笛の音響けば

汽車の音色は旅へと誘う道標

憧れの機関士体験・後編

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三笠鉄道村(サイドタンクの文字は鉄原コークスとの契約上消せないとのこと)


今回講習を受けたのは僕と合わせて二人。
もう一人は札幌の方で、蒸機マニアでも鉄ちゃんでもなく、本州から3人友人が運転しに来るので
それじゃあ自分も…ということの受講であった。
そのご友人には若桜鉄道で圧縮空気で動かすC12の運転体験をされてる方もいたが
所詮は空気、コンプレッサーの音も煩く、やはり三笠は本物感が違うと何度か来られているようだった。

一緒に講習を受けた方もひどく感動しており、最近の、何でもスイッチポンで動き、人間の補正を機械が制御するものとは違い
デジタルなんかちゃんちゃらおかしい、アナログは偉大だと相当に興奮されていた。

そんな話を聞いていて、ふと思い出したドラえもん。
22世紀に行ったのび太が未来のジャイアンやスネ夫、しずかちゃんの通う学校へ行く。
簡単な計算をコンピューターでしか解けない未来の三人に対して、のび太は紙とペンと指を数えて計算する。
それを見た三人はのび太を天才だと驚く。
近い将来、人は車の運転とて忘れるかもしれない。
無理も融通も利かずプログラム通りに事を進める無機質なものに支配されつつある世の中は、一体どこに向かうのだろう。
蒸気機関車の運転は、それとは全く対照的だった。



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途中営業運転を挟み、僕は都合3回乗車した。
受付で会計した後、本職の機関士さんが運転する機関車は初心者の僕が運転した時の表情とは明らかに違っていた。
ドラフト音は高らかに歯切れよく、スムーズで無駄のない加速と減速、停止。
教えて頂いたN機関士の他に幌内線でキューロクに乗務されてた方もいて、さすがと言わざるを得ない運転だ。

幌内の山間に涙しそうな五色の汽笛が木霊する。
構内運転でありながらも蒸機ならではの後ろ姿の郷愁感…。
全ては人間が操作し、経験と修練によってその日の機関車の状態から適切な措置をとる。
季節、天候、牽引する重量、同じものひとつとない条件に対応できる人もまた偉大だ。

人が手間をかけ、人の血が通う鉄の塊が蒸気機関車であり、そこに様々な感動を呼び郷愁が生まれる…
ホンの少しだけ加減弁ハンドルを握り、直に触れた黒鉄の肌から垣間見えた、僕には貴重な体験運転であった。


尚、前編のキャブ内における運転風景は機関士の方のご厚意により撮影して頂いた。
この場をお借りして、改めて感謝致します。




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  1. 2018/05/16(水) 08:03:19|
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憧れの機関士体験・前編



三笠鉄道村


北海道に動態保存されてる蒸気機関車は何もC11だけではない。
丸瀬布の雨宮21号、そして三笠鉄道村のS-304号もそのひとつだ。
双方とも公園内を走るためJR営業路線を走る醍醐味はないかもしれないが、
煙を上げて走る様は紛れもなく蒸気機関車そのものだ。

S-304号は、国鉄線上から現役蒸機が引退してからも室蘭鉄原コークスで入換用の機関車として働いていた
我が国の最後まで実用で残っていた機関車ということはその筋の方ならご存知だろう。
旧幌内線幌内駅構内跡に走る当機を、ここでは体験運転出来るとあってかねてから気になる存在であったが、
この度その機会を得ることができ、三笠に向かったというわけだ。

幌内線は幌内炭鉱で採掘される良質な石炭を輸送するための鉄道として、明治13年に手宮~札幌が幌内鉄道として開業し、
重機もない時代にその僅か二年後の明治15年には幌内へと全線開通した日本で三番目の鉄道である。
構内往復運転とはいえ、コークス会社で働いていた蒸機を由緒ある炭鉱路線跡で運転するというのも感慨深い。

午前中に講習を受け、午後から乗車となる。
僕は743人目の見習い機関士だそうで、受講者の約半数は関東からとのことだった。
館長から指導して頂く機関士の方へ挨拶に伺い、憧れのナッパ服に着替えた後キャブに乗り込む。
熱い!それは生きた蒸機の証しだ。
石炭の匂い、油の匂い、快適性など微塵もない鉄の城、鉄の塊…。
それをこれから運転するのだと思うと興奮しないわけがない。

先ずは貨車を改造したトロッコを2輌連結した、お客さんを乗せた営業列車に乗務し、教導機関士による運転を見学する。
その後トロッコを解放し、単行で運転する前に講習で受けた操作を再度教えてもらい、さあ、いよいよ運転だ。
物好きが高じて一級ボイラー技士の免許を持っているが、やっとそれも活かされる時が来た。
ご指導頂くのは、泣く子も黙る元国鉄追分機関区のN氏である。
公園内をといってもそこは仮にも本物の蒸気機関車を動かすだけに本線運転と同じく真剣である。



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逆転機をフルギヤにしドレン弁閉止。
前よし、後ろよし、N氏の出発合図に歓呼応答する。

「発車ぁ!」

約2秒の適度汽笛を一声、単弁を運転位置に圧力計が0㎏/㎠を指示、緩解オーライ、加減弁をゆっくり開ける。
蒸気溜めからシリンダーに蒸気が送られピストンを押す。
ボッ!!とドラフト音がして黒煙を吐き出し動輪がゆっくりと回り出した。

