笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

宵迫る峠

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石北本線 緋牛内~美幌


師走に入り、いよいよ本格的な冬の様相を帯びてきた北見地方。
この日の朝、ついに-20℃を下回った。
こうなるともう諦めがつき、寒冷地ならではの風景を楽しむしかない。
雪は結晶のまま積もり、視線を移すたびにキラキラと輝く。
ダイヤモンドダストや霧氷なども極寒の土地ならではの美しさだ。

そんな朝の風景をと家を出てみたものの場所の選択を誤り、ならばとかねてから思っていた丘に登ることにした。
実は雪が融けた頃にバイクで向かったことかあるのだが、既に自然に還りつつある道はとても走れる状態ではなかった。
かといって歩くといってもダニだらけの藪を漕いで行く度胸もなく、雪が降ってからかな…とその時を待っていた。

飲料オーライ、冬装備をして森に突入する。
雪に埋もれた雑草に足をとられ、まだ凍結していない沢を跨ぐようにあった倒木の上を恐々渡り、
平らだと思えばいきなり腰まで埋まる道なき道を進んで、息も絶え絶えようやく登った丘の上からは
短いながらも美幌と緋牛内に跨がる峠路を見ることが出来た。

午前中に登って列車を数本撮って降りようなんて思っていたが、初めて見る景色に
ここの夕暮れはどうなんだろう…と結局日没まで丘の上にいた。
日没となった冬の山地は途端に厳しさを増した冷気が身体を突き抜けていく。
冷え冷えとした色に変わっていく峠を、暗くなる前に早く下りなきゃと大雪1号が駆け抜ける。

こちらもまごまごしていられない。
完全に日が暮れるまでに丘を降りなければ薄暗くなった森の中で自分の足跡を見失うかもしれない。
同業者にお疲れさまでしたと告げて引き上げるように、丘の神さまに声を掛けて急いで降り、
車に辿り着いた頃には星が瞬き始めていた。




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  1. 2017/12/08(金) 23:11:29|
  2. 石北本線
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忍び寄る冬

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石北本線 美幌~緋牛内


一昨日辺りから北日本の日本海側を中心に雪となり、北見地方も銀世界となった。
オホーツク海側は大雪の山々が遮蔽となり雪は比較的少ない。
それでももうこの時期の雪は不思議ではないが、今朝の冷え込みはさすがに堪えた。
-16℃…。
真冬ならともかく、まだ11月半ばでこの気温というのは僕が北海道に来てからちょっと記憶にない。

同じ気温でも雪の有る無しによって感じる寒さも随分と違う。
なぜか雪のある方が寒さを感じないのは、恐らく雪があれば寒いのは当たり前という思いからくるものなのかな…なんて思っている。
とはいえ、いきなり-16℃は体も慣れてなく寒さがとことん嫌いな僕には
ひたすら歯を食い縛って寒いと言葉にすることも出来なかった。

森に行けば葉が落ちて寒々としていた風景が一変していた。
キーンと透き通った空気が細かく震えて列車の接近を報せると、
すっかり寒さに縮んだ線路の上をステンレスの車体も冷たげに姿を現した。
凍てついた前面は昨夜の雪の行路を偲ばせる。
突き刺すような風雪に耐えながら、町を繋ぎ人々を運んだのだろう。

好きで列車を待ってるとはいえ、指先は痛く耳は千切れるばかりの冷たさだ。
列車にとっても、この地で暮らす者にとっても、厳しい季節がもうすぐそこまでやって来ている。




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  1. 2017/11/20(月) 23:05:40|
  2. 石北本線
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石北の雄

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石北本線 北見


石北本線の名物列車といえば、夏の終わりから春にかけて走る臨貨、通称タマネギ列車だろう。
日本一の生産量を誇る北見地方のタマネギをはじめとした農産物を貨物列車で一気に運ぶ。
臨時とはいえ、本線筋を地響きを立てながら大地を疾駆する姿は圧巻以外の何物でもない。

列車の組成を終え、夜の帳が降りる構内に長編成の貨物列車がどうだ!とばかりに佇む光景は、
普段短いローカル列車しか発着しない駅を一際華やかなものへと変えていた。
北見国から石狩国に至るまで、二つの険しい峠に備えて後部補機の機関車が唸るようにエンジンをアイドルさせている。
DF200という機関車は正直言って好きな車輛ではないが、それでも機関車ならではの存在感は抜群だ。
重い貨物をグイと押し上げ、低い姿勢で行く手を睨むその様は北の頂点に君臨するヒグマの如し、まさに石北の雄である。

