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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

旅人(たびにん)

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大道三軒軒下三寸借り受けましての渡世、わたくし野中の一本杉にござんす・・・

江戸川の畔で眺めを見て、寅さんが故郷柴又へ帰って来るお馴染みとんがり帽子の取水塔のある風景。
水戸街道の車の往来や常磐線の長編成の列車などの存在すら霞む見晴らしの良い風景だ。
東京でありながらここでは喧騒を忘れさせ、寅さんが懐かしんで帰って来るのも頷ける。
そして意外にも東京の冬の空は蒼く澄んでいることに気付かされる。



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薄焼きと唐辛子の煎餅をかじりながら、団子屋さん佃煮屋さんなど参道お馴染みの店が並ぶ門前町を歩く。
威勢のいい声が響く気忙しい年の瀬の中、子供の頃に嗅いだ懐かしい匂いを思い出していた。

慌ただしく人が行き交う師走の街…
関東に散らばった親戚が待ち合わせ場所に集まって来る。
毎年幹事持ち回りで行われた忘年会。
良く会う顔、久し振りに会う顔がほころび、時間はあっという間に過ぎていく。
団欒の一時が終わりに近付く気配を子供ながらに感じとり、キュッと胸を締め付ける寂しさ…
外へ出ると日は陰り、関東特有の空っ風が渦を巻いて吹き抜けた。
櫛の歯がひとつ、またひとつと欠けていくように
集まった親戚はそれぞれに散り、またねの言葉を以て別れを告げた。



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いよいよ年が押し迫った街は、それまでの喧騒から水を打ったように静かになる。
あれほど賑やかだったのに、煩いほど、毛嫌いするほどごちゃごちゃしてたのに窓を叩く風の音がやたらと耳を突く。
それは忘年会が終わり、親戚が帰るべき場所に帰っていく後ろ姿を見送る切なさに似て…。



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柴又を舞台にした「男はつらいよ」という映画は、ただの喜劇、女に惚れて振られて旅に出るだけじゃなく
恐らく多くの人が、どこか身に覚えのあるあの時嗅いだ懐かしい匂いが描かれていて
寅さんはそこを旅しているように僕には見える。



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今年も災害が多い年であった。
そして福島第一原発では放射能で汚染された水をどうするかで揉めている。
人体に影響がないほど希釈して…
だったらあんた等の家にでも撒いてくれ、影響ないんだろ?と言いたいところだ。
そもそもその言葉は原発建設の際、地元説明会で散々繰り返していた言葉でなかったか。
絶対安全、安全には二重三重の、万が一事故があっても影響はないとあれほど言っていたことが呆気なく崩れ
それをいとも簡単に想定外の一言で覆す。
福島の知人の畑の地中には、捨て場所がない汚染された土を埋めさせられている。
深く掘るから人体には影響がないが常套句、どうせ野菜など売り物にならんし、
自分等に影響が出る頃には死ぬ歳だからと諦めてしまっている。
オリンピックと騒ぐ前に忘れてやしませんか?が彼らの本音だ。
人が住めなくなる、住んでいけなくなるものを、安全、クリーン、地球に優しいだのと取って付けたように並べては進め
何かあれば想定外、人体に影響なし。
温暖化にしても同じことが言えるだろうに、せめて来年こそは穏やかな年であるよう祈りたい。
そして決して裕福にならなくていい、豊かでありたいというのが通年の願いだ。寅さんのように…ね。



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京成電鉄金町線 柴又


柴又駅に電車が入って来る。
困ったことがあったらな、風に向かって俺の名前を呼べと云った寅さんが
久し振りに、本当に久し振りに帰って来たというのにまた旅に出る。

ヤなことばっかり続いたかもしれないけどよ、
人間生きてりゃ何べんか「あぁ、生まれて来てよかったな」って思う時があるじゃない。
その内、またそんなことを思う時が来るよ。
んじゃあな。

寅さん、あなたの言葉を信じて新しい年を迎えます。
皆さまも、どうぞよいお年をお迎え下さい。
今年も「笛の音(ね)響けば」をご笑覧下さり、ありがとうございました。




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  1. 2019/12/29(日) 23:28:19|
  2. ご挨拶
  3. | コメント:2

誇り滲ませ



大井川鐵道 千頭    2018年12月撮影


終着駅に着き、お客さんを降ろす。
機関車の前で記念撮影する人たち、それに応える機関士さん。
思い思いのポーズをとり、その表情は皆笑顔だ。

一息付いたのも束の間、これから機回し作業が始まる。
転轍機を切り替え進路オーライ。
複数の目が行く手を凝視し操車係の誘導に従う。
単純な作業だが、一連の捌き具合は鉄道業に勤しむ鉄道員(ぽっぽや)の誇りが感じられた。

