笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

埋もれゆく記憶

西女満別という駅がある。
鉄道防風林と丘に囲まれた静かな無人駅だ。
ホームは短く、気動車二輌編成で精一杯だろう。
それでも一応女満別空港への最寄り駅である。

たまに列車から降りて来る利用客を見かけるが、いつも同じ列車なのでたぶん同じ方だと思う。
空港の利用客なんざよっぽどの物好きしかおらんだろと思っていたが、
昨年、空港から歩いてきたという若い女性がいれば、先日も空港へ向かう男性客の姿があった。
たまたまよっぽどの物好きに出会ったのか、とにかく一応そんな利用客もいるにはいるらしい。

そんな駅であっても鉄道華やかりしの頃は荷物扱いもあったようだ。
現在では質素な待合所がポツンとあるだけだが、昔の駅舎の横にあったのだろうか、朽ちかけた桜の老木がある。
二股に分かれていた幹の右半分は朽ちて、残る幹も半分しか花を付けていなかった。
辺りを見れば当時の構内に沿うように桜が植えられていたのだろうか、今は手入れする人もなく周囲の木々に埋もれるようにして辛うじて花を付けているといった桜も数本あった。
人が管理しなければこれほど荒れてしまうホンの一例だろう。

当時はどんな想いで桜は咲いていたのだろう。
たまに利用客が来て、たまに蒸気機関車の牽く混合列車に荷物を積み下ろし、空いた時間は駅員が草むしりをし、のんびりした時間の中を桜はそんな光景を見ながら駅を見て来たんじゃないだろうか…。
時は流れ無人化となり、手入れしてくれる人もいなく荒れ果てて、今は利用客一人いるかいないかの駅で時代の生き証人は朽ち果てようとしている。
一体どんな想いで今いるのだろうかと少し感傷的になった。

列車が鉄道林に轍を響かせながらやって来て、そして静かに停車した。
ドアが開いて閉まるだけ。
すぐさま発車して、再び鉄道林に轍を響かせ遠のいていった。
質素な待合所と老桜を照らしていた西日は次第に勢いが衰え、カンっという音と共にホームの照明に灯が燈った。



P5122073-10fc.jpg

石北本線 西女満別駅

OLYMPUS OM-D E-M1
M.ZUIKO DIGITAL ED12-40mm F2.8PRO




  1. 2016/05/14(土) 01:20:28|
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