かつては往復3本あった貨物スジも現在は1往復が残るのみ。
片道は空荷で機関車も2輌要することからJRとしては廃止したいらしい。
鉄道が本来持つ大量輸送のシーンがオホーツク管内で見られるのは果たしていつまでなのだろう。
この逞しき機関車と重厚な貨物列車が、今後も末永く運行されることを願って止まないでいる。




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  1. 2017/11/14(火) 19:37:48|
  2. 石北本線
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初冬の境内にて



石北本線 緋牛内~美幌    


雲の切れ目から差し込む陽が、ストーブの温かさにすっかり頼り切っていた部屋を弱々しく照らす。
どうという訳ではないけれど、なぜか自然と神社に足が向いた。

既に何度か雪が降っている北見地方。
降っては融けを繰り返し、やがて本格的な冬がやって来る。
雪が降ると「来ちゃったねぇ」という言葉が挨拶代わりだ。
公園等では雪囲いも済み、農家さんは今年の締めとなるビートの収穫に忙しい。

もうそろそろ年末かぁ…
まだ少し早い気もするが、行った場所のこともあったのだろう。
山も畑も色に乏しく、人も大地も冬備えをしている光景にそんなことを思っていた。

落ち葉を踏みしめる感触が否が応でも秋が終わったことを報せれば、それは同時に冬の訪れを報せる道標のようでもある。
振り向くと前日に降った雪が残る大地を列車が走って行った。
黙々と走る彼らにも冬の厳しい仕業が待っている。

雪景色は嫌いではないし、一面雪に埋もれたら埋もれたで諦めもつくが、とにかく北海道の冬は長い。
それを楽しむこともあるにせよ、
せめてもう少し、土を直に踏める時間を与えて欲しいと願うのは人も列車も同じ思いかもしれない。




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  1. 2017/11/11(土) 00:43:39|
  2. 石北本線
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ご苦労さま

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石北本線 緋牛内~美幌


数年前に帰省した頃、何気に踏切で電車の通過を待っていた。
カンカンカン…と鳴っていた警報音がしばらくすると小さくなったことに気が付いた。
踏切で待つ人や近隣住民に対する配慮なのだろうが、いつからこんな風になったのだろう。

そういえば開かずの踏切…なんてものがあったが、地方にいるとそんなものにはお目にかかれずすっかり忘れた存在になっている。
地方であっても鉄道華やかりし頃の時代では、大きな駅構内を持つ周辺は貨物や客車の入れ替えで
いつまでも待たされる…なんてこともあったのだろう。
都会でも道路や鉄道路線の整備によって高架線や立体交差になり、昔と比べたら随分減ったと思われるが
将来、開かずの踏切なんて知らない時代がやって来るのかもしれない。

一番近くでそんな踏切があったのは、東急東横線の元住吉駅だった。
当時踏切係が常駐していて、列車が接近するとブザーを鳴らし遮断棒の代わりに水平なワイヤーが降りて来る手動の踏切だった。
ここには東横線の車両基地があり、当駅始発や終着電車の出入りがよく見られた。
普通電車が見上げるような車体を軋ませて目前をゆっくり通って副本線に退避したのち
台車の外側に配したディスクブレーキも誇らしげに素晴らしいスピードで急行電車がぶっ飛んでいく…
なんて時に遭遇すれば当たりだ!と言って大喜びしていたものだった。
その様子を翌日学校の教室で

「昨日、急行がすげースピードで走って来たんだぜ」

と複雑なポイントに響かせるジョイント音を机に叩いて再現し、おれの時はもっと速かったと机をさらに叩きながら張り合い合戦をしていたものだ。
踏切は駅すぐ横にあって商店街を通るものだからいつも混雑しており、大人にとっては迷惑千万だったことだろう。
手動式だっただけに、あまりにも電車が続く時は係の人が通過し終わらない内に踏切を開け、過密ダイヤの僅かな隙を縫って人を渡す…
なんて今では考えられない芸当をしていたが、鉄道少年にはまったく余計なことをしてくれたと思うものだった。


頻繁に警報を鳴らす都会で働く踏切とは対照的に、一日数回程度で済んでしまう地方の踏切。
中には遮断棒を持たないもの、警報機すらない仲間も存在し、こんな所に?とポツンと置き忘れたかのようなものもあり
ここの踏切もそんなひとつである。
渡る車も人の流れもない。
山の畑に向かうトラクターや、林業その他の工事関係の車が忘れた頃に通るくらいの、普段は物静かな山に一人淋しくに立っている。

カンカンカン…と警報が鳴る。
都会の華やかさからは無縁だが使命は何ら変わることはない。
誰も見てない待たない山の踏切は暮れ始めた空に向かって凛と立ち、今日も人知れず列車の運行を陰で支えていた。




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  1. 2017/11/08(水) 13:26:22|
  2. 石北本線
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下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
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