笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

夏の夜に

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石北本線 緋牛内


おい!車、出れんくなるぞ!
玄関のチャイムが鳴り隣の農家さんの声で夜勤明けで寝ていた体を起こされた。
一体何事かと見れば家の横は泥水の濁流となっている。
既に地面も抉られているのであろう濁流に、車の片輪は飲まれて少し傾いていた。
急いで車をD型(農業倉庫)に入れ、改めて辺りを見ると家の前の道路も川になっている。
家の横を流れる濁流は、裏の沢が丘の上から流れてきた農作物と雑草によって狭い箇所がせき止められてこちらに溢れ出したものだった。
合羽など来ている余裕もなく、沢に入るのは危険だったがお隣とズブ濡れになりながら懸命に溢れ出る流れを止めた。
記録的短時間大雨情報などという最近よく耳にするものは出るほどのものではなかったが、それでも相当の降りだった。

オホーツク地方は雨に弱く、少し強く降っただけでも畑の土が流される。
元々雨の少ない土地故に仕方がないことだ。
しかし例年以上の台風に見舞われた昨年は別として、いつもなら勢力が衰えたといっても来る台風にここまでなったことはない。
雨が上がった翌日、家の横は深い溝ができ、前の道路は田んぼのようになり厚く土砂が堆積していた。
近所では畑や道の法面が崩れ倒木もあり、通行止めになった箇所もあって避難した家もあったそうだ。

「去年の台風より被害がデカいわ。畑、見に行く気にもなれんわ」

麦の収穫まであと少し。
昨日まで立派に立っていた麦はあちこちで無残に倒れ、畑は水田のようになっていた。


明け、休み、夜勤前と流れた土砂をネコに積み一人で何往復も運んで溝を埋めて整地をし
道路清掃車など来ない僻地故、重たい土砂をスコップですくっては投げを繰り返す日々だった。
ショベルカーなど使えば半日も掛からぬ復旧作業も人一人の力で行うとなると無力に近い。
そしてようやくブログも更新できるに至った訳だが、先日の北九州北部など大雨による大災害を見るにつけ、
あれほどの人と重機を投入してもいつ終わるやとも知れぬ復旧作業と暮らす方々の苦労が偲ばれる。


そんなことで久しぶりに撮影…といっても仕事帰りに少し寄っただけのもの。
まるで信州の高原地帯であるかのような涼しい夜、腕時計を見ると最終列車に間に合いそうだと緋牛内の駅を訪れた。
本州ならば今頃は様々な夏の夜虫が鳴いているはずだが、北の外れの土地ではその数の少なさに寂しく思う。
待合室の扉を開けると、足元にカブトムシの小さめのメスかと思いきやミヤマクワガタのメスが裏返っていた。
ほれほれと指を添えるとむんずとしがみつき、近場の枝に指を持って行くと体をUターンさせ手の甲へと下がってくる。
モソモソと痛いようなくすぐったいような感覚に、それでもやはり夏の夜なのだと実感させられた。

遠く列車の音が聞こえては消えを繰り返す。
向こうの踏切が鳴る、駅の列車接近の警報が鳴る…。
煌々と闇を裂くヘッドライトが見え、ピーッと夜汽車の声が静かな集落に響く。
砂利敷きと夏草に覆われたローカルなプラットホームを駆け抜け再び闇へと去っていく後ろ姿に、
夜汽車ならではの独特な旅情を感じざるを得なかった。

この先の停車は美幌、女満別、そして旅路の果ての終着駅網走である。





遅れ馳せながら、大雨によって被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。


テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2017/07/26(水) 17:57:36|
  2. 石北本線
  3. | コメント:6
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コメント

いつも楽しみに読ませて貰ってます。

最近はニュースをほとんど見てなかったのですが、大変な事になってたんですね。
ブログの更新がされていなかったので、旅にでも出られていたのかと思っていたら・・・

早く復興されることを願ってます!
  1. 2017/07/26(水) 23:53:39 |
  2. URL |
  3. rrr #-
  4. [ 編集 ]

お見舞い

東京では九州についで秋田のニュースは大きく報じられましたが、北海道の豪雨は知りませんでした。
たいへんな災難でしたね。お疲れさまでした。
農家はいつも自然との闘い。都会人にはわからないご苦労も多々あるかと思いますが、これからは台風シーズン。十分にお気をつけください。
  1. 2017/07/26(水) 23:54:48 |
  2. URL |
  3. まこべえ #2XsKFzVg
  4. [ 編集 ]

お疲れさまでした

大変なことになってたんですね。
九州の水害ばかり報道されて、北海道での被害は初めて知りました。
でも、ようやくブログ更新できる状況に戻って良かったです。
そんな時に使用カメラの不安をあおるような記事を掲載してしまい、申し訳ありませんでした。
  1. 2017/07/27(木) 08:37:20 |
  2. URL |
  3. マイオ #pcU4xDNY
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

rrrさん、コメント下さりありがとうございます。
いつも駄文と駄作が続く当ブログに対し、そう仰って頂けて嬉しく思います。

ニュースに報道されるほどの大雨でもなく(それでも相当な降りでしたが)、
また被害も極限られた地域でのものだったようです。
私の住む地区の隣りの地区では大雨だったもののこのような被害はなく
そんなに酷かったの?と逆に驚かれました(汗)(笑)
違う地区でも被害はあったかもしれませんが、ご近所さんの情報によるとウチの地区が酷かったようです。
我が家の敷地内や前の道路の土砂の処分は終わり身体中が痛いです(笑)
ご心配をお掛けしたようで申し訳ありませんでした。

どこかスカッと旅立ちたいものです…(笑)


  1. 2017/07/27(木) 22:52:54 |
  2. URL |
  3. u403tsugaru #-
  4. [ 編集 ]

Re: お見舞い

まこべえさん、コメント頂きありがとうございます。

これは私の記事の書き方が悪かったですね。
北海道に住んでから今まで見たこともないほどの大雨ではありましたが、北九州や秋田でのようなあそこまでのものではなく
余計な心配をさせてしまったようで大変申し訳なく思います。

自然を相手にする農家さんは多少の土砂が崩れようが物が壊れようが、翌日には自分たちですぐに直してしまう行動力と逞しさがあります。
それでも畑の法面が崩れた箇所では未だに復旧はされておらず、他にやらなければならないものもあるのでしょう。
明日の予報は午後から雨。お隣の農家さんでは被害は麦だけでなく、乾ききっていないジャガイモ畑では病気や腐れの発生が多いとのことで、「もうしばらくは雨はいらない」と嘆いておりました。

ご心配下さり、ありがとうございました。
  1. 2017/07/27(木) 23:30:51 |
  2. URL |
  3. u403tsugaru #-
  4. [ 編集 ]

Re: お疲れさまでした

マイオさん、コメント下さりありがとうございます。

あの北九州での大災害には程遠く、報道されるほどのレベルではありませんでした。
それでも、家の横に流れる濁流を見て「なんだこれは!!」と呆然と立ちすくむだけで、すぐに次の行動に移るということが出来ないほどの大雨でもありました。
一体被災された方々はどれほど怖かったことかと思わされました。
我が家での復旧は取りあえず終わりました。
余計な心配をさせてしまったようで、本当に申し訳ありません。

> 使用カメラの不安をあおるような
いえいえ、とんでもありません。
友人も爆発してますし、私のもいつ爆発するかと覚悟しながら使用しております(笑)
代用品や対策などございましたらお教え頂くと助かります。

  1. 2017/07/27(木) 23:51:27 |
  2. URL |
  3. u403tsugaru #-
  4. [ 編集 ]

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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
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