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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

通学列車

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石北本線 緋牛内    2018年7月撮影


6時33分、札幌行き特急オホーツク2号通過で始まる緋牛内の一日。
地域の足となる普通列車は、およそ30分後にやって来る。
4時台から運転される山手線と比べると何とものんびりしたものだが、
乗客の主は学生たちで、言ってみれば通学のために運転されるようなものだ。

到着時刻が近付くと、こんな緑に囲まれた駅にも学生たちがポツリと集まる。
都会の常時混雑する駅にはビビって思わず後退りしてしまうほどだが
僅かな人影が見える駅の風情はとてもいい感じだ。

定刻、たった3人であっても律儀に並ぶホームに列車が進入する。
ダイヤ上では上下線同時到着となるが、ひなびたローカル線でもホンの数秒違いで到着する辺りは
日本の鉄道は時間に正確だと言われる所以だろう。

ゆっくりと乗り込んでいく学生たち。
おはよう!
同級生や先輩後輩の顔を見つけては、そんな声が車内で飛び交っているはずの列車を見送る。


みんな、いってらっしゃい…。




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  1. 2019/07/28(日) 00:03:17|
  2. 石北本線
  3. | コメント:0

高原に眠る

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小海線 清里駅


深夜の八ヶ岳山麓、清里は肌寒かった。
夏でこれなら冬は推して知るべし高原の地にC56は眠る。
かつての保存先では見る影もなく荒れ果て、その後外見をきれいに修復して今に至るが
今再び荒れ始めた姿が痛々しい。
人目に付く駅前という立地でありながら手入れもされずにいるというのも街のイメージによろしくない。

鉄道発祥の地英国では廃線となった土地を買い戻し、線路を敷き直し、車輛を整備し走らせるお国だ。
その路線は数多く、中には運行も昔ながらの手法を採り、駅員も信号係も機関士も、全て愛好家で行う所もあるという。
好きな者が集まって役割をこなすから事故も皆無というから驚きだ。
保存してある機関車を復活させるのが精一杯の我が国では及びもせず、
蒸気機関車を新製までして本線を走らせる英国とは雲梯の差だ。
価値観が違うとはいえ、古いものも大事にし、過去のものを遺産として捉える文化を少しは見習いたいものだ。




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  1. 2019/07/26(金) 22:59:46|
  2. 廃線・保存機
  3. | コメント:0

年輪

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秩父鉄道 波久礼    2013年7月撮影


汗ばむ体、蝉時雨…少し疲れた体を引きずって家へと帰る夏の道。
プラットホームにそよと吹く風は頬をすり抜け夏花を揺らした。

山峡に汽車の汽笛が木霊して足を止めて振り返る。
紫煙が見えると呟いた。
汽車が来た!
小さな駅を通過して、地響き立てて近付く黒い巨体。
視界いっぱいに転がる見上げる動輪。
ガラン、ガランとゆっくり動くロッドは少年には仰け反るほど圧倒的だ。

軽やかな二軸のリズムが線路を叩いて遠ざかり、虫取網を持ったまま、魂を抜き取られたかのように立ちすくむ。
列車の上に吹き上がる煙が空に向かって薄くなり、やがて消えて我に返った。

スゲー、かっちょいい、行っちゃった…
少年の胸に込み上げた言いようのない感情。

汽車だけではきっと心は揺さぶられない。
蝉の声、蒸した景色、流れる汗や草ひとつ、それら夏の匂いと共に心は動き、僕の年輪に刻まれた。




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  1. 2019/07/21(日) 16:54:39|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:0

桐の花散る頃

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飯山線 西大滝~桑名川    2019年6月撮影


この道を行けばどこに行くんだろう、どんな景色があるんだろう…
時刻表の路線図を見て、沿線の景色に胸を膨らませた少年期のような思いで突っ込んだ道の先にあった紫。
終わりかけということもあり、見ている間にも花がハラリハラリと散っていく。
風が吹けば一気に落ちそうな勢いに、やって来た列車も花を落とさないようにと気を遣い、忍び足で鉄橋を渡っていく。
緑は深みを増し、これから夏へと向かうというのに
蔓が巻き付き荒れ気味の桐の木には、かつて活気のあった頃の村の匂いはなく
残った僅かな人の気配がする少し寂しげ色をした桐の花だった。




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  1. 2019/07/16(火) 03:21:17|
  2. 飯山線
  3. | コメント:0

素朴

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飯山線 替佐~蓮


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替佐~蓮


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上境~上桑名川


アップダウンと急曲線を繰り返す飯山線。
新参者の北陸新幹線を余所に、なにもスピードだけが全てじゃないと言いたげに
田舎の汽車はのんびり走る。

せっかく旅に出たのにスマホばかり弄って
ただ美味い物を食って
ただ撮影することだけに夢中になって
目の前に広がる風景に目もくれず、移動中も必死にモニターを見て
今、それをここですべきこと?
もっといい所を見逃してない?
肌で土地の匂いを感じてる?
一体、君はここへ何しに来たの?

