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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

遠き山に日は落ちて



肥薩線 大畑~矢岳    2014年10月撮影


小学生の頃、放課後になると決まって流れていた「遠き山に日は落ちて」。
言わずと知れたドヴォルザークの交響曲だが、どこかもの哀しげな旋律に妙に切なくなったものだ。
まだ教室や校庭で遊んでいたい、でも家にも帰りたい…
複雑に揺らぐ胸の中、もう帰りなさいと促す夕日が校舎を染め長い影ができた家路に着く。

旅に出ていると、ふとした拍子に故郷を思わされ、そんな記憶が甦ることがある。

日本三大車窓のひとつ、肥薩線矢岳越え。
矢岳駅を前後に真幸と大畑にスイッチバックがあり、特に大畑はループ線も備わる全国で唯ひとつの駅である。

以前友人とバイクで矢岳の林道を走りに行ったことがある。
人吉盆地を背に山の中を走ると、視界に韓国岳(からくにだけ)を最高峰とした霧島連山の眺めが飛び込んできた。
その雄大な景色に、一度列車に揺られて見てみたい…とそんな思いから久しぶりに訪れた。
吉松から人吉まで乗車して折り返し、どうせここまで来たんだからと大畑で途中下車をした。

車窓は周りの木々が成長し、かつてのような車窓とはかけ離れ、辛うじて眺めがチラリと見えるだけのものであったが、
何度も現役蒸気時代の写真を見てきた地へ降り立ったことにある種の感動を覚えたのも事実だ。
十分に調べて来なかったこともあり、やっとのことでお立ち台を見つけたのは日も暮れかかった時刻だった。
南九州とはいえ10月の夕暮れ時は寒い。
襟を立て首をすくめるように見た町は、薄い雲の狭間から零れた弱々しい光に淡い色となって染まっていた。

突然足元からディーゼル音が飛び出してゆっくりと駅に向かう。
少しして向きを変え、渡り線をゴトゴト渡ると再び向きを変えていく。
車内ではその都度運転士が前に後ろに移動して忙しいことだろう。
列車は日暮れたループ線へとよじ登る。
木立の向こうで喘ぐ音…、郷愁の笛が南国の山々に響き、同時に轍を叩く音も消えていった…。


遠き山に日は落ちて、町は灯りがポツポツ点り出し、その点った元に向かう人がいる。
揺れる車窓の灯りにも家路へ向かう人がいて、山に点々と瞬く灯りの下にも人が帰るべき故郷(いえ)がある。

暮れ往く大畑の風景に、あの頃の、どこか寂しく胸を締め付けるような切なさを思い出し
遠く離れた故郷の尊さをまた教えてもらえた旅だった。




テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2017/11/25(土) 23:00:03|
  2. 肥薩線
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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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