笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

夢を乗せて

静態保存機というと、その注目度は動態保存機よりも少ない。
やっぱり蒸気機関車は野を越え山を越え、表情豊かに走る姿がなんといっても素晴らしい。
けれども、時代を駆け抜け今は静かに余生を送る彼らを前にして瞼を閉じると
かつて鉄路に汽笛を響かせ、人を物資を黙々と運び続けてきた彼らの息吹きが感じられ、当時のことを思い馳せずにはいられない。

現在、各地で保存されている静態保存の機関車たち。
梅小路や大宮の鉄道博物館をはじめ、今にも動き出しそうなほど手入れされた機関車もいるが
中には誰にも見向きされずに荒廃し解体された者もいる。
そんな彼らを救うべく、各地の有志らの手によって今一度きれいに修復され再びその勇姿を披露している仲間もいれば
圧縮空気で動けるようになった仲間もいる。

かつて中湧別から網走にかけてサロマ湖やオホーツク沿岸を走る湧網線があった。
はじめてバイクで北海道を旅した時はまだ健在であり、二度目の渡道の際に前回渡った踏切が無くなっているのに衝撃を受けたものだ。
車窓の良さで知られ、国鉄線上から全廃された蒸気機関車が復活するにあたり有力候補路線として名を上げたが
赤字を抱える国鉄としては新幹線での集客を期待し、現在の山口線に決定した。
当時は誠に残念な思いがしたが、今となっては全くやる気のないJR北海道ではとっくに廃止となっていただろうし、これで良かったのだと思う。
それにこの地にC57やC58では沿線風景に似合わない。
なんでも蒸気機関車が走ればそれでいいのではなく、ここはやっぱりリベットも厳めしい大正の名機、9600がお似合いだ。
スピードは全く苦手な機関車ではあるが、ここは逞しい太いボイラーのいかにも北辺の厳しい大地を一歩ずつ、そして確実に進むキューロクこそ相応しい。

そのキューロクが廃線跡の卯原内駅に旧型客車と共に保存されている。
夜に訪れると彼は星空の下で静かに佇んでいた。
屋根もなく塩害が心配されるがそれほど保存状態も悪くなく、在りし日のことを思い出しているようだ。
時折り、すぐ横を走る国道の車のヘッドライトに照らされ浮かび上がる巨体。
彼の横でしゃがみ込み、問いかけるようにじっと姿を見ていると
圧力を上げ発車を今かと待つキューロクが、やがて夜空へ汽笛高らかに轟かせ銀河の旅路に発って行ったような、そんな彼の魂を見た気がした。



P8081560-2-10fc.jpg

旧国鉄湧網線 卯原内駅跡




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  1. 2016/08/16(火) 19:04:59|
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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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