笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

忘れ得ぬ旅

今年も会津に蒸気機関車が帰って来た。
9月の大雨により災害に巻き込まれ不通になっていた只見線。
一時はSL運行もどうなるかと心配したが無事に迎えることが出来たようだ。
今日も秋の美しい会津路を多くの人の笑顔を乗せて走ってくれるに違いない。


昨年の今頃、僕は少し長い旅に出ていた。
旅の締めに訪れた会津地方。
その一年ほど前から久しぶりに会津で汽車を見たいと思っていた。

東北に、蒸気機関車の動画を撮っている友人がいる。
彼は僕と親子ほどの年齢差があるが、その道でも飯を食っていけるとプロからも言われるほど素晴らしい映像作品を公開している。
不思議な縁で知り合った彼と若松で合流し、嬉しいことに汽車の切符も取ってくれ、二日間にわたって乗車と撮影の旅をした。
懐かしい栗色の旧型客車に乗り、宮下で駅弁を買い、川口で彼の顔見知りの機関士さんと話す。
汽車のゆりかごは独特の音色を奏で、黄昏色の会津平の空に旅情が流れる。
宿に着いた頃、僕たちは煤だらけになっていた。

翌日は沿線で撮影をし、いちいち彼と一喜一憂した。
蒸気撮影を何度となく経験していても、遠くから聞こえてくる汽笛に背中がゾクゾクし全身が震えてしまう。
汽車が過ぎたと同時に機材を片付け追っかけをする姿をよく見かけるが、そんな勿体ないこと出来やしない。
蒸気機関車の残してくれた煙の匂いや哀愁漂う後ろ姿、遠ざかる汽笛、そんな残り香をじっくり味わいたいのだ。

美しい奥会津の紅葉の渓谷に郷愁を帯びた汽笛が鳴り響く。
優しい色の会津造りの村を煙がたなびく。

最後に峠を越え、ホッとした表情で街へ帰る汽車を見送りましょう・・・
そう彼の提案で往路なら撮影者でごった返すポイントに立った。
途中の上り勾配で雨に濡れた坂を登れず立ち往生し、定時よりかなり遅れてやって来た会津の汽車。
川口で話してもらった機関士さんがこちらに気付き、残り柿の赤い実が目に染みる光景の中を汽笛を鳴らしてくれながら去って行く。
ポツポツと雨が降る村の灯りが燈り出し、胸から熱いものが込み上げ涙が出そうなほどの郷愁感に、僕たちはただただ無言でその姿が見えなくなっても見送っていた。


あれから一年。
あの感動と郷愁に溢れた旅…、僕は生涯忘れることはないだろう。



PB095320-10(2).jpg

只見線 塔寺~会津坂下




  1. 2015/11/01(日) 00:08:16|
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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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