国鉄型制式機関車と比べて小さい産業用ロコではあるが目線は高く
実際に石炭を焚き蒸気圧で動く姿はやはり迫力があり感動的だ。
固い鉄の城にレールを噛み締める動輪とロッドの動きが伝わり、足元から、座席の尻から脳天に貫く。
しかし感動ばかりしてる暇はない。
すぐに逆転機を引き上げ、前方人がいない箇所でドレンを切って加減弁を開けていく。
頭では操作を分かっていても、次々とやらねばならない操作と、鉄の塊が走っている事実に頭の中は真っ白だ。
N教導機関士の適切な介助と声掛けに辛うじて救われてる状態である。

「はい、閉めるぅ」

N機関士の声に応答し、加減弁を閉める。
逆転機を倒しドレン弁を(この機関車はバイパス弁も兼ねてるよう)開け、
本職でもブレーキが出来て一人前と言われる難関の制動に備える。
単弁を重なりから加圧減圧を必要に応じて繰り返し停止、1メートルほど過走だ。
訳のわからないまま後進措置をとり汽笛一声、発車。
雑誌等で知ってはいたが、身をよじっての運転操作と前方注視は大変であった。
構内はカーブしているため、乗降場進入の際汽笛を吹鳴する。
厄介なのは後進の場合4‰の上り勾配で停止位置間際まで加減弁を開けていることだ。
慣れた方ならどうってことはないだろうが、初心者にとっては閉めるの合図と共にすぐに制動というほど忙しく、
停車しているトロッコに激突しやしないかとヒヤヒヤものだった。
実際は教導機関士が介助してくれるのでそんなことはないのだが、たった4‰の勾配でも速度を殺してしまうと
手前で停まってしまい、再度加減弁を開けなくてはならないらしい。
それは機関士の恥なのだそうである。




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  1. 2018/05/16(水) 03:21:10|
  2. 保存鉄道
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サクラサク

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石北本線 女満別


東京で桜を迎えたのは3月下旬。
それから遅れること約一月半、北の外れにもようやく桜が開花した。
他の地域と同じように今年はこれでも早く桜前線が上陸し、例年だとゴールデンウィークが終わる頃に開花するところ
街中では今月初めには満開となっていた所もあったようだ。

ただ、ソメイヨシノは美唄が北限のようでこちらはエゾヤマザクラが主流となる。
ソメイヨシノの限りなく白に近い淡いピンクの可憐な風情と比べれば
エゾヤマザクラの濃い目の色は桃の鮮やかさとも違いどこか自己主張が強いようで、
花と共に芽吹く赤い幼葉が更にそう思わせる。
また寒冷地故のこともあってか桜並木、というより桜そのものが少ないと感じる。
鉄道沿線も所々に一本桜はあるものの咲き具合は好ましくなく、
数少ない場所を求めて右往左往しながら女満別駅に落ち着いた。

北辺の列車が桜越しにやって来る。
駅舎横やホームの大きな桜に見送られ、ある者は新しい学舎に胸を踊らせ、ある者は故郷を離れる…
そんな琴線に触れるような詩情感を連想するローカル線に咲く桜は、旅立ちの季節とズレもあり待ちわびたといった感が強い。

そしてこれを境にして季節は遅れを取り戻そうと一気に加速する。
まだまだストーブの世話になる日も多い5月であるが、恐らく今月末にはセミが鳴き出すだろう。
北国の桜はそろそろ初夏へと移ろい行く時の流れを知らせる花なのかもしれない。




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  1. 2018/05/08(火) 18:44:15|
  2. 石北本線
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霧に発つ



石北本線 緋牛内


4月後半から11日連続勤務となったゴールデンウィーク。
地元路線の、ご近所すら出掛けられない。
休みなど関係なしに、夜勤前、夜勤明けと眠気も忘れて湿原の蒸機を追いかけた情熱はどこへやら…。
これが無煙車輛と蒸機の差である。

連勤最後の夜勤明け、自分自身が思っていた以上にくたばっていたようで日中から一日中寝ていた。
夜中に一度目覚めると月夜で景色がよく見える。
これは放射冷却で霧が発生するかもしれない…
駅に行くとホームと木々が微かに浮かんでいた。
何のどこがという訳ではないのだが、周囲が霧に覆われたせいか大陸的に見え、北海道っぽい風景だなぁと思わせた。

ホームの列車接近音が鳴る。
ピーッというホイッスルとカタカタと姿なき列車の音だけが響く。
ヘッドライトがぼんやり光ると駅進入でくねる編成の影…。
ホームを通過する辺りからヌーッという感じで列車の顔が見えて来た。
幻想的な光景に久しぶりにドキドキする。
石北本線の一日の始まり、始発列車のオホーツク2号は構内を出る頃にはエンジンを吹かして加速をし
深い朝霧の中に再びホイッスルと列車の音だけを響かせ消えていった。




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  1. 2018/05/07(月) 19:12:08|
  2. 石北本線
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国鉄の残影・後編

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ガラリと扉が開いて、駅長さんがフライキを持って本屋から出てくる。
信号機のテコを倒して腕木がガタンと音を立てて下がった。

下り場内、進行よし!



早春の日差しに微睡んで…


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トラ70000、ハワム80000、ワフ29500…
ローカル貨物が主をまだかまだかと待っている。

キューロクよ、早くやっておいで・・・。


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旧国鉄相生線 北見相生駅


けれども二度と汽車は来ることはない。

まるで路線が生きてるように見えたのは、薪が積まれた生活感のある駅に貨車が停まっていたからか。


ここは阿寒の麓の終端駅。
いつか釧路に繋がる夢破れ、来るはずもないキューロクを今も赤い涙を流して貨物列車が待っていた。




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  1. 2018/04/25(水) 18:01:23|
  2. 廃線・保存機
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プロフィール

u403tsugaru

Author:u403tsugaru
下手な鉄道写真を撮っておりますが、沿線風景や旅先での一コマなども載せていこうと思います。
見て下さった方の一人でも郷愁感や旅への思いをお持ち下されば嬉しく思います。

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