笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

若草香る秩父路に

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秩父鉄道 和銅黒谷~武州原谷(貨)    2013年4月撮影


春である。
蒸気煙中毒者にとってシーズン到来、煙春である。
18日から秩父鉄道や肥薩線、19日から山口線でと各地で2017年の蒸気運行が始まった。

今年は冬の湿原号牽引機のC11が思わぬことで運行中止となり、全くの不完全燃焼で終わってしまった。
欲求不満のまま各地のシーズン到来に、羨ましくて身体が震える思いというのが正直な気持ちだ。


数年前、仕事の都合で東京にいた際に、職場があった浦和から夜勤明けのまま秩父鉄道へと向かったりしたものだった。
今も大して変わり映えしないが、大好きな蒸気機関車をただ闇雲にシャッターを切るだけで幸せな気分だった。

若草が香る少し汗ばむくらいの線路端。
撮影場所を探してウロウロしていると、ご近所さんからの帰りだといういかにも田舎のおばちゃんといった体の方に声を掛けられた。
秩父は黒谷で生まれ育ち、川で遊んだこと、時代と共に移り変わる沿線のこと、子供や孫たちのこと…
様々な話に時間も経つのを忘れて聞いていた。

あら、邪魔してごめんなさい。SLが来ちゃうわね。

そう言って立ち去ろうとされた時、何時に来るのかと尋ねられ答えると
私も久しぶりに見ていこうかしらと結局撮影場所はそこになってしまった。

汽笛がポーっといい感じで聞こえ、もうそれだけで満足感が湧いてくる。
ドレンを切って和銅黒谷の構内を抜け、勾配への助走とはいえ秩父にしては珍しく煙を吐いてやって来る。

わぁ、すごいすごい!

まるで子供に返ったかのようなおばちゃんの声。
おっさんとおばちゃん二人に手を振られ、少しニヤッとしたかのようなC58がポッと応えてくれた。
幾つになっても汽車が来て、機関士さんや乗客と笑顔で手を振り合うことはどこか嬉しい気持ちにさせられる。

おばちゃんは大満足だったらしく、また汽車が来たら見送ってあげようと満面の笑みだった。
せっかく写真撮りに来たのにほんとにごめんなさいねと謝っておられたが
僕には春のように、とてもほのぼのと和ませて頂いた時間として今も心に残っている。




テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2017/03/20(月) 13:29:12|
  2. 秩父鉄道
  3. | コメント:2
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コメント

いつもながら

素晴らしいエピソードをご紹介いただき、ありがとうございます。
こんな出会いがあれば、撮影冥利に尽きるというもの。
  1. 2017/03/21(火) 09:27:07 |
  2. URL |
  3. マイオ #pcU4xDNY
  4. [ 編集 ]

マイオさん。
コメントありがとうございます。

若い頃はこのように話しかけられても大した腕もないのに一人で集中させてよ的な態度をとっていましたが、なんと失礼なことだったかと思います。
歳を重ね、人に声を掛けてもらえるありがたさ、そしてそれが後々撮影以外のことに対してどれほど尊いものかと思えるようになりました。
最低限のマナーすら守れず人に不快な思いをさせてもそこには何も生まれない、そんなことも分からなかった当時の自分が恥ずかしく思います。

人との出会いは大切に、謙虚さを持って撮影なり旅なりを続けていきたいと思っています。




  1. 2017/03/22(水) 11:53:25 |
  2. URL |
  3. u403tsugaru #-
  4. [ 編集 ]

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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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