笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

どうしても

お茶をご馳走になりながら楽しい談笑が続いたあと
奥さんの体調も今一つとのこともあって、列車の時間までは結構あったがお暇することにした。
もう行くのかい?の声に甘えそうになりながら、せっかく来たからちょっと散歩しながら駅に向かいますとお宅を出た。
玄関からお二人に見送られ、また来たら寄りなさいの言葉がこの上なくありがたかった。
旅の別れとはどうしてこれほどまでに切ないものなのだろう。
お元気になられるよう祈りながら駅に着くと、ちょうど単色のキハが駅を発っていった。



PB182930-1fc.jpg


国鉄時代の面影が今なお残る木造の跨線橋を渡る。
なにもなければまず乗り降りすることはないであろう駅を、一人こうして歩く行為は僕にとって旅をより深いものへと変えてくれるようだ。
ホームの先から列車が去っていった方角を見ると、素朴で優しい風景が見送ってくれた。



PB182937-10fc.jpg

山口線 徳佐駅にて



翌朝、旅のもうひとつの目的である再会の相手のシゴナナの1号機。
どこで彼を迎えようかとレンタカーを走らせる。
有名な大山路も視野に入れ直前まで悩んだ末、逆篠と呼ばれる撮影地に向かった。
車では初めての土地であったが、ナビを使うことは古いバイク乗りのつまらない拘りから勘に頼っての走行をするものの
要は線路沿いに出ればいいだけなので、さして苦労なく辿り着くことができた。

深く細い山道と平行に走る線路。
山口線に蒸気機関車が復活してから様々な物語が多くのファンによって撮られてきた。
長らくそれらの秀逸な写真や映像を見てきた僕も、下手ながらもやっとのことでその一員に加われると思うと
高鳴る胸の鼓動を抑えることができなかった。
生憎常連と思しき先客がいて迎えたいポジションは確保できなかったが、
初参者の自分を快く迎え入れてくれ、和気あいあいとした和やかなムードの中で過ごさせて頂いた。

そろそろという頃、皆が耳を澄ましだす。
サミットの向こうに立ち上がるであろう煙を凝視する。
蒸気機関車ならではのこの緊張感がたまらない。
前夜から降っていた雨により、晩秋の峠路をしっとりと風情ある景色に変えてくれていた天気は
シゴナナが来る直前になって光が差し始め、目まぐるしく色が変わる。

露出に頭を悩まされながら、間もなく真っ直ぐに立ち上がる白煙が見えた。
巨大な動輪を持つ急客機ならではのゆっくりしたドラフトを響かせ急坂を登ってきたC57の1号機。
その勇姿はただただひたすらにかっこよく、全身ありとあらゆる関節の音がするほど震えっぱなしだった。


どうしてもね、君に会いたかったんだよ。



PB192971-10(3)fc

山口線 仁保~篠目




テーマ:写真日記 - ジャンル:日記

  1. 2016/12/21(水) 22:12:05|
  2. 山口線
  3. | コメント:0
<<友と蒸気機関車と | ホーム | 徳佐へ>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (3)
ご挨拶 (3)
只見線 (7)
石北本線 (57)
山口線 (7)
真岡鐡道 (4)
秩父鉄道 (9)
釧網本線 (17)
大井川鐵道 (3)
廃線・保存機 (5)
宗谷本線 (7)
保存鉄道 (6)
釜石線 (1)
陸羽東線 (1)
山陰本線 (3)
雑記 (1)
非鉄・番外編 (2)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる