笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

犠牲者の下に

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前回金華信号場を訪れてから数日後、僕は再びそこにいた。
家を出る頃は時折薄日が差す空模様であったが、西の方角を見ると少し厚い雲に覆われている。

「ひょっとしたら雨が降っているかもしれない」

そう思った僕は迷わず金華に向かっていた。
着けば霧雨が降っていて、静かな山の信号場はもの悲しささえ感じるほどだった。


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石北本線 金華信号場


幼い頃、時々まだ知らぬ寝台列車に見立てて押し入れの中で寝かせてもらうことがあった。
ある日、親父が蒸気機関車のLPレコードを買ってきて寝る時にかけてくれた。
より寝台列車の気分を演出してくれたスピーカーから流れる汽車の音に、幼い僕はその気分に浸りながら眠りについていたものだった。ただひとつの音を除いて…。
その音の収録先は写真誌などで必ずといっていいほど目にしていた常紋峠であった。
峠に挑むD51444は力強さと迫力をもって去っていくが、静けさを取り戻した峠に鳴く夜鷹とトラツグミの鳴き声に、幼いながらもどこか不気味さを感じていた。

その後、常紋峠は心霊スポットで有名な曰く付きの場所だと知る。
霊的なものを信じるか信じないかは別として、友人に連れられ初めて常紋トンネルの上を走る細い林道にバイクで行った際は怖いというよりむしろ哀しい感じがした。

大正3年に開通した常紋トンネルはタコ部屋労働で建設され、その後周辺からは人骨が、トンネルからは人柱も発見されているのはご承知の通りだろう。
当時はどれほど過酷で非情で悲惨だったか、一体どんな思いだったかと犠牲者を偲ばずにはいられない。
何気に乗っている石北線も、普段を過ごす暮らしにもこの犠牲者たちの下にある。

現在、駅舎のかつてのホーム側には殉職者追悼碑への案内板が掲げられたままでいる。
列車を降り、或いは停車中に目にすることもあったであろう案内板も今や駅廃止となり、通過する列車から果たしてどれだけの人が目にしているのだろう。

宵の始まる寂静的ともいえる色となった風景にオホーツクが駆け抜ける。
少しでも知って欲しいとの願いか、照明に照らされ存在を訴える光景が、僕には一際寂しいものに思えてならなかった。




テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2017/08/08(火) 03:37:50|
  2. 石北本線
  3. | コメント:4
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コメント

タコ部屋労働と鎖塚

北見~遠軽 間を毎回往復するときに常紋トンネルを通過するわけだが、タコ部屋労働の話は大学時代に聞いていて、ここを通過する度に心を揺さぶられる。
 北見工大生だった昭和50年頃、学生主催の講演会があり、講演者は当時、北見工業高校教諭の小池喜孝氏だった。
 小池先生は当時「オホーツク民衆史講座」を主催しており、過酷で残虐なタコ部屋労働の実態や網走監獄の囚人を使った道路建設、囚人は足に鎖がはめられており過酷な労働や虐待で亡くなった囚人が鎖を付けたまま道路脇に埋められた実態を話された。
 このオホーツクの今があるのは、このように犠牲になられた方々の上に成り立っていることを知ることが大切であり、そしてこのような事が二度と起こしてはならない様、自分たちがしっかり考えて行動していくことが大事だと訴えておられた。
 小池先生は何冊か著書を残されているが、当時、大学の図書館から借りて読んだ『鎖塚 自由民権と囚人労働の記録』(現代史資料センター出版会)は、当時の状況や囚人労働が詳しく書かれています。
  1. 2017/08/09(水) 09:08:53 |
  2. URL |
  3. ishida #-
  4. [ 編集 ]

Re: タコ部屋労働と鎖塚

ishidaさん、コメントありがとうございます。
本日は長崎、先日は広島と原爆の投下で多くの人々が亡くなりました。戦争で多くの方が亡くなり、そうした犠牲の下に今があります。
しかし戦争だけでなく、特に北海道はこの常紋トンネルの他、旧根北線越川橋梁や旧深名線、ダムや道路建設等々開拓によるタコ部屋労働で多くの命が虫けらのように扱われ犠牲となっています。
仰るようにオホーツクのみならず、自然環境の厳しい北海道での今の暮らしはこれら多くの犠牲があってのもの。
勿論タコ部屋労働だけではなく、先人たちの苦労の下に今がある、そのことを私たちは忘れてはなりませんね。
大学の図書館は確か一般にも貸し出しがされていたと思うので一度読んでみたいと思います。
  1. 2017/08/09(水) 12:13:19 |
  2. URL |
  3. u403tsugaru #-
  4. [ 編集 ]

初めての訪問です。
ブログ、お教え下さってどうもありがとうございました。
相変わらずの旅情を誘う美しい写真がたくさん公開されていて、思わず見惚れてしまいました。
以前の蒸気オンリーだったブログより、むしろ一般には馴染み易くなったかもしれません。
これからもぜひ、素晴らしい記事と写真をたくさんアップして下さい。
応援しています。
  1. 2017/08/13(日) 04:41:31 |
  2. URL |
  3. DR250R #6gblglME
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

DR250Rさん、大変ご無沙汰してしまい、その中でのご訪問並びにコメントをありがとうございます。

昔と比べて自分なりにも捉え方が変わってきたかなと思いますが、それでも他の方のブログなり写真を拝見するとまだまだだな…と思い知らされてばかりいます。
このようなブログですが、お時間がありましたらこれに懲りずまたお越し下さい。
  1. 2017/08/13(日) 17:49:51 |
  2. URL |
  3. u403tsugaru #-
  4. [ 編集 ]

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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
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