むのか。

やがて年月が経ち、時代が移り変わろうとも
どうか、この日のことが深く尊いものになりますよう。




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  1. 2019/05/01(水) 00:01:00|
  2. 駅・設備
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

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当ブログは写真ブログではなく、あくまでも日記の立ち位置のつもりでいます。写真は落書き代わりのいい加減なものですので、予めご了承下さい(´▽`;)ゞ

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