冬の弱々しい陽光に機関車の吐息が纏わりつく。
復路に向けて先ずは転車だ。




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  1. 2019/12/20(金) 01:25:49|
  2. 大井川鐵道
  3. | コメント:0

師走の光



大井川鐵道 駿河徳山    2018年12月撮影


田舎の駅で汽車を待つ。
改札口から流れ込む山の冷気に襟を立て
窓辺の日差しに寄りかかる。
その優しさに、その温かさに
いつしかスーッと意識が遠退いた。

チン・チン・チン…
踏切の、時々乱れる鐘の音。
いつまでも取っておきたい昭和の音。
これに乗らなきゃと思っても
包み込む日差しと懐かしい音が心地よくて動けない。

轍輪の軋む音がして、やがて発車のベルが鳴る…
ベル?発車??とハッとして目を開けた。
駅舎に差し込んだ師走の光は夢の続きそのままで
追憶の旅路を巡らせた。




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  1. 2019/12/17(火) 18:04:32|
  2. 駅・設備
  3. | コメント:0

暮らしの煙

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真岡鐡道 笹原田~市塙    2012年12月撮影


冬枯れの景色に、ふと目に飛び込んで来た光景。
屋敷林に守られた家の先から紫煙が上がる。

古くから害虫駆除や翌年の肥やしとして行われてきた野焼き。
今では廃棄物法でむやみに出来ないものになっているのだとか。
農地から宅地へと進み、煙たいだの臭いだの苦情が相次ぐとかで「何だかなぁ」と思うのは僕だけか。

晩秋の出羽路、飛騨路、信濃路で
各地で幾度となく刈り取られた田圃から見た光景。
煙はスーッと真っ直ぐ空に立ち、ある高さで折れ曲がって拡散されて消えていく。
畔の脇に腰掛け、何も考えずに眺めていると家路に急ぐ少年の姿。
少しくすんだ夕空に夕飯の支度が忙しい家庭の音が吸い込まれていった。
その情景に込み上げた郷愁感…
あぁ、日本ってなんて素敵なんだろうとその都度思わされた。

遠い記憶の景色と目の前の景色が交差する中、小さな田舎っぺ機関車C12が往く。
迫力ある煙も力強いドラフト音もないけれど、暮らしの向こうにある汽車の姿は自然体で
僕が一番親しみを覚える瞬間だ。




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  1. 2019/12/12(木) 00:34:10|
  2. 真岡鐡道
  3. | コメント:2

寅さんがいるような…

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山口線 徳佐~船平山    2016年11月撮影


師走。
今年の年末、寅さんが帰って来る。
巷じゃ、主題歌の桑田はないだろとか、渥美清はもう亡くなって久しいのに寅さんじゃないだろとか色々言われてるが
観てみない事には何とも言えるものじゃない。
そういう自分もどうなんだろうと不安な所もあるが、ここは純粋に楽しみに待っていようと思っている。

寅さんは子供の頃から大好きで、「寅さんのような旅がしたい」とずっと思っていた。
旅往くシーンの一コマに出てくる懐かしい日常の風景。
そこにポッと現れる鉄道の数々。
シリーズ初期の頃はよく蒸気機関車が出て来ていた。
久大本線D60、函館本線や中央西線、山陰本線や伯備線のD51、石北本線C58、只見線小出口や大井川鐡道のC11…
よくある鉄道写真のそれではなく、生活の片隅に誰もが意識することなく見ていた景色に彼らはいた。
気動車や電車においても然り、そこに列車がなくても駅や線路だったりと、それが今でも僕に影響し続けている。

晩秋の徳佐に降りた時、田畑に逆らうことなく自然に曲がりくねった小道と残り柿に
向こうから寅さんがやってきそうだとふと思った。
本当はC57をこんな風に撮りたいと思うのだが、踏切に続く小道は多くのカメラの放列が出来てしまう。
いやいや、ここは蒸機ではなく、日常の片隅とならば普段着の列車の方がいい。
しかし撮ってから気付いたというお粗末振りだが、列車に柿の枝が被ってしまった失敗作。
やっちまった、せっかくここまで来たのにと悔やみに悔やんだ。
それでも…
寅さんがいるような風景としてならば、これはこれでもいいのかな、なんて思うこの頃。

よ、写真屋さん、いいのが撮れたかい?あんたもご苦労なこったな。じゃ、あばよ。
なんて寅さんが言ってきそうな、そんな風景だった。




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  1. 2019/12/05(木) 18:32:26|
  2. 山口線
  3. | コメント:0

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当ブログは写真ブログではなく、あくまでも日記の立ち位置のつもりでいます。写真は落書き代わりのいい加減なものですので、予めご了承下さい(´▽`;)ゞ

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