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笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

夕暮れ時の落石三里浜

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根室本線 別当賀~落石    2018年8月撮影


根室半島の付け根に位置し鉄道撮影をする者には有名どころも、「北の国から'95秘密」の方が印象深い落石。
「SL冬の湿原号」を往路のみで済ませ何度か足を運んだが、途中で日は陰り
いずれも自分が思い描くものには程遠く、夏のこの日、出かけていた先で思い付いてのこと。

上りの一本を撮り、約二時間後にやって来る下り列車はどんな案配になるのかと留まった。
同じ場所で同じ景色を飽きることなく眺め、陽が進むにつれて変わる陰影は大きな天然の日時計だ。
その内、海が染まり出すと岬の方からエゾシカの群れが草を食べながら段々と近付いて来る。

大きな群れだった。
時々顔を向け、視線をずらしている間は耳をこちらに向け、一定の距離をとって警戒してはいるものの
彼我の距離はそう離れておらず、ここは我らのテリトリーだという無言の圧力がかかる。
彼らに完全に包囲された頃、下り列車のヘッドライトが向こうに見えてきた。
穏やかに奏でる潮騒は朱く煌めき、散りばめた星屑のように波頭が揺れる。
驚かせることのないよう静かに体勢を整え、静音シャッターに切り替えても向けられる警戒心を感じつつ
一面熊笹に覆われた丘陵の淵を、ゆっくりなぞるように往く汽車は大自然の一部となった。

最果て旅情は風に乗り、くるりと身体を巻いて吹き抜けていく夕暮れ時の落石海岸三里浜。
すっかり「帰りたくない病」と合併症の「来た道と同じはつまらん病」を発症したこともあって
深夜に眠る根釧原野の小さな集落を繋いでは戻り、鹿との激突の方が怖い霧の裏摩周を抜けた後も針路は定まらず。
普通なら片道およそ4時間の道程は倍の8時間をかけ、家に着いたのは早朝3時、廃人同様のまま職場に向かった。



テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2020/08/27(木) 02:07:49|
  2. 根室本線
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