笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

笛の音響けば

秩父鉄道の汽車は「都心から一番近い蒸気機関車」であるが
波久礼辺りから山に囲まれはじめ、秩父・影森を過ぎればいよいよ山も迫る山岳路線になる。
ただ、その割には意外と民家が多く、煙も多いとは言えない。
煙だけを求めた撮影行ならばなかなか厳しい路線ではないだろうか。
それでも古い民家や、また新しい家でもこの地方の風景に違和感のないものも多く、それらから漂う生活感が僕は好きである。

一旦山に入れば細くきつい勾配と曲がりくねった道が続く。
谷は深く、岩は苔生し、湿気のあるひんやりとした空気が身を包む。
若い頃、汽車なんぞそっちのけで何度バイクで山に入り込んだだろう。
山を下り、再び里に出てくる。
と、そこには里で暮らす人々の暮らしの匂いがして、その瞬間は、山でバイクで走るという行為とは別の楽しみのひとつだったように思う。

人は、都会のような街では人ゴミであっても、適度な里の集落ではこれほどいい匂いがするものはない。
そんないい匂いのする里の秩父路に汽車が走れば、たちまち郷愁という名の旅路に連れて行ってくれる。
谷を越え、緑に包まれた山里。
そこに今日もポーッと汽車の笛の音が木霊する。
音色は途端に身体中の細胞ひとつひとつに染みわたり、ブルブルと細かく震え出す。
その瞬間と汽車が見せてくれる光景が大好きで、未だに冷静でいられたことがない。
汽車が来て過ぎ去るまで、短いようで長いような、でもやっぱり短いような夢の中の旅路。
そこから下車した後、僕はしばらくその場から動くことを忘れていた。



P7182594-10fc.jpg

秩父鉄道 武州中川~浦山口

OLYMPUS OM-D E-M1
M.ZUIKO DIGITAL ED12-40mm F2.8PRO




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  1. 2016/08/02(火) 01:44:36|
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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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