川を見て、里を見て、緑を見て…
流れる景色は観光地の目を見張るような絶景ではないけれど
なんでも揃う街のような便利さはないけれど
そこに暮らす人の営みに豊かさってなんだろう、なんて思わさる。

もっと純粋に、もっとシンプルに…
旅に出たなら余計なものは背負わずに、田舎の列車を見送りつつ土地の匂いを感じていたい。




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  1. 2019/07/14(日) 03:00:35|
  2. 飯山線
  3. | コメント:0

幻走



飯山線 戸狩野沢温泉~信濃平


ハスクバーナというバイクのメーカーがある。
ドイツのBMW、オーストリアのKTM(決してカツミ模型ではない)と並ぶスウェーデンのバイクメーカーのひとつで
チェーンソーや草刈り機などの造園機器メーカーといえば分かる方もいらっしゃるかもしれない。
現在、バイク部門は先のKTM傘下となってしまったが、古くからのオフロードバイク老舗メーカーである。
以前、そこのプロモーションビデオのひとつに道無き山岳地帯を走るものがあった。
その中に、森を抜けたライダーが新たなルートを探しながら走るというシーンで
湖畔に影を落として水鏡となった姿だけを追う幻想的な映像があった。

先日成す術もなく終わった薄明時の水鏡。
そうだ、あのビデオのパクリをしてみようと再び水際に立った。
畔の至る所でゲコゲコと鳴く蛙の声を掻き分けて、影を落とした列車が走り去る。
ファインダーに映し出された水鏡だけの世界で見送った光景は幻を見ているようだった。
鏡に映る現象を鏡映反転というらしいが、ならば撮った画像を更に反転してしまおう。
本当の世界ならば左右逆なのだけど、
そうした風景をオタマジャクシは水中からこんな風に外の世界が見えているのかしら…。




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  1. 2019/07/07(日) 06:37:34|
  2. 飯山線
  3. | コメント:0

夢のあと

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飯山線 桑名川~上桑名川


神社の境内は子供の頃の遊び場のひとつで、お寺さんより身近に感じていた。
当時は地元の小さな神社でも、お祭りになると屋台がズラリと並び、
いかにも、といったヤクザのテキヤも来ていて活気があったものだ。
寅さんならぬ洒落と語呂を合わせた口調でまやかし物の売をする…
子供には啖呵売の意味が分からなくても調子のいい口上はお囃子に合っていたと思うし
楽しい雰囲気に乗って客はそれを承知で買うのも祭りのリズムであったように思う。
一夜明けると祭りの後とはよく言ったもので、あのガランとした寂しさは夢から覚めたようで何とも言えない感情が込み上げたが
それもまたすぐに忘れ、子供たちの遊び場となる日常に戻って行った。

古い神社がある路地を曲がると道の真ん中で村の子たちが遊んでいた。
若いお母さんが申し訳なさそうに会釈して子供たちを避けさせる。
余所者が村をお邪魔するのだからとこちらが申し訳ない思いで会釈を返す。

台輪と控え柱のある木造の鳥居は神額に諏訪大明神とあった。
拝殿も古いながら立派なもので、後で調べてみると無形民族文化財に指定されている祭りがあるという。
だからという訳ではないが、どことなく宿る空気はより厳かで身が引き締まる思いだった。
そんな伝統ある神事が残る神社と、地元のしょっぱい神社と比較するのはおこがましいけれど…
昭和の頃なら参道にテキヤの屋台が並んだのではないだろうか。
道で遊ぶ村の子たちを見ていたら、なんとなくそんな風に思ったのだ。

信州信濃の新ソバよりも、あたしゃあんたのソバがいい。
あんた百までわしゃ九十九まで、共にシラミの集るまでってやつ!!
頭に浮かんだ売をする威勢のいい声を列車の音がかき消して、いつの間にか子供たちの姿も消えていた。
西に傾く陽の光…
静かに沈みゆく境内は祭りの後のような寂しさが押し寄せていた。




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  1. 2019/07/01(月) 08:05:14|
  2. 飯山線
  3. | コメント:0

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当ブログは写真ブログではなく、あくまでも日記の立ち位置のつもりでいます。写真は落書き代わりのいい加減なものですので、予めご了承下さい(´▽`;)ゞ

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