笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

赤い影

列車のテールランプに惹かれるようになったのはいつの頃だろう。
川霧が漂う蒼のしじまに霞むテールランプ…
ススキ揺れる晩秋の旅先で一段と紅みが増した空に消えていくテールランプ…
旅先で見送った様々な列車のテールランプはどれも旅情溢れるシーンとして僕の心に染み付いている。

照明灯が煌々と照らす夜の操車場。
何本もの長く黒い列が組成され、やがて一本また一本と発車していった。
二軸の単調なリズムが続く中、最後に車掌車のぼんやりした灯りが通り過ぎテールランプが去っていく。
鈍く光るレールの上に赤い影を落として、タンタン…タンタン…と次第に轍が遠ざかる。
その音と共に闇に吸い込まれていくあの光景は、何とも言えない哀愁を子供ながらに感じたものだった。

小学生の夏休み、母方の田舎の信州で、親父と近くを流れる夜の川の土手を散歩した。
長野電鉄木島線(現・廃線)の短いオンボロ電車が重たいモーター音を唸らせて駅を発車していく。
日中なら見晴らしの良い山裾のリンゴ畑を車内の白熱灯が寂しげに揺れる。
そのさまを夏草の中で盛んに鳴くジージー虫の声を聞きながらじっと見つめると、やがて左に大きくカーブして赤いテールランプがツーっと糸を引くように消えていった。
その光景を見るのが大好きで、大人になってからも村の夜道を歩いて川の土手に行ったものだった。

それらの光景は僕にとって深い深い印象となって胸の奥に焼き付き、今も去りゆく列車の後姿は特別な想いで見てしまう。
最近ではテールランプはLED化され位置も必ずしも車輛下部とは限らなくなり、レールに落とす赤い影のある無しではその印象も随分と違うものとなった。


すっかり陽も沈んだ石北本線北見地方。
灯る明かりの瞬きは次第に強まり、山の稜線が今にも消えそうな際どい頃に列車がやって来た。
車内の灯りは雫となってこぼれ落ち、二条のレールに赤い影が追いかける。
カタン…カタン…と遠のく轍に、僕はいつか見たあの様々な光景を思い出していた。



PA171824-11fc.jpg

石北本線 緋牛内~端野




  1. 2015/11/18(水) 05:05:08|
  2. 石北本線
  3. | コメント:0
<<亡き祖父と共に | ホーム | 汽車がくれた大切なもの>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (3)
ご挨拶 (3)
只見線 (7)
石北本線 (57)
山口線 (7)
真岡鐡道 (4)
秩父鉄道 (9)
釧網本線 (17)
大井川鐵道 (3)
廃線・保存機 (5)
宗谷本線 (7)
保存鉄道 (6)
釜石線 (1)
陸羽東線 (1)
山陰本線 (3)
雑記 (1)
非鉄・番外編 (2)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる