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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

秋の宗谷本線 響きと共に

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宗谷本線 紋穂内~恩根内


国道40号線から天塩川を渡った所に紋穂内の駅がある。
駅近くの集落は両手で数えきれるほど僅かなものだ。
限界集落なんて言葉が出てきて久しいが、多分ここもそのひとつなんだろう。


若い頃、夕張線川端駅近くに実家を持つ職場の先輩宅に泊めさせてもらったことがある。
当時は先輩も故郷を離れ、東京の同じ職場にいたからご家族とは面識がない。
それでも、せっかく北海道に行くんだから俺ん家に泊まってけよと言う。

「職場のこういう奴が行くからって親に伝えたら、おお、よし来いよし来いと言ってるしよ」

しかしそれはあまりにも厚かまし過ぎやしないかと不安がる僕に、親待ってるからよ、行って来いよと念を押されるようにしてお邪魔した。

周りには一軒も家がないからすぐ分かると言われた先輩の実家は本当にすぐに分かった。
「北の国から」とか古い映画に出てくるような古い家だった。
とはいえ、バイクで林道を走りまくった泥だらけの旅姿に、さぞ嫌な顔をさせるだろうと覚悟して訪ねると
これまた活発そうな、それでいて優しそうなご両親が現れた。

初見の挨拶もそこそこに、
「おお、よく来たよく来た。年寄り二人暮らしだからロクなもん食わせてやれんが、ほんとよく来た」
と暖かく迎えてくれた。
水道は裏山から引いた水が常時流れ、薪ストーブで湯を沸かし、古い暮らしだろと笑う。
部屋に飾ってあった夕張線のデゴイチの写真を見ていると、下手な機関士だと坂を登れんでよ…と当時の話もしてくれた。

心尽くしの夕飯を頂いて風呂場から見た夜空には、満天の星と遠く札幌の街明かりがぼんやり映り、
もの悲しげに夕張川を渡る列車の音が聞こえていた。

周りに人がいなくて寂しくないですかと聞く僕に、ずっとこういう所に住んでるから思ったこともないと言う。

翌日、古い発電所跡のある公園や近くを車で案内してくれ、帰る時には見えなくなるまで見送ってくれた。
振り返り振り返り手を振る先の視界には、古くて小さな家と二人の姿がどんどん、どんどん小さくなる。
別れの言いようのない感情に締め付けられながら、やがて山と広い田畑の景色に飲み込まれていった。

今はご両親も他界され、実家には早期退職した先輩も戻り夫婦で農業を営んでいるが、恐らく先輩の代で終わりだろう。

先人が苦労の上に開拓したあの大地の行く末はどうなってしまうのだろう。

北海道の、こんな地域の景色を見ていると、あの時広い景色に消えていった二人の姿が甦ってくるのだ。
あの暖かさとあの笑顔が、去り往く列車の響きと共に…。




テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2018/10/31(水) 01:01:44|
  2. 宗谷本線
  3. | コメント:0
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見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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